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ナーナーのアラブ人街を歩いた

ナーナーにあるバムルンラート病院に用事があって行った。

BTSのナーナー駅を降りるとそこはもう異世界という雰囲気が漂う。ナーナー駅周辺はアラブ人街だ。

心なしか、通りにいる女性達の化粧がかなり濃い事に気付く。また、ヒジャブを纏う女性もいる。

歩いていたら、「Hello! Sir!」と白人に声をかけるおそらくタイ人のドライバーの声があった。何でもかんでも「サー!」をつければ良いわけでもあるまいと思ったが、とりあえず英単語の後ろにサー!を付けておけば、それで意思疎通が図れるというかなり強引な、昔ながらのグロービッシュの話法かと思った。

余談であるが、昔、少しだけ勤めていたタイのローカル企業で仲良くなった日本人上司から聞いた話で……、私がその会社を辞めた後に入社してきた日本人で、会社のタイ人社長への英文メールに、逐一、「Sir」をつけるという人がいたらしい。

タイ人社長からしてみれば、日本人社員から「Sir」を付けられて大分、気分が良くなったらしく、その日本人は営業マンとして全然、売り上げを上げなかったにも関わらず、何年もクビにならないで済んでいたという。

すごい男芸者ぶりだと思ったが、私にはそこまで幇間に徹する根性は無い。

品の良い外観のホテルもあった

下記のグレース・ホテルも、このナーナーの界隈のランドマーク的な建物であるかもしれない。

病院での用事を済ませて、ナーナー駅の方に向かって歩き出した。アラビア文字が入った看板が多くなる。

このアラブ人街を歩いていて、ふと思い出したのが『ナインハーフ 9½ Weeks』という映画だ。あの映画の中で、ミッキーロークがキムベイシンガーをイタリア料理屋に連れて行き、下記のような会話を交わすシーンがある。

This place has a lot of history.
(この店には歴史がある)

The chair you're sitting in right now, a guy named Gino Gambini... ...got his brains blown out... ...while he was eating the same thing you are, linguine con cozze. 
(いま、君が座っている椅子にはジーノ・バンビーニっていう名前の男が座っていて、そいつの頭は吹っ飛ばされたんだ。君が今まさに食べている『ムール貝のリングイーネ』を食べている時だった)

ナインハーフ 9½ Weeks

これは中々味のあるシーンで、いわゆる胡散臭い場所、何かドラマが起こりそうな場所として、ミッキーローク扮するジョンが、エリザベス(キムベイシンガー)を誘ったのだと思う。

ローカルのイタリアンレストランというのが、非日常を演出するために選ばれたデート先なのだろう。

誘われた女性によっては、「ワア、こんな場所に連れてきてくれた男性初めて!ハラハラしちゃう、きゃっ、きゃっ!」と言って喜ぶかもしれない。(そういう古典的な男性主導型の、女性観、恋愛観というものが、この映画には数多く投影されている。ただ、セリフそのものよりも沈黙や、意味ありげなオブジェだとか、動物などが随所に散りばめられていて、アート的な視点で観ても非常に完成度の高い名作であると思う)

それにしても、ジーノ・バンビーニって、一体、誰なんだ??という感じだ。ミッキーロークが即興で拵えた作り話じゃ無いかとも思えてくる。

そういう訳で、古典的な名作のナインハーフに倣うなら、大切な人を連れて行く先としてナーナーにある中東系レストランは良いかもしれない。



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