見出し画像

9月24日~9月30日 Mステ+レビーラ

遂に、私は彼女達の楽屋に辿り着いた。必ずあの暴挙を止めなければいけない。私がやらねば世界が終わる。

平和か破滅か、地球の未来の鍵となる彼女達の名は“Tatoo”。1999年にデビュー。キュートでミステリアスなルックス。同性同士のキス。当時は、ジェンダー意識も低い国民にとってはかなりセンセーショナルだった。キャッチ―な曲は耳に残り、女子高校生風の衣装は世の若者を虜にした。

しかし、彼女達の人気は、あの謎の事件で一気に地に堕ちる。それが、某音楽番組のドタキャン事件だ。真相は謎のままだが、あの事件が彼女達の運命を変えた。そして、地球の運命も変えた。

その事件をきっかけに真・世界征服者“ドミネーター”が誕生する。彼は類まれなるハッキング技術で世界中のネットワークに侵入し、すべての情報・通信網を支配した。これは、情報化社会の現代において世界を制したと言っても過言ではなかった。彼はいつでも、ネットを介して大金を手に入れることもできるし、国家機密の情報も盗むことだってできる。さらには、核兵器の使用もワンクリックで、彼が思うままだった。

全能になった彼は、次第に苦しみ始める。悲しいことに、流れてくるこの世の情報は“喜び、やさしさ、愛情”ではなく“怒り、嫉妬、憎悪”で満たされていた。彼は、地球に害しか与えない無益な生き物、"人間"に絶望した。

そして、そうなってしまった暴君を誰にも止めることはできなかった。やがて、彼は世界中の核兵器の使用を宣言する。どうやら人間が支配するこの世界を一度リセットするらしい。

それを過去から止めようとしているのが私である。世界政府は過去と通信するテクノロジーを開発することに成功した。その技術により、iモードを通じて、凄腕エージェントの私に助けを求めてきた。最初は半信半疑だったが、毎日、明日の出来事を次々的中させていく彼らを信じざるを得なかった。そして今、日本のキー局であるテレビ朝日で極秘ミッションを任されている。

ドミネーターとTatooのドタキャン事件と何が関係しているのだろうか。彼は真相を聞かされたとき、偶然という奇跡を知った。

このドタキャン事件から途中で番組の視聴をやめた人々によって、日本中に空虚な時間が生み出された。そして、その時間を利用して行われた情事によりできた子どもが彼、ドミネーターである。どうやら奇跡はいい方向に働かないこともあるらしい。

私は翻訳機を手に握りしめ、楽屋に突入した。説得を試み、納得してもらえなくても力づくでステージに上げるつもりだった。そのため、彼女達の家族を拘束し、監禁している。家族を人質にするという卑劣な行為だが、人類の未来がかかっているので仕方がなかった。

しかし、その手段を使うことなく何とかドタキャンを回避できた。パフォーマンス終了後、お礼の挨拶をしに行こうと再び彼女達のもとに向かう。楽屋の扉を開けたそのとき、激しい突風により身体が吹き飛ばされ壁に打ちつけられた。そして、意識を朦朧とさせながら楽屋の中を見て驚愕する。異常な光景に身動きが取れなくなった。

そこではワームホールが開かれ、謎の黒づくめの男達により彼女達はその中に投げ込まれようとしていた。投げ込まれる直前、彼女はこう叫んで消えていった。

「20年後、奴らはまた来る。」

そして、男達も穴の中に消えると同時にワームホールが閉じた。穴があった、そこには制服と一つのメッセージカードが残されていた。

「All the things she said(彼女の言ったことがすべて)」

そして、時は流れ20年後の2023年、エージェントの孫であるTがADとしてテレビ朝日の楽屋の前に立っていた。未来の悲劇を止めるために。

今夜、またドタキャン事件が引き起こされようとしている。世界政府の情報によれば、その事件によりドミネーター二世が産まれてしまうとのこと。そしてそのドタキャンするアーティストの名は

“NewJeans”

改革の制服を受け継ぐもの達だ。そして歌う予定の曲は

“Ditto( 同上)”

運命を操る暗躍者が世界政府に向けて送る挑戦状だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?