トランプ元大統領に学ぶ? 監査調書に使ってはいけない英語【監査ガチ勢向け】
トランプ元大統領はいろんな意味で規格外の政治家ですが、英語での言葉づかいも規格外。調書で使ってはいけません。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。
監査調書では、監査証拠に裏付けられた事実に基づいて監査判断に至る過程を明確にしなければなりません。
監査はそういうもの、とも言えますが、監査が育った英米の文化が背景にあると思います。
このあたり、以前にてりたまnoteで書きました。
「文化」なので、政治の世界でも同じことが言えます。
上のてりたまnoteで書いた5つの調書の要件のうち、次の3つはアメリカの政治家が話す内容にも求められます。
❷ 理論に矛盾や飛躍があってはいけない
❸ 反論に耐えられないといけない
❹ 全体感からもやっと結論を出してはいけない
日本の政治家も不用意なことを言うと記者に突っ込まれますが、アメリカの方がより厳密さを求められるようです。
ところが、この3つのことごとく逆を行く政治家がいます。トランプ元大統領です。
トランプ元大統領の英語
アメリカの大統領は常に世界で最も注目される国家元首であり、その発言の世界への影響力も最大と言えます。
それだけに言葉づかいには細心の注意が払われますが、一方で人々の理性や感情に訴えてアメリカだけでなく世界を動かすような表現も工夫されてきました。
その結果、歴代大統領のスピーチなど発言には格調の高いものが多く、『大統領の英語』というタイトルの本も何冊か出版されています。
その意味でもトランプ元大統領は規格外。
よく使われる言葉を見ていきましょう。
「ものすごい」
トランプ元大統領は、自分の支援者が大勢集まっていることを何度も強調します。こんなときに"tremendous"(ものすごい)という表現をよく使います。
このほかにも似た意味で次の言葉もよく出てきます。
great
amazing
huge(莫大な)
massive(どでかい)
big league(最高の)
"huge"は強調しすぎると"h"がとれるようで、"yuge"と書かれることもあります。
"very"も頻繁に使われます。
「ありえない」
北朝鮮との交渉が進展していることを述べた発言です。
"incredible"は口癖のようで本当によく出てきますが、似た意味の"unbelievable"を使うこともあります。
「かつてない」
「かつてない」という意味で"ever" や"never" がよく使われます。
また、「最上級+in the history」もよく出てきます。
「みんな」「誰も」
"nobody"の例はすでに出しましたので、"everybody"の例を。
経済成長が1%を超えたときに、意気揚々と語った言葉。ニューヨークタイムズによると、専門家は1%は超えると予想していたとのこと。
そして、罵詈雑言
記者たちの質問に答えているうちにエキサイトして、最後の方で言った言葉です。
一応、最後は"Thank you."で締めています。
そのほかには…
loser(負け犬だ!)
illegal(違法だ!)
disaster(災難だ!)
criminal(犯罪者だ!)
stupid(バカだ!)
dumb(間抜けだ!)
fake(でっちあげだ!)
最後の"fake"は、気に入らない記者の質問には”Fake news!"とだけ言って答えようとしなかったことが記憶に新しいところです。
なぜ、このような発言が許されているのか
アメリカの政治家がテレビのインタビューを受けるとき、過去の発言が映像で流されて「今おっしゃっていることと矛盾していませんか?」と意地悪く詰める場面をよく見ます。
詰められた政治家は、しどろもどろになりながら過去の発言と今の発言とが矛盾しない理由を説明します。
たいていは理由になっていないので、また突っ込まれます。
トランプ元大統領はどうしてこのように詰められないのか、ずっと不思議でした。
そこで思い出したのが、フォレンジック(不正対応)の専門家から聞いた、次の言葉です。
個人的な推測ですが、記者たちにとってトランプ元大統領は別世界の生物のようで、驚くばかりで取り扱いがよく分からないのではないかと思います。
監査人としての学び
冒頭に挙げた5つの調書の要件のうち3つに照らして、トランプ元大統領の発言について考えてみましょう。
❷ 理論に矛盾や飛躍があってはいけない
トランプ元大統領の発言にはそもそも理屈がないので、矛盾や飛躍といった問題は超越しています。
❸ 反論に耐えられないといけない
記者に反論する時間を与えないか、反論されてもまともに取り合いません。
❹ 全体感からもやっと結論を出してはいけない
全体感どころか何もないところから突然結論だけが示されて、理由の説明はありません。
監査調書に罵詈雑言を書く人はいませんが、気をつけないと上記の3点のような問題を起こしてしまうかもしれません。
トランプ元大統領ほどでなくても、矛盾や飛躍はないか、反論には耐えられるか、もやっとした結論でないかはよくよく注意する必要があります。
おわりに
今年(2024年)は選挙イヤーと言われ、世界中の主要国で選挙が行われます。そのハイライトが11月のアメリカ大統領選。
さまざまな裁判の被告となりながらも、共和党の候補者としてはトランプ氏優勢と言われています。
ここでご紹介したような英語に触れる機会が増えるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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