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【映画「アナログ」】デジタルが便利さのヴェールで包んだもの

先日、映画「アナログ」を見てきたので、その感想を書こうと思います。
予告を見たイメージでは「純愛」的な話かと思っていたのですが、恋が与えるワクワクなどの素朴さや形態を持っていないことによる悲惨さを感じました。
ちなみに、忘れてはならないのが原作はかのビートたけし氏ということ。

あらすじ【ネタバレ少なめ】

建築デザイナーの水島悟(二宮和也)はデザインした喫茶店”piano”で三春みゆき(波留)に出会う。こだわった部分を見事に言い当てるみゆきに心を奪われた悟は、みゆきを食事に誘う。行きつけの居酒屋からの帰り、悟はみゆきにまた会いたいから便号を交換したいと打診する。しかし、みゆきは携帯電話を持っていないことを告白する。

⚠以下、ネタバレを含むので空欄を設けます。











感想【ネタバレあり】

会って話すということ

悟が友人たちに「俺達なんて会ったらずっと喋ってる」というシーンがあります。私自身おしゃべりは好きな方なので、その気持はすごく分かります。ただ、最近「次、誰々に会ったら話そう」みたいな感覚がなくなっていると思います。行きたい場所に一緒に行ってほしいみたいな、趣味の種類が増えた昨今だからこそ、シンプルに「気が合う」ことの大切さを実感しました。

飛ばし飛ばしの描写

悟と友達2人(桐谷健太、浜野謙太)の会話で少し時系列が飛んだ会話をカットを入れることで表しているシーンがありました。こういうカットって、登場人物が誰かを待っていて最初は立ってたけど座ったり、音楽聴いたり、ウロウロしたりの状態の変化で時間の経過を表すイメージがありました。今回はシンプルに長い会話の内のハイライトのようでしたが、カット同士の間がフワッとイメージされてとても心地よかったです。

昔を思い出した

携帯を持っていないみゆきに、悟は今日はどこへ行くかプレゼンをするのが毎週のルーティンになっていました。私が友達と出かける時の約束の仕方を考えると、頻繁に会わない友達だとLINEなどで空いている日程を出してとりあえずの行き先を決めるみたいな形になります。でも、対面のガチンコで「ここ行きたい」、「いいですよ」というような下りって久しくやっていないなと思いました。小学校まで遡らないとその記憶には辿りつかないような。人を誘うのって難しいと思いました

スマホなしで

悟のスマホの電池が切れて、Googleマップが使えないという描写がありました。「スマホないと、冒険ですね」というセリフが象徴するように、日常の中にもそういったワクワクすることが溢れているのだと感じました。便利さのヴェールに包まれると目的地に行くための移動や作業に過ぎないけど、そういった芯の部分は楽しいことで溢れているのかもしれないと思いました。

結末の必然性

悟が伝えたいことがあるといった次の木曜日に来なかった理由が、みゆきが交通事故似合ったというのは少し急な感じがしました。確かに、あの流れでpianoに来ないのは「お断り」を示すようなものだから、次の週以降気まずくて行けるものではないと考えるのが一番シンプルなシナリオです。そのシナリオに対して裏切る形になっているのはよく分かります。しかし、かなり偶発性の高い展開だなと思った記憶があります。最終的に悟はみゆきに毎日会いに行って海で「毎日木曜日」の状態になるわけですが、一番プラトニックな結末への布石だったのかなと思いました。

ちなみに

この映画を見たのがはからずも木曜日でした。
一週間の内のこの曜日が好きみたいなのって、生活の潤いだなと思います。


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