見出し画像

「『ヴェノム』に見る、これからの映画マーケット」について。

#ヴェノム 』を観る人って、少なからず
既にマーベルスタジオ、ひいてはディズニーが展開している(後述)
マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、 #MCU )的なものを期待しているわけですよね。

つまりは、「ヴェノムの次回作では、別作品のあのキャラクターが出てきて…」とか
「今度はこっちのキャラの独立版シリーズが始まってアイツと戦って…」とかっていう
プロレスのマッチメイクみたいな構造のシリーズ展開を。

もちろんソニー・ピクチャーズはそのつもりで、
今後も『シルバー&ブラック』や『ジャックポット』といった
マーベルキャラクターの実写映画シリーズの製作を発表しています。
Sony’s Universe of Mavel Charactors(SUMC。なんか銀行みたいですね)として
MCUの後追い、かつ別軸の世界観で“キャラものビジネス“に参戦していこうという試みです。


「マーベルスタジオがすでにバカデカく展開しているんだから
 ソニーが今から後追いしたって遅い」と思う方もいるかもしれません。
ですが、2008年の『 #アイアンマン 』公開から10年経った今からのスタートでも
十分に戦える...というよりは、権利ビジネス上では(もちろんマーベルスタジオほどとは言いませんが)
圧倒的な立ち位置を取るはずです。

というのも、彼らのビジネスモデルにおいて
アウトプットが“映画”であることはひとつのスタイルでしかなくて、
価値を持っているのはキャラクターだから、それを扱う権利をることが一番大事なのです。
つまり儲けるのは映画の興行収入だけではなく、それに付帯する価値でマネタイズしようということ。

身近でわかりやすい例としては、フィギュアなどのキャラクターグッズが売れる。
キャラクターを映画以外で扱うときの権利を、多額で売れる。

これは、『スター・ウォーズ』(1997)でジョージ・ルーカスが
”作品の上映による収入(興行収入)では利益が出ない”と考えた20世紀フォックスから
安いギャラを提示され、代わりにキャラクターなどの販売利益を獲得したことで
大きな収入を得た話とリンクします。

『スター・ウォーズ』シリーズも、マーベルの一連の作品についても、
いずれも素晴らしい映画作品であると同時に、キャラクタービジネスなので同じモデルでビジネスが成り立つ。
映画製作会社が、映画以外で本気にビジネスしているってことになります。


ディズニーがこれの最上位モデルですね。
だって、もとからミッキーマウスとその仲間たち、『シンデレラ』『美女と野獣』に見るようなアニメ映画作品を
自社権利で作ってきた上に、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』などのピクサー買収、
そしてここまでで話した、マーベルスタジオ、『スター・ウォーズ』のルーカスフィルムも買収。
さらに今年の夏、老舗映画スタジオの20世紀フォックスを傘下に置く、21世紀フォックスも買収することも決まり、
『タイタニック』『アバター』、『エイリアン』や『X-MEN』など、挙げればキリがないほどの強力コンテンツも獲得することになりました。

ミッキーもミニーも、シンデレラもベルも、ジーニーもカジモドもシンバも、ウッディもマイクも、ジャック・スパロウもオラフも、
アイアンマンもキャプテン・アメリカも、ルークもR2-D2も、ウルヴァリンもデッドプールも全部親戚関係になっちゃうので
これらの関連商品が世に出るたび、売上は回り回ってディズニーに入っていることになります。

ちなみにディズニーはこれを展開するメディアとして
アメリカのテレビネットワークABC(世界最大収入額の放送局と言われています)を既に持っていて、
21世紀フォックスの買収に伴って、日本でも会員数を伸ばしているHuluも掌握することになります。
上記の全作品を、キャラクターを視聴するときは、今後は全てディズニー傘下のメディアで観ることになります。


マーベル原作の映画作品に話を戻すと、MCUで出てくるキャプテン・アメリカやソー、アイアンマンなどは
マーベルスタジオ(もといディズニー)が権利を持っていますが、
今回のヴェノムや、マーベルの大看板・スパイダーマンはソニー・ピクチャーズが権利を持っています。
SUMCは、このユニバースを作っている間はその権利である程度収益を上げ、世界観を作っておけば
先のことはわかりませんが、もしその権利を売りたいというときは
さらに多額の利益を上げることができるようになっているはずなのです。
(その代わり、それ以降の版権を買うことができる、超巨大な資産を持った企業はどこでしょうね。もうわかりますよね)

だから、後追いでもなんでもいいんです。
まだMCUが取っていないキャラクターの権利を、独自の切り口で
世界観を構築すれば、権利販売でお金が生まれる。
映画製作会社がお金を稼げば、ユニバース以外でも強力な作品が生まれるという側面もあります。


世界規模の映画マーケットは、もはや作品単体ではなく権利ビジネスで回ってきています。
(もとからそうなんですが、近年で激化していると思います)
日本の映画業界は...キャラビジネスにはなっていませんね。
漫画・アニメ、ゲーム作品は海外でも人気が出ているとはいえ、
実写映画に至っては、世界で権利を売れるような作品はありません。

『ドラゴンボール』など漫画原作の実写化権利をハリウッドに売って(ちなみに制作・配給は20世紀フォックス)、
世界ビジネスに参戦しようとした兆しはありましたが、僕は観ていないのですがあまりに原作との世界観がかけ離れていたようで
次の展開を打つことなく終わってしまいました。

最近では、『レディ・プレイヤー1』でガンダムやゴジラ、AKIRA、ハローキティなどの作品が登場しました。
あれはかなり良かったと思います。作品がシリーズにはならないのが惜しいところですが
日本のキャラクターであれだけ遊んでもらえると、次に国内の関係者が売り込むときの好例として使えるので
とてもありがたい事例だと思います。

日本と海外では、キャラクター制作の根底にある”主人公への共感”の部分が異なるので(これについては長くなるので別の機会に)
世界規模で戦えるキャラビジネスというのはなかなか難しいものがあるかもしれません。
ですがもし そんな存在が出てきたら、日本の映画業界から世界のアイコンになるキャラクターになり得るかもしれませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?