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【小説評】『盤上の夜』 宮内悠介

表題作『盤上の夜』を含めた「ゲーム」に関する連作。「ゲーム」といっても大体の人が想像する「テレビゲーム」ではなく、囲碁、チェス、麻雀、将棋などの「ゲーム」に関するもの。日本SF大賞受賞。

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ちょっと前にAlpha Goがイ・セドルに勝利した話はまだ記憶に新しい。この作品はその少し前に描かれたものだが、「Alpha Go以降」の時代を考えるにあたって非常に多くの示唆を与えてくれる。

表題作『盤上の夜』は、四肢を失った囲碁棋士、由宇の現在を追うライターの視点で描かれた物語。四肢のない由宇が囲碁を極めていくにあたって、碁盤があたかも自分の体の一部のように、幻肢痛を感じるというのだ。19×19路の碁盤の世界を体の拡張と感じる由宇には、「囲碁を表現する」ために語学にのめり込んでいったという。北極圏に住むエスキモーが「雪」を「20以上の言葉」で違う表現をするように。

その他、機械によって「完全解」が導かれてしまい、葬り去られたチェッカーについての短編『人間の王』、運が大きく作用する麻雀でお約束の心理戦と、そこに現れた不気味な存在との対峙『清められた卓』、古代インドでゲームを作り出したブッダの実子ラーフラの物語『象を飛ばした王子』、将棋を軸にどろどろの人間を描く『千年の虚空』。

どれもゲームにそれこそ命懸けで対峙してきた人々についての短編集。対局の果に見える人智を超えたもの

AIが人間に勝ったといって、人がゲームをやめることはないだろう。

ではゲームがどう変わるか。ヒントがこの中にある。

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