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遠くでワン!が聞こえる

いぬうた市の夜空の下、何処かでわんこが吠えております。
それもひとりではなく、
どうやらふたりくらいの吠え声です。
何事かあったのでしょうか?
きゅん君と、ぐーちゃんも気にしています。
パラボラアンテナのように耳を傾け、
そばだてて聞いています。
「一体、何処の方かしら?最近よく聞こえるわ」
ぐーちゃんは、より耳を、
ぴくん、ぴくん、させながら言いました。
「どうやら、ふたりいるようだね。今まで犬ひとりだった家が、ふたりに増えたのかな?何て言ってるかよく聞こえないけど」
きゅん君も興味津々です。
「ぐーときゅんみたいな感じかしらね?でも、ぐーはあんなにはうるさく吠えないわ」
「よく言うよ。この界隈じゃ、ぐーが1番うるさいって評判だよ」
「何ですって!それは何処の誰が言ってるの?きゅん、いい加減なこと言うもんじゃないわ!」
「だからその声がうるさいんだよ!今頃近所に丸聞こえだよ!」
「それだったら、それでいいわ!この際、ぐーと、きゅん、どっちが悪いか?ジャッジしてもらいましょうよ!ご近所の皆さーん、聞こえますか?」
「止めろよ!止めろったら!」
と、本当にご近所の皆様申し訳ございません。
こんな風に何処よりもやかましい、きゅん君と、
ぐーちゃんの家です。
そんなことがあった次の日、きゅん君と、ぐーちゃんは、
散歩の時、例のわんこたちの、
吠え声がした家の近くを通りかかりました。
「たぶん、この辺の家じゃないかなあ」
きゅん君がくんくんと匂いをたどりながら言っています。
「ぐーもそう思うわ。でもここっ!ていう家が分からないわね。ぐーたちなら家を特定できるはずなのに」
ぐーちゃんが不思議そうに首を傾けます。
「もしかして、犬のフリをしてるけど、もしかして犬じゃないのかも?」
「なるほど。その可能性はあるな。例えば犬のロボットとか」
ぐーちゃんの疑問から推理する、きゅん君です。
それから、きゅん君と、
ぐーちゃんの推理合戦が始まりました。
片方は人間がマネをしてるとか?
実は両方とも人間だとか?
映画かドラマの犬が吠えてる場面を繰り返し流しているとか?
等々をお互い言い合っている、
きゅん君と、ぐーちゃんです。
そこで、ぐーちゃんが、はたと思いつきました。
「分かった!もしかしたら、お空から帰ってきた犬たちかも知れないわ。お空から来たから地上には匂いが残ってないのよ!」
きゅん君も、そうかもしれないと思って、
「それなら、てん姉が何か知ってるかもしれないよ。帰って、てん姉に聞いてみよう!」
と、興奮気味に言って、ふたりは急いで、
飼い主を引っ張って、自宅に戻るのでした。
てん姉とはふたりの前にいた先住わんこの、
てんてん姉さんのことですが、
そういえば、この日は数年前、
てんてん姉さんが写真になった日でもありました。
きゅん君、ぐーちゃん、よかったら、てんてん姉さんが、
お空から帰る予定があるか聞いてみて下さい。
飼い主とママが首を長くして待っていますから。

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