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サワラが準絶滅危惧種に指定された件について、IUCNの原文を読んでみた

サワラが準絶滅危惧種に指定されてしまった

サワラ(Scomberomorus niphonius)が準絶滅危惧種に指定されたニュースは既にご存知のとおりかと思いますが、IUCNの原文を自分でちゃんと読んでみたらいろいろと気づきがあったのでシェアします。

ちなみに、IUCNレッドリストにおける準絶滅危惧種(Near Threatened)の定義は、「現時点では満たしていないが、近い将来、深刻な危機・危機・危急のカテゴリーに合致する、あるいはすると考えられる」というステータスです。メカジキクロマグロヨシキリザメと同じグループに入ります。2011年のIUCN評価ではDD(データが少なく評価できない)とされていましたが、このたび準絶滅危惧種に指定されました。

サワラの資源評価状況

成長乱獲が進んでいると考えられる

the age structure of catches has changed as evidenced by a high proportion of 1 year olds now comprising most of the catch, which is potentially due to growth overfishing.
(漁獲の年齢構成が変化しており、1歳魚の割合が漁獲の大半を占めるようになっている)

IUCN

気候変動により産卵域が減少している可能性がある

the spawning area may be decreasing due to climate change

IUCN

(勝川先生がXで指摘しているように、産卵域というか生息域が減ったというよりかは北にずれた気もするのですがどうなんでしょう)

ロシアや中国などで乱獲が進んでいることを踏まえた」とはIUCNの原文にない

時事通信の文章にはこう書かれてるけど、IUCNの原文では

less information is available on this species population in China or Korea, where an estimated 50% or more of the global catch occurs.
(世界の漁獲量の50%以上と推定される中国や韓国では、この種の個体群に関する情報は少ない)

IUCN

とまでしか書かれていない。中国と韓国におけるサワラの漁獲量と漁獲努力に関するより多くの情報が必要だというのは繰り返し書かれてはいる。

日本における瀬戸内海の資源回復プロジェクトについて触れられている

Japanese Spanish Mackerel are heavily fished in many parts of their range, and there was a localized collapse in the Inland Sea of Japan. As part of a Japanese national project for recovery of fishery resources, release of juvenile Japanese Spanish Mackerel raised in the hatchery started in 1998 and, there are regulations to prohibit fishing on young-of-the year fish and to control fishing effort (numbers of boats and seasonal closures) in the Inland Sea.
(サワラは生息域の多くの地域で漁獲量が多く、瀬戸内海では局地的な漁獲量の減少があった。日本の漁業資源回復のための国家プロジェクトの一環として、孵化場で育てられたサワラの稚魚の放流が1998年に開始され、瀬戸内海では稚魚の漁獲禁止と漁獲量の管理(漁船の数や季節的な禁漁)の規制が行われている。)

IUCN

中国の資源管理アプローチについて触れられている

According to Sun et al. (2022), in China seas, current dominant management measures include minimum landing size limit, minimum mesh size of fishing gear, and total allowable catch. There is a summer moratorium to protect the main spawning period which stops fishing for about four months a year.
(Sunら(2022)によると、中国海域では現在、最小水揚げサイズ制限、漁具の最小メッシュサイズ、TAC(Total allowable catch)などが主な管理手段となっている。主要な産卵期を保護するために夏季モラトリアムがあり、年間約4ヶ月間漁獲が停止される)

IUCN

改めて原文を読むと、色々と気づきがありますね。
(サムネの画像はwikiのものを使いました)


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