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Jubilant power / Ted Curson & Company

ジャズ・ファンなら誰もがご存じ天才リー・モーガンは、恋人に射殺され若くしてこの世を去ってしまいましたが、彼の死後、1970年代の一時期だけ『ポスト リー・モーガン』と騒がれたのがテッド・カーソン。マルチ・トンペット奏者です。脚光を浴びたのがほんの一瞬だったことから、昔も今もジャズ喫茶でもほとんど聴く機会のないミュージシャンですが、ナイスなサウンドです!
演奏の基本的なスタイルはハードバップなんでしょうね。アップテンポな曲、ミドルテンポ、スローなバラードまで、いずれも分厚い音色を鳴らしています。帝王マイルスが彼を絶賛したと言われていますが、「なるほど!」と思わずうなってしまう個性的なフレーズがポンポン飛び出してきます。
また、このアルバムで改めてじっくり注目してみたのがベースのデビッド・フリーゼン。いつの頃からでしょうか、ベースが楽器の限界に近い高音のポジションでトゥ・テ・トゥ・トゥ♪トゥ・テ・テ・テと「私の速弾きどんなもんだぃ!」と言わんばかりの演奏をする人が多くなってしまいましたが、デビッドさんは違います。どっしりと、しかも時々ベースとは思えない美しいコードで曲に艶っぽい表情を加えてくれます。素晴らしい!
それと対照的なのが、スティーブ・マッコールのドラミング。はい!はい!はい!はい!無理してフリージャズを聴いていた若い頃、よく耳にした高速ドタバタ音がイカしてます。
ところで、ジャケットには一般的なトランペット、フリューゲルホーン(ちょっと大きめのヤツ)、ピッコロ・トランペット(決して小学生用ではありません)の3種類のラッパが写っていますが、それぞれ楽器のキーとなる音階が違うわけで、使い分けるのはさぞや大変だろうなと想像しています。トランペットは、3本の指でポンプみたいなものを上下させて音階を決める。それは順列と組み合わせで非常に微妙な調整なのでしょう。もちろんそれだけでなくマウスピースに当たる唇の形、それと息の吹き込み方などでメロディーやトーンを作っていく(私はまったく経験がありません)。それを3種類も使い分けるんですよ!凄いと思いませんか⁉
ここまでは、山野楽器の書籍・楽譜コーナーに行って「やさしいトランペット」みたいな教則本を購入した上で、3~5年くらい超マジで練習すれば何とかなるのだと思います。しかしながら、より高度な演奏を自分のモノにするためには教則本に書かれていることが完璧にできる、というだけでは足りないわけです。自分なりのやり方、自分なりのタイミング、楽器と自分が一体になるためのコツ、口では言い表せない‟自分なりの何か“を習得し、積み上げていく必要がある。そのようなことを突き詰めていくと、やがて自分だけの音ができるわけです。それがオリジナリティというもの。
実は、口では言い表せない‟自分なりの何か“というのは、どこの企業にでも存在しています。そして、ほとんどの場合、社員個人が持っている個性やコツ、動物的な「勘」、「嗅覚」や「条件反射」だったり…。それが取引先からやたらと評価が高く、企業にとって競合差別化の決定的なポイントとなっていていたりするわけです(この現象を『潜在的ケイパビリティ』とでも呼ぶことにしましょう)。
さて、その有能・優秀な評判の社員が永遠に年を取ることなく、しかも転職も退職も病気もせず存在しつづけてくれるならば企業にとっては誠に心強い武器ですね。しかし、そうは問屋が卸さない!差別化しにくい商品やサービスを提供している企業であればなおのこと、一刻も早く社員が持っている「何か」をマニュアル化するなりして、若い世代に移植できるようにしなければなりません。それができなければ、やがて企業に大きな穴があくことになるでしょう。国内には、そういった問題を抱えている中小企業がとても多いように感じています。この言語化やマニュアル化できない「何か」を如何に引き出して、企業内で標準化していくか⁉これが中小企業生き残り戦略の一つと私は断言します。
テッド・カーソンのアルバムの話題だったはずが、途中からから暴走して企業のコア・コンピタンスとかケイパビリティの話になってしまいました。
しかも文章が長い!くどい!すみません!
ジャズ・ミュージシャンとしてダイナミック・ケイパビリティを兼ね備えたテッドさんは、2012年心臓発作のため亡くなられました。77歳でした。きっと食べ過ぎ、太り過ぎが原因だろうと思います。

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