芸人になって数年後、横浜の実家を出て品川に住んだ。当時付き合っていた恋人と同棲をすることにしたのだった。
彼女はバケツをひっくり返したような性欲の持ち主で、何度も浮気を繰り返していた。

ぼくが彼女の浮気に気づく前に、こんな出来事があった。友人と飲みに行くという彼女が目の前で着替えを始ると、身につけた下着が目に入った。
Tバックだった。
だが、ぼくにはその意味がわからなかった。
一緒に住んではいたが、彼女がどんな下着を所有しているか気にしたことがなかったし、特別な夜にどんな下着を履いているのか注意深く観察したこともなかった。

その後わかったことだが、一部の女性は男性へのアピールの一種として、そのような下着を履くのだそうだ。
ぼくは何もわかっていな無知な馬鹿野郎で、「いってらしゃい、気をつけてね」などと言っていたのだった。
もう10年も前のことだ。

その後、恋人のいる女性と食事に行き、自宅に誘って、類似の下着を身につけていることに気づくたびに、そのときのことが思い出されて、悲しみと興奮が混じり合った感情が喚起されるのだった。