『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

吃音の症状を持つ志乃。

それを原因にして、言い訳にして、
いつも心を閉ざして逃げて、
どうして私は…って自分を
かわいそうにしているのは
志乃自身のように見えた。

皆それぞれにコンプレックスや
悩みを抱えていて、
他の人からみたら「そんなこと」と
思われるようなことだって、
当の本人にとっては、
どうしても受け入れられなくて
愛せない部分だったりする。

向き合って考えて曝け出して、
受け入れようと努力して
立ち向かっていくのか、
逃げてにげて、自分なんかって思って
空気のように存在を消して、
言いたいことも伝えたいことも
飲み込んで生きていくのか。

人は、自分で選べるし決められる。

もどかしい、もどかしかった。
皆不器用で寂しくて、
誰かと繋がっていたくて、
居場所がほしくて。
誰かに奪われそうで、
関係が変化していくのが嫌でこわくて。

志乃の姿に自分を重ねて
イライラしていた。
だからこそ背中を
押したくなった。

全てを伝えることが
良いとは思わない。
それでも、伝えたいことは
伝えないと、言葉にしないと、
「分かる」の前にも立てないんだ。

言い訳をつくるのはいつも自分だ。

自分を下に見ているのは
いつも自分だ。