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気ままな90歳代一人暮らしの気遣い

さゆり(仮名)さんは一人暮らしの92歳女性。土曜日の夜に一人で救急外来に来ました。ご家族は息子さんが二人。埼玉県と神奈川県で少し離れたところに住んでいます。

さゆりさんは、コロナになった後から息苦しくて辛いと訴えています。3週間ほど前にコロナに罹患したとのこと。「最初の10日間は訪問看護師さんに水だけで過ごすように言われて何も食べなかった。」とさゆりさんは医師に話しています。

要介護認定を受けていて、デイケアに通ったり看護師が自宅に訪問するサービスを受けているようです。「コロナに罹ってからずっと辛かった。デイケアでも移動する時は両方から抱えらえる感じで移動していた」とのこと。なのに、土曜日の夜に一人で病院に来るのは不思議です。誰にも相談しなかったようには思えません。

救急外来では、まずバイタルサインを測定します。さゆりさんの体温・血圧・脈拍・呼吸回数・酸素飽和度は全て正常値でした。値だけみるととても健康的な値でした。呼吸音も特に肺炎を疑うような音も無くとても綺麗な音です。本人の息苦しいという訴えと値に乖離があります。これは、訪問看護師さんも自宅で様子をみるという判断になりそうです。

ただ、表情と体の置き方がとても辛そうです。医師は脱水を疑い採血をしました。採血の結果、カリウムが低値だったので、医師はさゆりさんに入院を勧めました。さゆりさんは、最初は迷っていましたが入院して治療を受けることにしました。

入院をするので、看護師からご家族やケアマネージャーさんに連絡しましたが、土曜の夜のためケアマネージャーさんには連絡がつきません。ご家族もお忙しいのか電話に出ることができなかったので、さゆりさんのスマホのLINEから「入院したので病院に電話をください」とメッセージを残しました。

さゆりさんのご家族からは入院してから病棟に連絡が入り、ご家族へ医師から病状の説明をしたり、看護師から入院の続きなどのお話をすることができました。

90歳を過ぎても元気で一人暮らしをしている方が大勢います。これからは、もっと増えるかもしれません。さゆりさんもご主人を亡くされてからは、デイケアなどを利用しながら一人暮らしをしています。

少し気になったのが、さゆりさんが息子さん達にとても気を使っているということです。「10日間何も食べなかった」ことの経緯ははっきりませんが、どうやら息子さん達はこのことを知らないようです。さゆりさん曰く、息子さん達にも「家庭があり、仕事があるから」と。迷惑をかけたくないという気持ちを強く感じました。母としての気遣いかもしれません。

気遣いのさゆりさんは、人生最後のときまで周りに気を使い、ケアしてくれる地域の方々にもワガママを言わず、母としても息子さんたちへ気遣い過ごされるのだと感じました。

家族のあり方はその人の人生そのものを色濃く映し出します。

皆が幸せになれる「家族」でありたいものですね。

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