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東京オリンピック3兆円だって、見えちゃった業界の闇

ネットニュースをみていたら、東京オリンピック・パラリンピックの費用が3兆円かかるという記事がありました。
オリンピック史上最高額らしいですね、
いやーやっぱりすごいお金が動くんだなとびっくりして、何にそんなにお金がかかっているのかなと疑問におもっていたので調べてしました。
東京都がだしている「大会経費V5(バージョン5)」をみてみると内訳がのっていました。

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いろいろ書いてありましたが、気になったのは会場施設費用が3,000億円を超えてることでした。たしか最初は700~800億円だった気がしましたし、そのあともミニマムオリンピックとかいって費用をおさえる話がでていましたが5倍以上にもなっていたことには正直びっくり。これについてはかけすぎだとか財政出動だとかいろんな意見があるので、どうこう言う気はないのですが当初の見積もり金額から5倍はすごいなとおもいました。ゼネコンはウハウハですね。オリンピックバブルとはまさにこのことです。
私の会社でもゼネコンから来る人は結構います、オリンピックバブル後は仕事がないといって2年ぐらい前から転職してきた人もいました。

東京都はこれを受けて、結構いろんな人から言われてますね、使い過ぎだとか、ゼネコンばっかり儲かっているだとかいろんな記事があります。ただ、私からみれば、これはしょうがない、業界の裏が露出してしまったねと言わざるを得ません。なんでこんなに建設費が膨らむのか、それは簡単です、東京都だけでなく、どこの行政もそうですがゼネコンには勝てないのです。昔であれば、新設する工事も役人がある程度金額を算出して、基準価格というものを作成します、それより低い金額を入札した業者がそれを競り落とす制度が成立していました。しかし、いまの役人はそれができません。ほとんど見積採用で基準価格を決めています。これはどういうことかというと、ゼネコンからあらかじめ見積をもらってそれに×0.9だとか係数をかけて基準価格を決めています。新しい建物はカッコイイよくて、すごい高度でどこにもないようなものがいいですよね?そういうものはもう役人は技術力がなさ過ぎてどれくらいかかるかわからない、それでゼネコンからどれくらいかかるか聞いてお金を決めています。そうするとどういうことが起きるのかというと、ゼネコンは欲しい金額だけ紙に書いて渡すだけになります。だからどんどんドンドン金額が高騰していき、何倍ものお金を支払うことになります。「金額が高騰して大変なのは契約する最初だけだよね」とか思いませんか?そんなに甘くありません。契約業者が決まって、「よし、仕事が終わった」と思ったらすぐにゼネコンから連絡きます。「地面を掘ってみたら予定していなかった支障物がでてきました、追加費用が必要です。」これを設計変更といいます、こんな感じで毎回毎回ゼネコンから追加の費用を請求されまくります、どれくらい発注者から搾り取れるのかがゼネコン担当者の腕の見せ所です。とくにオリンピックのような絶対に遅らせることができないプロジェクトに対しては行政の予算なんて関係なしといわんばかりの容赦ない請求がきます。
まあ、ここまでゼネコンが悪く見えるように書いてしまいましたが、安全でいいものを確実につくってくれるゼネコンはやっぱりすごいと思います。これを役人や畑違いの人々が制しようとするのは所詮無理な話です。

じゃあどうすれば?
一つは契約金額を数社と競わせて競り落とさせることです。これはどの業界でもやっていることですが、競争させることによって最も金額の低い会社が勝ちます。ただ、日本ではあまりこの競争が上手く働きません。なぜなら大きなゼネコンは5社しかないからです。この仕組みは会社が多ければ多いほど効果をもたらしますが、日本では難しいですね。
このような仕組みで、なにが一番課題かというと「工事費が決まらない」ことです。前述しましたが、最初に契約金額を決めたとしても工事の途中でいろいろ請求がきたら、発注者は困ってしまいます。聞いてた話と違うなんてことが日本では頻繁に起こっています。これらは行政が発注する公共工事であれば多少膨らんだとしてもオリンピックのように議会の予算承認は比較的容易に通ると思いますが、民間でこれをやられるとかなりきついです。例えば車を300万で買ったとして、引き取るときに「すいません、もう200万かかります」なんて言われたら困りますよね。建設業界は当然のようにこういうことがあるのです。

さあ、発注者は困りました。
5社いる相手は全員、必ず後出しじゃんけんをしてきます。こっちの懐事情なんてお構いなしです。そんな時は外に目を向けましょう、そうです海外ではどうなっているのでしょうか。
実は海外でもこういういびつな状態がずっと続いていました。海外とくにヨーロッパの方々は発注者が損をするなんてとんでもない!という考えの人が多かったんですね、発注者の団体や弁護士団体が結成されもっと公平な、つまり発注者も納得し、請負者(ゼネコン)側も納得できる契約を作ってしまおうという動きがありました。そして多くの年月をかけてFIDICという契約約款がうまれました。

FIDIC誕生

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FIDICは、日本の請負契約とおなじで(海外ではEPC契約と呼ばれる)スタンダードな契約書のようなものと理解していただければ問題ないです。日本の請負契約はそれぞれ企業で作成し、異なる箇所もあるのですがそのもとになるベースは民間連合約款や日建連の設計施工約款がベースとなっています。特徴は、請負者(ゼネコン側)に優しい内容となっていることです。しかしFIDICはどちらかというと発注者に優しい内容、または中立の立場の約款となっています。わかりやすくいうと、契約金額以上はまず払うことはありません。前述した工事の途中で発生した追加工事についてはすべて請負者(ゼネコン側)が払うことになります。また補償内容についてもしっかり明記されています。FIDICはEPC契約の中ではアジアで最も使われている契約約款ですので日本のゼネコンも海外で工事をする際にはほとんどがFIDIC適用されてしまいます。ゆえに後出しじゃんけんができない、つまり日本のゼネコンが海外で勝てない理由はこういう契約上で自分たちの独壇場にもっていけないということもあるのです。

じゃあ、日本でもFIDIC使えば?という意見があると思います。まあやろうと思えばできるのでしょうが、そんなことは日本のゼネコンが全力で拒否してきますので日本でFIDICが使われることはまずないでしょう。ただ、海外で活躍したいのであればFIDICの知識は非常に役に立ちます。
以上日本の建設業界の話でした。

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