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賛否両論

今日は、山内志朗さんの「目的なき人生を生きる」を紹介します。
高校の授業で「公共」を受け持っているため、
哲学関係の書籍を読むことも時々あります。
ちょうど、学校の新着図書として入っていたので、
手に取ってみると、結構面白そうだったので読んでみました。

人生の夢はどう探すものなのか。引き出物のカタログや、レストランのメニューや、山のように積まれた募集要項や、婚活の人物データから、最良のものを探すように選ぶのだろうか。もしそのように選ばれるのであれば、功利主義が選ぶための手助けになりそうだ。功利主義とは比較考量して最大の効用を獲得することが善だという思想だ。計算で最善を選べることであれば、AI(人工知能)は得意そうだ。
人生の夢や目的はAIや機械に選んでもらう時代が来るのだろう。そうなったら、倫理学は要らなくなってしまう。必要なのは功利計算だけだ。これも進んでいくと、出生前に功利計算をして、人生の善の総量を計算し、生きるに値する人生だけを生きるべしとして、一定水準に到達しない人は出生時に安楽死を選べる時代がくるかもしれない。私の最大の望みは、そんな時代を自分の目で見ないうちに死んでしまいたいということだ。

53ページ

ベンサムとかミルの#功利主義について述べている箇所です。
AIによる出生前功利計算について思考実験ができそうです。
生徒にFormsでアンケートをしてみると導入として面白いかも。

働くことの意味であれば、目的や効用をあげればよい。何の役に立つのか、それを答えればよい。人生の場合、最後には死が待っている。死ぬために生きるということは、効用で考える人間の思考をはみ出すから、人生に意味を与える物語が求められることになる。
死後仏様になるため、つまり人生は仏道修行だというのも人生に意味を与える方法である。天国に迎えてもらうために、生きている間に神への愛を尽くすというのも、人生に意味を与えることである。死後を考えることで、人生に意味を与える道筋である。

72ページ

人生の意味は何か?生きる目的は何か?
公共の授業を通して生徒が考える際の、
一つの材料として使えそうな見方・考え方です。

「がんばる」というのは、目的に向かって全力で急いで向かうということだ。特定の目的に対して「がんばる」ことはできる。がんばって評価され、成功する確率も増える。しかし、人生全体において「がんばる」ことはできるのか。「太く短く」生きることは、体に悪いことをし、暴飲暴食をし、早死にすることは、人生に「がんばった」足跡となる。
がんばることが自己目的化して、強迫神経症的に猪突猛進することが倫理的な美徳であるかのように捉えられている。御神輿を担いで、ワッショイワッショイ、あれこそ「がんばる」ことの純粋形態である。
がんばった人が努力した人として褒められる。がんばることが美徳として褒めそやされている。がんばることを褒める倫理学、何か大事なことが抜け落ちていないか。

150ページ

著者は「ガンバリスト」という表現を用いています。
「頑張る」を一つの哲学とか宗教のようなものとして捉えているような感じです。
私自身はどちらかと言うとガンバリストではあったのですが、
この書籍を読んでいく中で、本当にそれでいいのか自己批判をするようになりました。

「真理とは何か」「友情とは何か」「人生とは何か」「私とは何か」「存在とは何か」、人間であれば誰でも知りたいこと、知るべきことを教わった記憶はない。
先生の読んでいる指導要領には第一頁に書いてあるはずだが、生徒は読めないから知らない。もし指導要領のどこにも書いていないというのであれば、透明な文字で書いてあるのだろうが、もしかすると、学ぶことも教えることも、学びたがることも教えようとすることも禁止されているのではないか。

171ページ

ここのフレーズも結構きつかったです。
教員として、これまで何を教えてきたのだろうか?
本当にそれがその子の人生に役に立っているのだろうか?
そもそも、学校が教えるべきことは何だろうか?
考えれば、キリがありませんが、考えてしまいます。

年度始めで気を張っているからなのか、ここ数日は、頭痛が続く毎日でした。
Amazonで、この書籍のレビューを見ていると、
どうもこの書籍を読んだことも関係しているのかなと思い始めました。

Amazonから

同じように苦しんでいる人がいるんだ!
妙に納得する自分がいました。
「良薬口に苦し」と言いますが、まさにこの書籍は一読すると毒にもなり得る気がします。
一方で、人生の目的や生きる意味を考えていく上で、
多様な見方・考え方を与えてくれる良書であると私は思います。

Amazonのレビューも、評価がしっかりと分かれています。
星4.5の書籍を読むのももちろん良いんですが、
たまにはこんな(というと著者に失礼ですが、)書籍を読むのも良きかなと。

#山内志朗 #目的なき人生を生きる #人生の意味は何か#生きる目的は何か#公共 #ベンサム #ミル #功利主義 #良薬口に苦し


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