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【こころ #30】企業の障害者雇用担当に施設に来てほしい

濱 秀勝さん


 濱さんは、第21話第25話及び第27話でお話をお聞きした方々が、就労を継続し、また就労に移行できるよう支援してきた『社会福祉法人 大田幸陽会』の就労移行支援事業所『さわやかワークセンター』で、大学卒業後16年間勤務されている。上記の方々にお話をお聞きする傍らで常に笑顔で寄り添っておられた姿がとても印象に残る。


 実は、もともとは「子供がすごい好きで、保育士になりたかった」。しかし、保育士の実技試験には「音楽」がある。「そのセンスがなかった」。その代わり、自身がおばあちゃん子だったこともあり、同じ福祉でも高齢者福祉の道に進もうと、大学でもその学問を選んだ。

 大きな転機は、大学4年の時。友人の紹介で、知的障害のある方の施設の2泊3日の旅行にボランティア参加した。「めちゃくちゃ楽しかった」。誤解を恐れずに言えば、「障害のある方々と接したときに、すごく純粋で、子供のそれと近しく感じた。これだ!と思った」。蛇足だが、筆者も初めて知的障害のある方にお会いした際に、同じ感想を持った。


 濱さんが16年間のキャリアを振り返ってくれた。「若い時は、とにかく何かしてあげたい気持ちが強かった。事業所に来させないと、仕事をさせないとって。それってエゴだったなって思います」。利用者さんは自分より長く生きている“先輩”も多い中で、その方々の生きてきた何かを変えるのは難しい、というか無理に変えるべきではない。「今は、仕事をしに来なくてもいいから話をしようよ、絵を描いてよ、なんてアプローチに変わりました。まず楽しい場所になって、その結果何かが生まれればいい」。そう考えることで自分が楽になれる部分もあった。


 そんな試行錯誤をする中で多くの利用者さんを就労に送り出してきた濱さんには、一つの願いがある。企業で障害者雇用を担当する方に実際に施設に足を運んでもらい、清掃でも何でも一度一緒に仕事をしてみてもらいたい。「あんまり変わらない、全然働けるって、肌で感じてほしい」。

 勤務した16年間で、「障害福祉の関係者はたくさん来所されるが、一般企業の方が見学に来られたのは数名程度」だった。民間企業に義務付けられる障害者の法定雇用率は現在2.3%だが、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%へと段階的に引き上げられる。それで企業から積極的なオファーがあったとしても「求人票だけで終わらせたくない」。

 事業所ではこうやってきたから、次の職場でこうすればスムーズに就労できるなどと「会社側と一緒に考えたい。それが会社にとっても就職する本人にとっても楽だろう」。就職して終わりではなく、その後の定着支援までを視野に入れて長期で考えておられる故だ。


 濱さんが最後に教えてくれた。手前みそだが、「利用者の方は、土日という大事な余暇時間でも事業所に来てくれます。わざわざ土日に職場に来てなんでそんな笑顔なの?って普通思うでしょ」。でも、人生にとって仕事や職場って何だろうかと「大事なことに気付かされる」。だからこそ、濱さんは、利用者さんを就労に送り出す先もそんな場所であってほしいと強く願うのだろう。



▷ 社会福祉法人 大田幸陽会



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