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介護現場から考えはじめたこと     a care−worker's notes (日刊ベリタ掲載記事)

 還暦過ぎて入った介護現場で考えはじめたことを、WEB上の新聞である日刊ベリタに2020年10月から2021年1月の間に6本の記事として掲載させていただいた。この不定期連載は、旧友との縁からはじまったが、その旧友も2021年の春に鬼籍に入った。半世紀以上の付き合いであるかつての悪童どものひとりひとりを見送ってくれるのにふさわしい人物が真っ先に逝ってしまった。あの世というのがあるとしたなら、そちらで悪友たちを迎えてくれる準備をしていてくれるのかもしれないと、またしても勝手なことを期待している。

『介護現場から考えはじめたこと』<a care-worker's note>は、タイトル通り、介護や福祉のまったくの素人が介護職に進み、ひとりのケアワーカーとして現場体験し、思考しはじめたことのメモノートであり、恥ずかしながら生意気なことを言うと、自分と同じようにケアワーカーになったひと、なろうとしているひとが介護に入ってゆくうえでの参考にでもなればと思って書いていた。そういう意味では、他の職業のひとからは、他所の職場をたまたま覗いているような内容かもしれない。ただ、介護現場を経験してゆくなかで、ひととひととのコミュニケーションはそもそもどうなっているんだろうか、とか、ひとが何気なく過ごしている時間というものの不思議さ、とか、ふだんだれもが生活のなかでふと感じていることを今までとは違った角度から再発見することとなった。そのささやかな驚きと小さな喜びをこのnoteから少しでも感じていただければと思っている。

 生来、本を読むことが好きなので、新しい職業に就くとその職業にかかわる分野についての本を目に付くところから読み始める癖がある。とは、言っても、仕事をしている現場で見聞きしたこと、感じたことの実感が読書の方向を決めるきっかけになるので、どんなときにでも長い読書の旅を始める発端となった私的体験エピソードがまずある。今回は、介護現場で体験した出来事をできるだけありのままに綴るようにした。

 この記事の不定期連載が止まったのは、人生の終焉へ向かう旧友への戸惑いという、僕のまったく勝手な事情だった。とても書けなかった。

 一応、次のnoteとして準備していたテーマは、2021年度の介護保険法の改正で大きく導入された「科学的介護への現場で感じる違和感の由来」、あるいは「ケアワークのダークサイドとも言われることのある依存症的関係についての最近の研究から見える新しい可能性」といったことだった。そのうちに、機会があれば、書いてみたいと思っている。

 以下、<a care-worker's note・1~6>各記事についての簡単な説明と、各記事をダウンロードできるようにしてあり、お読みいただければこれほど嬉しいことはない。どうぞ、よろしく。

*日刊ベリタ  http://www.nikkanberita.com/

<a care-worker's note・1>                      『介護福祉士になるまで』
61歳で介護職になり、3年間の経験を経て、介護福祉士の資格を取得するまでとその後の妙な違和感についての話。もともとは、転石庵のブログ<a care-worker's note DRAFT>に書いたもので、旧友の勧めで、日刊ベリタにそのまま転載され、日刊ベリタでの不定期連載が始まった。従って、この記事は、<a care-worker's note DRAFT>に書いたものと同じ。

<加筆訂正>
この記事は、コロナ禍が始まったころに書いたもので、コロナ禍によるリストラやITによる産業構造の変化により、失業した40~50代男性のうち少なからずが、介護業界に転職してくるという予想を立てていたが、まったく外れた。
コロナ禍もあけた、2020年代半ばにかかる時期の感想としては、介護職は、60代以上と20代が多数を占め、40~50代(特に男性)は、少数派であり、人手不足はさらに深刻化している。今は、介護業界全体で現在の人手不足の常態化を前提とした新しい経営運営モデルを探っている状態と思う。

<a care-worker's note・2>                      『かなりリアルな報告「崩壊する介護現場」(中村淳彦)』
介護学校修了後の初めての勤務で、介護の初歩について先輩介護士たちにいろいろと教えていただいた。その先輩たちは、なかなか個性的であり、他の介護現場はどうなっているんだろうかと興味を持ったときに目に止まった本で、介護現場の現状について、特に人材について考えさせられた。

<a care-worker's note・3>                      『共感をもって協力し合う介護「ユマニチュード」について その 1』
<a care-worker's note・4>                      『共感をもって協力し合う介護「ユマニチュード」について その 2』
施設介護の現場で利用者さんから学んだ介護ということについてのイメージは、利用者さんとの共同作業ということだった。介護する、介護される、という関係でなく、相互に協力し合って介護という作業を進めてゆくというイメージにそって書かれている本を探していて、フランス発祥のユマニチュードという介護への考え方と技術を見つけて、すぐに読みだした。

<a care-worker's note・5>                      『開かれた介護環境をつくるために~三好春樹「野生の介護」より、認知症高齢者とのコミュニケーションを考える』
施設介護の環境は、たくさんの規則というか、規制によって成り立っており、そのなかでは、利用者さんとの相互関係のコミュニケーションも閉じられがちである。なかでも特にコミュニケーションの取りづらい認知症高齢者とのコミュニケーションを異文化の理解という視点で見直す試みをすることにより、開かれた介護環境をつくってゆく可能性を探ってみた。

<a care-worker's note・6>                      『介護職は“ケアの倫理”によってエンパワーされるか?』
介護職の仕事には、さまざまな倫理が発生し、介護職はひとつひとつの倫理的な問題に直面し、個人で乗り越えてゆくことを促される。しかもその倫理の多くは、介護という作業の発生時からあるジェンダー問題と絡んでいる歴史的なできごとの一端でもある。倫理が固定化され、がちがちの壁になっている現状を女性の多い職場である歴史的背景から解きほぐすことからはじめ、ケアワーカーにおける倫理は介護職を力づけることが出来るかについて考えてみた。この文章のもととなった、小川公代さんの論文は、2021年8月に講談社から出版された『ケアの倫理とエンパワメント』という単行本に所収されている。ケア関係者には、一読を強くおすすめする。
*『ケアの倫理とエンパワメント』 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000354535



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