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インドに呼ばれて 1


イントロダクション

2015年の終わり頃。22歳。
おれは友達と借りた東高円寺のアパートで暮らしていた。
中野のバーで夕方から朝まで働いて、仕事がハケるとバイト仲間と昼まで飲み歩く、みたいな毎日だった。
それまでは色々なバイトを掛け持ちながらもお金もなく、家賃や携帯料金を払うとほとんど手元にお金が残らないような生活をしていたんだけど、長時間で割と稼ぎの良い、バーでのバイトを始めて、なんとなく自由に暮らせるようになっていた。(今のところ人生で一番遊ぶお金があった時代だ)

なんとなくまともな生活がおくれるようになると、すこし今の生活に物足りなさを感じる余裕ができて、漠然とどこか遠い国に旅に出ようと思った。

特に意識していたわけじゃないけど "旅に出る" ということはいつかやるんだろう、と子供の時からなんとなく感じていたし、ティーンエイジャーの頃に何回か計画したことがあったんだけど、お金もなかったし、色々なことが重なって結局実現はしなかった。

今なら旅に出れる。
週に5日か6日はバイトしていたし、お金はすぐに貯まった。

なんとなく、でもなぜか行き先に迷いはなかった。
"もちろんインド"

別におれはインドに特別な思い入れがある訳じゃない。
"カレーと神様が大好きな国"というくらいの認識しかなかった。

ただ、昔から外国っていって頭に浮かぶのは、先進国の摩天楼とかよりも圧倒的にアジア的な喧騒だった。

アメリカやヨーロッパよりもアジアの方が"遠い異国"な感じがしてわくわくする。同じアジアなんだけど。

それにおれの中の旅のイメージっていうのは、観光名所や綺麗な景色とかっていうよりはその国での生活や文化を全身に浴びる、というものだったから、快適な旅(それも少しやってみたい)よりも苦労したり、本気で嫌んなったりするような所に行く、という目線でもインドはしっくりときた。


旅に出たのは年が明けて、2016年の2月。
バイトを辞めて、アパートも引き払った。
旅から帰ってきてからのことなんて何も想像がつかない。
今までで一番身軽で、とても気持ちがよかった。

始めての海外、一人旅。英語も話せない。
ただ1ヵ月半という期間があるだけで、スケジュールもなにもない。明日はなにを食べてどこで眠るのか全く想像もできない。最高な気分だった。

20万円ほどの現金と、大きなバッグに必要最低限の荷物だけ詰めて、見様見真似の旅に出た。


インドに呼ばれて 2  デリーからラジャスターン 運転手付きの旅 につづく↓

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