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いろいろな、いぬうた市の夢

「ぐー、昨晩、僕は面白い夢を見たんだ。それわね、こんな夢さ」
と、いぬうた市、きゅん君、朝起きるやいなや、
ベッドの横にいる、聞いてもいない、ぐーちゃんに、そう語りかけました。
面白い夢を見たから、話したくてたまらないんですね。
「ぐー、まだ眠いのにー。まだ寝ていたーい」
ぐーちゃんは眠そうにめんどくさそうにしてますが、
まあ、しばし、きゅん君の夢の話を聞いてやって下さい。
「えーとね。ある日さあ、急に、いぬうた市が地面ごと浮き上がったんだよ」
と、ゆっくり語り始める、きゅん君です。
それを聞いて、ぐーちゃん、ビックリして、
「まあ、それは大変だわ!ぐーは大丈夫なの?」
と、思わず声を上げます。
どうやら寝ぼけているので、ぐーちゃん、
ちゃんと状況判断が出来てないようで、
勢いを削がれた、きゅん君、ちょっとムッとして、
「いやいや、これは僕の夢だから。しばらく黙って聞いてくれるか、ぐー」
と、ぐーちゃんを制し、再び語り始めた、きゅん君です。
「でね。しばらくしたら止まって、ああ、止まったあ。よかったあ。と思って、ふと上を見たら、そこにはまた、別の、いぬうた市があったんだ」
「それはよかったこと」
ぐーちゃん、寝ぼけているので、あいづちもいい加減です。
なので、きゅん君、そこはスルーして、
「で、更にその上にもまた別の、いぬうた市があって、また更にその上にも、いぬうた市があるのが見えて、でね、それら何層にある、いぬうた市は真ん中ら付近のエレベーターでつながっていたんだよ」
「きゅん、一体、何の話をしてるの?」
ただでさえよく分からない、きゅん君のこの話なので、
寝ぼけ真っ最中の、ぐーちゃんには、
いよいよ理解不能となりました。
しかし、そんな、ぐーちゃんに、きゅん君は一喝します。
「分からないのか!ぐーは!これはマルチバースなんだよ!マルチバース!多元並行宇宙だよ!この、僕らが今いる、いぬうた市以外にも、別の、いぬうた市がいっぱい存在するのさ!」
それを聞いて、ますます訳が分からない、ぐーちゃん、
「ぐー、ごめんなさいするから、きゅん、この辺でご勘弁してー」
と、泣きをいれますが、きゅん君、それを許しません。
「何言ってんだ!ここからがいいとこじゃないか!なので話を続けよう。でね。僕は他の、いぬうた市を見たくてエレベーターに乗り込んだんだ。上の、いぬうた市や、上のその上の、いぬうた市、下の、いぬうた市、またその下の、いぬうた市までも、すると、ぐー、どうだったと思う?」
突然、問われて、どう答えていいか?
皆目分からない、ぐーちゃん、困り果てた上に、
「いろいろな、いぬうた市があったんじゃない。こことは違う、いぬうた市が。そこの、ぐーも、この、お今の、ぐーとちょっと違う、ぐーがいて」
そんな想像をすると、きゅん君、
ある意味、期待通りの答えが返ってきて、
してやったりという感じの笑顔をして、
こう言い返したのです。
「それが全く、どこもおんなじなんだよ。どこも何ひとつ変わらない、僕がいて、ぐーがいて、どの世界でも、それでたいがい僕ら寝ていたよ」と。
なるほど。大抵はマルチバースというと、
その世界、世界で全く違う、きゅん君や、ぐーちゃんが、
いるものですが、きゅん君の夢の中での、
マルチバースは、どこの世界もやってることは、おふたり、何も変わらなかったんですね。
しかし、まだまだ眠いうちに、延々と聞かされた上に、
オチがそんな感じだった、ぐーちゃんの反応はというと、
「しょうもな。ホントしょうもな。長々とペラペラお夢のお話喋って、まさかのそんな、オチ?しょうもな」
と、つい、くちが悪くなって、さっさと、
二度寝し始めた、ぐーちゃんでありました。
ですが、どんな世界でも、
やっぱり、きゅん君は、きゅん君で、
ぐーちゃんは、ぐーちゃんで変わりなく、
いつも眠っているんですね。
それはとってもいいことだと思いますよ。
ねっ、きゅん君、ぐーちゃん。
眠っている、わんこはやっぱり可愛いですから。


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