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テニス上達メモ071.「スピン信仰」と「フォーム神話」が、日本の才能をスポイルした


▶日本テニス市場を席捲した「トップスピン」ブーム!

 
日本では(というか私が知らないだけで世界でもかもしれませんけれども)、恐らく80~90年代くらいまで、そしてその勢いを今なお受け継ぎつつあると思うのですけれども、とにかく「トップスピン」が声高に叫ばれました。
 
いわく「ボールに順回転をかければバックアウトしない」「振れば振るほど回転がかかるから、力加減いらずの魔法のショット!」みたいに、スピンブームが日本テニス市場を席巻しました。
 
ちなみに波及効果は今なお、「スピンがかかるラケット!」「スピンがかかるストリング!」といった具合に、ギアにも「スピン効果」を謳うフレーズが示されているとおりです。
 

▶極端なまでに、下から上へ振り上げるプレーヤーが続出

古くはトップスピナーのビヨン・ボルグが活躍したのがきっかけ。
 
スピンのその理屈は、確かに半分正しいのだけれど、そのせいで、トップスピンをかける「フォーム」が跋扈したのが、いただけませんでした。
 
「下から上へスイングすれば回転がかかる!」とばかりに、極端なまでに垂直方向へラケットを振り上げようとするプレーヤーが続出。
 
それを実現するために当然グリップも、そのプレーヤーにふさわしいかどうかに関わらず、極端なまでに厚くなっていきました。
 

▶フォームを意識した時点で、壊滅的に「ダメ」

 
下から上へ振り上げるスピンスイングをアシストするために「ヒザの曲げ伸ばしを使え!」「後ろから前へ押し出す体重移動ではなく、ボディーターンを使うと有効だ!」「マイケル・チャンのようなワイパースイングで!」
 
ほかにも挙げればキリがありませんけれども、とにかくいろんな「フォーム」が、手を変え、品を変え、企画内容を変え、紹介されてきた経緯があります。
 
だけどフォームを意識した時点で、壊滅的に「ダメ」だったのです
 
体の動作はギクシャクするし、フォームを意識するとボールに集中できなくなるから、最も肝心な「打球タイミング」が合わなくなるダブルパンチ
 
こうして「振れば振るほどスピンがかかってバックアウトしない」を夢見た自称トップスピナーは、「コツのコツの、そのまたコツはないものか?」とジプシー化し、夏草や兵どもが夢の跡、せっかく楽しもうと始めたテニスだったのに、「いくら頑張ってもなぜか上手くなれない……」と苦悩するテニスプレーヤーへと、成り果てたのでした。
 

▶プロやコーチが言っているのだから……

なぜそうなったかといえば、「自分の感覚」を信じなかったのも一因です。

スッポ抜けてバックアウトするのだけれど、「プロやコーチが指導して言っているのだから、このやり方で間違いないはずだ!」とばかりに、「自分の感覚」ではなく「他者の意見」を信じたのです。
 
これはテニスに限らず言えること。
 
「お医者さんが言っている!」「テレビ番組でも紹介された!」「これを飲めば健康になるはずだ!」とばかりに盲目的になると、「自分の感覚」としてはイマイチ不調であるにも関わらず、「他人の意見」を優先してしまいがちです。
 
何が体に良いのか、美味しいのか、ラクなのか、幸せと感じるのか、好きなのか、嫌いなのかは、「人による」ところも大きいですから、「自分の感覚」を信じて決めていい
 
話をテニスに戻して、前から飛んでくるボールに対して、ラケットを垂直方向に振り上げてスピンをかけようとする。
 
これは『テニス・ベースメソッド(基準法)あなたのテニスがドラマチックに改善するたったひとつの方法』にも書きましたが、野球のピッチャーが投げたボールを、キャッチャーがミットを下から上へ振り払いながらキャッチするような、あえて難しいことをしようとする「ハードモード設定」なのです。
  

▶トップスピンを習得するなら「回転の味見」が効果的!

本稿では何が言いたかったのかというと、「トップスピン信仰」と、それを補強する「フォーム神話」のせいで、多くのタレント(才能)がスポイル(ダメに)されてきた、日本の歴史的テニスレッスンの失策について。
 
改めて「振り切れば振り切るほど、スピンがかかってバックアウトしない!」の説明は、半分正解で、半分ウソ
 
マグナス効果が発生すれば、ボールが落ちやすくなるのは確かに正解なのだけれど、それがバックアウトを防ぐ保証にはなり得ません。
 
なぜなら打球タイミングを外せばスッポ抜けて、スピンがかかっていてもバックアウトは(ネットミスも)平気で起こるからです。
 
そして当然の傾向として「振り切れば振り切るほど」を妄信するプレーヤーほど、スッポ抜かすのです。

もちろん、スピンをかけるのが悪いとか、スピンの練習がムダだとか、言っているわけではありません。

スピンを練習するなら、フォームを意識するのではなく「回転の味見をする」のが効果的です。

またフラットだからボールが飛びすぎる(バックアウトする)というわけでもない。
 
ボルグのライバルであったジミー・コナーズは、ドフラットであったにも関わらず、やはり打球はコート内に収まっていたではないですか。

半分ウソな理由は、どんなにスピンをかけようともスッポ抜ければ、ボールはコートの枠外へ飛び出してしまう、あるいはネットミスもする。
 
いつも言っているとおり、ショットが成功するかしないかは(球種に関わらず)、打球タイミングしだいです。
 
打球タイミングさえ自分が「ここだ!」と感じるドンピシャならば、トップスピンであろうとフラットであろうとスライスであろうと、ショットは成功するのです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero