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社会人大学院のススメその1~コスパ・タイパが悪いあなたは学問の才能があるかも!?~


タイパコスパの世界の底辺から


 最近何かと重視されがちなのが「コスパ」「タイパ」である、らしい。コスパとはコストパフォーマンス、タイパとはタイムパフォーマンスの略語で、それぞれ能率の良さを示しているそうな。らしい、そうな、というのは筆者は今現在は全くそういうのとは無関係な人生を送っており、おかげでストレスなく過ごせているからではある。

 そもそも筆者は高校は越谷北高校というそこそこの進学校出身で、今で言うところのコスパタイパの世界に苦しめられてきた。そしてどこかで詳しく述べようとは思うが、親が典型的な団塊毒親で、まあ、本当に大変であった。
 特に愚母はお気に入りの弟をえこひいきするためなら何でもするハチャメチャな人であったので特にその害は強烈で、どうしても保護者サインがもらえないために私は本来希望の美大芸大に進学できず、一年目の受験は寝込んでまともに受けられず。泣く泣く一浪の末に全く希望と異なる一般大学に進学した経緯がある。「将来的に弟を食わせるため」というめちゃくちゃな理由でもってして進学した東京農業大学ではあるが、これまた途中で気分が変わった毒親の方針で、学費を自分で払う羽目になっている。進学希望でない大学の学費を自分で働きながら払うのはさすがにむちゃくちゃで、途中で体を壊した。そのリハビリの過程で阪神大震災ボランティアに参加し、政治の世界にも繋がるのだが、まあそれは置いておこう。
 大学ではJRAと組んだバリバリの最新研究をラボで行う羽目になった。馬やウズラなどの家畜ゲノムのPCR遺伝子分析で、それから四半世紀たったコロナ禍の今ようやくPCR技術が一般化したことからも先端性がわかるだろう。これは当時は実質成績順で研究室が決められるためで、成績が男子1位(総合2位)だった私は希望は一応聞かれつつも、半自動的に当該研究室になったのだ。学部生ながらに大学院進学や就職先を餌にとにかく成果を求められ、自分のやりたい研究も見えない中、教授や博士院生から与えられたテーマをこなすために毎日始発&終電で研究を続けていた。そのあとで学費を払うために深夜コンビニやバーテンダーのバイトをしていたのだから、体を壊すまでの1年はほぼ寝ていない。我ながらよく生きていたものだと思う。ちなみにその際に愚母に「私が払っておくから」と言われて納めたはずの国民年金保険料は、愚母に着服されて一切入ってなかったので無保険期間まである。
 さて。そんなストレスフルな青春の中、体を壊したときに投稿したCGの才能が認められ在学中から依頼が発生してビジネス化。友人らと共にゲームを作りつつ、当時はまだ「入学に大卒資格を要する各種学校」という変わった存在だったデジタルハリウッド本科プロデュースに進学できたのは九死に一生を得た、といっても良い幸運だっただろう。デジハリも、今のFランク大学の姿とは異なり当時は他大卒エリート集団だったので、良い仲間と使えるスキルを得て、1999年にCGとデザインの会社を設立し、そのまま現在まで代表を務めている。
 まあ要するにタイパコスパの世界の底辺からなんとか這い上がって今に至るわけである。

2013年NABSHOWの写真。こうした海外コンベンションにも気楽に参加できるのはデジハリで与えられた基礎スキルがあるからこそ。

這い上がりのきっかけ、デジハリの大卒者向けスクール

 さて。私の経歴で注目すべきはデジハリことデジタルハリウッドの大卒者向けコースである本科プロデュースコース進学だ。
 あまりに典型的な搾取系毒親育ちの筆者が、なんとかかんとかまっとうな人生の一歩目を歩み出せたのはデジハリに入れたから、というのが大きい。
 デジハリは今でこそバカ浪人生が志望校に書いてネタに使う典型的Fランク大学として悪名を馳せてしまっているが、そもそもは日本初の大学院大学を目指していた米国式MFA(Master of Fine Art)取得機関のコピースクールであった。大卒者への1年間の詰め込みでCGソフトウェアのスキルを身につけさせて、ビジネスの最先端に適した人材を育成しよう、という野心的なスクールであったのだ(なお、実際のところ、大学となった現在のデジハリも一部の学科を除いて入試には実技が求められるので、東大や旧帝大合格者が受けたところで実は合格は難しい。美大芸大は入試において学科を全く重視しないという常識を知らない他分野受験者のあまりに愚かな勘違いだ)。
 デジハリ自体は、その後の小泉改革で大学院大学設立を断念し、カルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)の傘下に入りつつ日本初の株式会社立の学部を中心としたごく普通のデジタル系一般美術大として再開学した経緯があり、今では「デジハリで社会人の再学習を」といってもあまりピンとこない態勢になってしまっている。しかし、1997年、私の在学当時は、1年間の本科コースでなんと実質最終倍率が11倍という異常に厳しい競争を誇っていた。内部での卒業倍率も2倍程度と授業も難関で、当然に卒業生の進路も華々しく、当時の同期は美術系大学教授であったり、ゲームクリエイターであったり、国内の映画監督であったり、あるいはハリウッドのCG監督として名を馳せる者も居る。いずれも、当時のデジハリで人生を大きく変えた人たちだ。なんの学位も与えないただのスクールでありながら、スキルの授与の1本槍だけで私を初めとしてこれ程多くの人たちの人生を好転させてしまったのだから驚く他ない。
 いずれにしてもここで注目すべきは「大学院のような大卒者向けスクール」の要素だ。学部で重視される入試を中心とした社会でなんの役に立つのかわからない高校学習範囲の早解きクイズゲーム競走ではなく、ソフトウェアや基礎理論などの個々人の必要なスキルや個々人のテーマに合わせた再学習こそが、学んだ個々人の能力を最適化して他の一般的な人々と強烈に差別化し、コスパ・タイパの世界からの離脱を可能とするのである。

タイパコスパ世界を脱する特効薬。社会人向け大学院

 1997年当時のデジハリの場合には大学院ではなく、あくまでも大学院風の大卒者向けスクールではあったが、それから四半世紀が過ぎた2023年現在は、実に多くの大学院が社会人向け大学院を開校している。その中には仕事を継続しながらも通える大学院も多く、決死の思いでなんの学位も貰えないデジハリ本科を受験した1997年当時に比べてあまりに素晴らしい環境改善が行われていると言っていいだろう。
 かく言う筆者も、社会人向けの大学院である「京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)」の通信大学院で修士を得た後に同「京都芸術大学大学院博士課程」において博士(芸術)の学位を取得しており、しっかりとこの制度改革の恩恵に預かっている。従前までの学校名自慢の「学歴」と異なり、現代において実際に役立つこうした社会人学習を指して、京都芸術大学の本間正人先生は「最終学歴よりも最新学習歴の更新が大切である」としている。最新のスキルや学問知識を、時代時代の切り替わりタイミングで学び直すことで、常に次に向けた準備を行えるのが、こうした「最新学習歴の更新」の最大のメリットだろう。
 こうしたその時代ごとの社会人向け大学院への参加は、単にスキルが身につくだけでなく、素晴らしい仲間との出会いもあり、ビジネス環境が丸ごとアップデートされる。何より、冒頭に書いた通り、コスパやタイパに拘る必要もなくありのままの自分で最新の状況と充分に戦えるのは、本当にストレスがない。常に「必要とされる最先端の人間」であるというのは、本当に気持ちがいいものだ。まさに、自分の周辺環境を変える特効薬と呼んでいいだろう。
 まだ大卒学位を持っていない人は、通信制の大学学部もおすすめだ。コンパナンパに明け暮れる現役学生とは異なり、社会人として目的意識を持った大学通学は、より学問に特化した通信制であってこそ、より深い学びが得られる。
 しかしそれにしても、1997年の当時デジハリ本科であればスキル授与だけで終わるところを、2023年の今なら学位まで貰えるのだから、なんとお得なことだろうか。いい時代になったものだとつくづく感じる。

今日芸術大学の博士号授与登壇の瞬間。ガチガチに緊張している。

ざっくりと!

 タイパコスパの追求は現存艦隊主義で、縮小再生産でしかない。それよりも社会人向け大学院や通信制大学で大きく自分をアップデートした方が遥かにお得!
 おすすめ大学は、京都芸術大学の通信、名古屋商科大学のMBAなど。この辺は後々触れる予定。

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