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猿若祭二月大歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』で雨ゴートをウォッチング

『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』勘三郎丈の十三回忌。勘九郎丈の佐野次郎左衛門と兵庫屋八ツ橋を七之助丈。いやらしい悪役に松緑丈、仁左衛門丈の魅了みたっぷりで、ハラハラ見守る女房おきつは時蔵丈。おっちょこちょいの下男に橋之助丈。その他、あのお役も、このお役も、豪華豪華。

今まで見てきた歌舞伎と違ってた。始まりは暗転。真っ暗な中に幕を引く音が聞こえ、バッとライトに照らされた舞台はお馴染み・吉原仲之町のセット。中央の桜はやや、小さめ。おずおずと花道から現れた次藤左衛門。「吉原に慣れていないなら、帰れ」と諭されて、ぐずぐずしているうちに花魁道中の渦に巻かれ…。

主役のふたりの仕草や台詞を、客席は全集中で待つ。オーケストラの演奏が始まる前に似たシンとする瞬間が、2時間の演目に何度も訪れる。どの場面もじっくり。そして、結末はバッと終わる。呆気に取られたまま席を立ち、トイレで一息ついたら、ホロリ涙が。大河ドラマ『いだてん』での愚直な役柄までも思い出されて、次郎左衛門が可愛いそうになっちゃった。

一幕目の『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』通称「野崎村」は部屋子の中村鶴松丈がお光役を抜擢され、話題を呼んだ演目。思いがけず、重い話に感じた。大袈裟にやって貰った方が、かえって、生々しく感じないという奇妙な事態に気付く。

二幕目『釣女(つりおんな)』狂言を元にした松羽目物の舞踊劇。中村獅童丈の太郎冠者が主人である大名にはりあって、釣り上げた(?)美女は渡辺えり子さんばりの醜女(十八世・中村勘三郎の義兄・中村芝翫丈)。獅童さん、可笑しい。絵に描いたような美男美女と醜女に絡まれる太郎冠者が同じ舞台にいる点が面白い。

今日は着物の人が多かった。雨ゴートだけじゃなく、八寸帯をいっぱい見たな〜。とっても、混んでた。シネマ歌舞伎で花魁役・玉三郎丈のを上映するらしい。#舞台感想

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