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八月納涼歌舞伎『新・水滸伝』お盆休みの歌舞伎座で、夏着物ウォッチングしてみた。

先に、着物の話をサクッと書くと、歌舞伎座の夏着物はハードルが高かった。冷房のきいた部屋から、ドア・ツー・ドアで来られるような、つまりは車で来ているような人しかいない感じで、水色やレモンイエローの無自っぽい着物に、涼しげな絽のお太鼓柄の帯。汗もかかないような、スレンダーなボディばかり。当然、私はワンピース♪

演目の感想については、南座もあるので、ネタバレありとしておきます。

最初に、牢獄中の林冲(りんちゅう・中村隼人さん)を心から慕う兵学校の教え子の彭玘(ほうき・市川團子さん)がひとりで舞台に現れて、舞台設定の独白。一方で、梁山泊(りょうざんぱく)の面々は、セリの下から現れる。居並ぶ、その気配。見得はきらないけど、全身に力をみなぎらせて、かっこいいよ〜

さて、さて。

山水画のような湖に浮かぶ島に隠れ住み、喧嘩上等、山賊まがいの梁山泊(りょうざんぱく)。不正に儲けた金品を金持ちから奪い取っては、貧しい民に配る『雲霧仁左衛門』のような活動をしていて、常に人材不足である。宿場で耳にした噂話だけが情報源という時代に、リーダーの晁蓋(ちょうがい・市川中車さん)は林冲に目をつける。林冲は朝廷軍の兵学校の先生で、なにかと、武勇にたけた人物。なのに、投獄中なんて、冤罪なんじゃないのと、牢屋から略奪。だが、林冲は梁山泊に馴染まず、酒びたりの世捨て人になっている。そう、中村隼人さんは中々、出てこない上に前半はぐだぐだなのである。びっくり‼️

それだけに、終盤の立ち回りのシーンに、スカッとする。朝廷軍の兵に四方を囲まれ、ヒラリヒラリと刃をかわす姿は、上から見ていると台風の目のよう。

梁山泊が向かい入れる朝廷方の人物がもうひとりいる。

纒足(てんそく)をしていなかったが為に生きる術なく、戦士になったという青華(せいか・市川笑也さん)である。ちなみに、お夜叉(おやしゃ・中村壱太郎さん)は動きがちょこまかしていたから、纏足していたのかしら? で、青華は二刀流で強いのに、男に「尊厳を踏みにじられ」、ヒゲモジャの王英(おうえい・市川猿弥さん)に惚れられ、大切にされて、梁山泊で生きる場を得るのだ。私はイヤホンガイドの言葉に少なからず反応し、歌舞伎界は誰かを受け止める梁山泊なのかしらと、かんぐってしまった。いや。歌舞伎界ではなく、澤瀉屋が…。

月が見えなかったのはとても、残念だけど、大小のセリを使った舞台美術に、目を奪われた。『新・水滸伝』には古典とは別の面白さがあった。これから、誰が、何が、生き残っていくのかを見守りたい。

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