映画『ダークナイト』

 この映画はなんだか他のと違ふ、凄いなと感じました。
 何かなと考へたら、人間を敵視して人間を滅ぼそうとする登場人物。その本気度が凄いからかなと思ひました。
 そして、これは他にも言ってる人が多いですが、悪人がなぜダークサイドに落ちたかといふ説明がはっきりしてゐない。
 だから、かへって本気っぽく感じられる。
「それだったら、人間を憎んでも仕方ないよね」みたいな、『ジョーカー』のやうな映画だと、人間が人間であるといふ理由だけで、人間が人間を憎み、人間が人間を滅ぼそうとする衝動が存在する事実の、底知れぬ不気味さが一挙にしぼむ。

 『ジョーカー』のジョーカーさんの気持ちなんて、わたしは自分の母親関係を鑑みて、まったくよくわかる。同情しちゃうぢゃないですか。
 わたしと等身大になったら視ててしんどい。

 
 映画には、人間を根絶やしにする、世界を滅ぼそうとする悪人が出てくることが多いです。まあ、適度に活躍して、最後は残念ながらやられちゃう。
 それでも、悪といふだけでなく、どこかヒーローの要素が感じられる。
 つまりは、ダークヒーローだらうと思ひます。

 悪なのに、なんでヒーローかといふと、やはり、凡人を超えてゐるからだと思ひます。わたしたち凡人は、ふだん、殺してやると言ってはゐるものの、次から次へと人を殺してしまって、しかもその後もずっと飯がうまいといふやうな精神はとても持てないからだらうと思ひます。

 ジョーカー役のあの人は、次のやうなことを言ってゐたさうです。 
 
とにかくあの独特の声と笑い方を追求することが重要だったんだ。それでついにあのサイコパスの領域にたどり着いたんだ、良心のかけらもないあのジョーカーのね。彼は絶対的な反社会主義者で、冷血で、大量殺人を犯す道化師だ。

 どんなに残酷な殺し方をしても、ずっと口角上げっぱなしで笑ってゐられるとしたら、それはやはりわたしたちがなりたくてもなれないヒーローです。

 『ダークナイト』のジョーカーは、『イコライザー』の主人公ロバート・マッコールと並んで、わたしの憧れのヒーローです。


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