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アート独り言。(美しくて、苦しい。円空大賞展)

先日、平日に用事がありお休みをいただいた。早めに用事を済ませ、岐阜県美術館の円空大賞展へ。

円空大賞とは
「円空の独創性や慈愛の精神」を注目すべき本県の個性と捉え、平成11年度より土着の伝統に根ざしながら独創的な芸術を創造している芸術家を「円空大賞」として顕彰する。

円空は、江戸時代修行僧として全国を行脚しながら生涯に12万体もの神仏像を彫り続けたと伝えられていて、岐阜の羽島市に彫刻が沢山ある、なじみの深いもの。

数年前美術館からの依頼で円空大賞展の作品を撮影させていただいた。カメラも古く、映像作家とはまだ名乗っていなかった頃。私は第8回から鑑賞するようになった。

第10回の大賞は、タラオーシャン財団が受賞した。

Tara Océan財団とは

2003年より世界中の科学者や研究所と協力し、科学探査船タラ号で世界中の海を航海し、気候変動と環境破壊が海洋にもたらす影響を研究している。アニエスベーが2003年に設立しメインスポンサーとして15 年間にわたりサポートしている。

海洋調査をするタラ号には、アーティストが一緒に乗船し、その時に感じたものを作品として発表している。

展示されている写真や作品は、人間がつくったもの、自然のものが入り混じり、モノクロームで表現してある写真もあった。

歩き進めるとVRゴーグルがあり、ビョークVRで恐怖体験したので躊躇していると「よかったらタラ号に乗る体験してみてください♪」と笑顔で言われたので恐る恐るゴーグルを装着した。

右も左も海。空、船。私は海の上にいた。だんだん息が上がってくる。人に迷惑をかけそうなのですぐにゴーグルを外す。

すぐに次に向かうと今度は安藤榮作さんの巨大木彫、かきなぐったかのような壁面。下にはまるで川の流れを表現しているようなおびただしい数の木彫。

生命の潮流か・・・

キャプションを読むと、3.11でアトリエが流されたことが書いてあった。深い悲しみがじわじわと心に押し寄せてくる。記録映像監督作品の映像も、心に押し寄せるものがあった。記録に深い意味を感じる。

楽しみにしていた池田学さんの作品も、希望と絶望が精密な絵の中に表現され、心が限界に来てしまった。

最後に見た大嶽有一さんの作品。鉄の板を錆び、腐食によってまことに美しいテクスチャーに変化させていた。その存在感は忘れられない。長い年月によって、美しく生まれ変わることが可能なのだと、希望を持てる作品だった。

足元がフラつきながら、アトリエに向かう。アトリエには「アーティスト・イン・ミュージアム」三輪祐子さんが滞在制作されている。

真っ白な空間に不思議な時間が流れていた。よくわからないので、三輪さんに聞いてみることに。三輪さんは、ワークショップ用の木の皿を削っていた。はじまり、呼吸、 循環をテーマとし、少しでも何か感じてもらえたら、というコンセプト。

「生活の中に余白って大事なんですよね。今はどこにいてもスマホが鳴るから隠れる場所もなくて皆さん疲れていらっしゃる」

まるでカウンセラーのような優しい語り口。

今の私に全く足りてない「余白」。お話をしていたら思わず涙が出そうになってしまった。円空大賞展、とても美しかったんですけど、苦しくて、と話すと、先に円空見てからこちらに来てくださいと訪れた方に案内されていた。

アトリエに来るのは7割が20代の若者で、何かがやりたいのに何をしたらいいかわからない若者が訪れていた。私は明確になってはいるものの、一喜一憂して自分勝手に疲れていたりする。もう少し心に余白を作り、人生楽しんでいこうと思った。

撮影した第8回円空大賞展↓(撮影は依頼されたものであり、展示の撮影には許可が必要です。)

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