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ドアに挟まらないように

「ぐー、先輩からひとつ、アドバイスがある。部屋のドアが開いているからと言って安心してはいけない。だから部屋の出入り口を通る時は油断してはいけないのだ。ドアは急に閉じようとすることがあるもの。急に速度を上げ、バッターン!と閉じたりするべく、我々を挟もうとする。現にそれで挟まれたことがある者もいるそうだ。ドアはそれ程に怖いものなのだ。だから部屋の出入り口はいつも慎重に通るべきなのだ」
ある日、いぬうた市の、きゅん君は、ぐーちゃんに、
自宅の、ある部屋で、それはそれは神妙な顔で、
そんな忠告をしました。
それに対して、ぐーちゃんは、
「ドアさんに挟まれるですって?ぐーはいくら何でも、そんなノロマでマヌケではないわ。仮にそうゆう場面に遭遇しても、ぐーは、素早くすり抜けてみせることを、ここに宣言致します」
と、言い返して、逆に、ぐーちゃんの、
チャレンジ精神に火をつけてしまったのです。
「ぐー、僕がこれだけ言ってんのに、どうなっても知らないからな」
きゅん君は、やれやれといった顔で、
その場を立ち去りました。
確かに、きゅん君が言うように、開いていたドアが、
ちゃんとストッパーが効いておらずに、
風などが吹いて、勝手に閉じてしまうことがありますね。
だから、きゅん君は、いつも部屋の出入り口を通る時は、
そうゆうことが起きることを考慮して、
決して立ち止まらずに、すっと通るようにしているのです。
ぐーちゃんは、もう何回も何回も、きゅん君がびくびくと、
出入り口を通る姿を見たことがあります。
そのたびに、ぐーちゃんは、何で、きゅん君は、
あんなに怯えているんだろう?
と前々から不思議に思っていました。
本日、その理由が、きゅん君の己の口から語られて、
ぐーちゃんはすっきりしたと共に、
何て、きゅん君は臆病なんだろう。
と、新たにそんな気持ちを抱いたのです。
「ぐーがドアさんに挟まれる訳ないじゃない。これはきっと、ぐーへの挑戦でもあるわ。面白いじゃない。受けて立とうではありませんか。あえて、ぐーはドア前に立つと致しましょう。これからは、ぐーはスリルを味わうために、しばらく、ドア前にいることにしまっす!」
と、誰も聞いていないのに、勝手に言い放って、
それから寝室のドア前に、ドカンと鎮座致したのでありました。
しかし、いざやってみると、思いの外、怖くて、
それというのも、いつドアが襲ってくるか?
分からない状況の中で、ドアが物凄いスピードで、
ぐーちゃんに迫って来るビジュアルが、くっきりと、
頭の中に浮かんでしまって、恐怖がどんどん増していって、
しかし言った手前、誰も聞いてなかったとはいえ、
何だか引く訳にもいかず、
「ぐーは、今にもドアさんと、がっちんこ、する運命なんだわ!と、そう言っている今にも!とか言っている今このタイミングで!なんて言ってたら、とうとうーわー!」
と、言って、とうとう泣き出してしまった。
そんな、最後は可愛い側面を見せた、ぐーちゃんなのでした。

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