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ママと昼寝

「はい!はーい!」
と、大変お日柄もいい昼下がりの、
いぬうた市の空の下、きゅん君と、ぐーちゃんの、
可愛い声が同時に聞こえました。
それもとっても嬉しそうな声で。
ははあ。なるほど。
これはママに呼ばれたんですね。
今、ママは自宅の2階の寝室にいて、
ちょっと昼寝なんぞをしゃれこもうとしているみたいで、
そのパートナーとして、1階にいた、きゅん君と、
ぐーちゃんを呼び寄せたのです。
「やったー!ご指名だー!ママに呼ばれたぞー!
ママ、ナイスタイミングー!ちょうど僕も昼寝しようと思っていたんだー!」
「ぐーもママにお呼ばれしたー!ぐー、今すぐ行きますから、待っててねー。ママー!」
と、きゅん君も、ぐーちゃんも、先を競うように、
階段をはしゃぎながら登ります。
しかし、何ということでしょう。
階段を登り終えた、ふたりが見た光景。
それは肝心の寝室のドアが閉まっているではありませんか。
この現実に、ふたりはしばし唖然としてしまいます。
「どうしよう。これじゃ行けないじゃないか。ママのいるベッドまで。これはもしやママに試されているのでは?僕らがママの忠実な子供か、どうかを。もちろんすぐに駆けつけたいのは、やまやまだが、しかしいかんせん、これでは」
と、きゅん君は途方にくれてしまいます。
「これはもしや、もう、ぐーはママと一緒に寝ていて、お夢で見てる光景さんなのでは」
と、ぐーちゃんは早くも現実逃避です。
どうやら、ママはふたりを呼んだあと、
すぐに眠ってしまって、その後、風が吹いたか、
何やらで、ドアが勝手にしまったようでした。
なので、このまま待っていても、
ドアは開いてくれないと、気付いたふたりは、
何とか、ドアを開ける方法を考えます。
「このドアノブは、レバーハンドルだから、下にレバーを下げれば開くハズだが、残念なことに、僕も、ぐーもレバーには届かない。さて、どうしたものか」
と、きゅん君があきらめかけた時、
ぐーちゃんが閃きました。
「きゅん。例えば、きゅんの背中に、ぐーが乗れば、ぐーはレバーさんまで届くのでは?」
しかし、きゅん君、その、ぐーちゃんのアイデアに、
いい顔はしませんでした。
何故なら、重いし痛そうだったからです。
「ぐーが僕の背中に乗るということは、僕に、ぐーの全体重がかかるということだろ?それはどう考えても、重いし、痛い。だったらどうだろう。僕が、ぐーの背中に乗るというのは。確かに僕は、ぐーより体重は重いが、僕はそこを上手くやる自信がある」
と、きゅん君がまさかの逆提案をしてきました。
しかし、それは、ぐーちゃんとしては、
とてもではないですが、承服できない事案でした。
何故なら、より重いし痛そうだからです。
なので断然、ぐーちゃん、これを拒否すると、
話はそのまま平行線をたどるばかりで、
全くラチがあきません。
それでも、ふたりの話し合いは続き、
それはやがて言い争いになり、怒鳴り合いのケンカとなると、
その声のうるささに寝ていたママが、起きて気付いて、
ドアを開けてくれて、結果オーライで、
めでたく、その後、みんなで仲良く昼寝を、
かましたのでした。

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