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【こえ #37】いつか自分の声の録音テープを活かしたい

永沼 明美さん


 日本全国で甲状腺がんと診断されたのは、少し古いが、2019年で18,780例(人)。永沼さんは、長い間、その甲状腺がんのひとつで、甲状腺を構成する濾胞(ろほう)細胞から発生する悪性腫瘍である『甲状腺濾胞(ろほう)がん』と闘ってきた。

 いくつかの治療を試しながら、たどり着いたのが、虎ノ門病院で受けた『放射線性ヨウ素内用療法』。食事やホルモン剤の投与を制限した上で入院し、療法後は体内から放出される放射線の量が低下するまで暫くアイソトープ治療室に隔離され、その間は通常の医療や看護も受けられない。そんな療法にも6回ほどチャレンジしたが、「それでも悪性腫瘍は消えなかった」。


  そうした治療も経て甲状腺を取り除くことを決意。その際に担当医師から「声帯を残してもいいが、将来的に転移の可能性もある。どうしますか?」と問われ、もう「将来に安心する方がいい」と逡巡せずに声帯摘出を決めた。

 まだ摘出手術前の声が出るうちに医師から紹介されて訪ねた先が、声帯を摘出し声を失った人に対して発声訓練を通じて社会復帰を支援する公益社団法人『銀鈴会(ぎんれいかい)』。初めて『食道発声』という方法で声を取り戻せることを知った。さらに、地元の埼玉にも『埼玉銀鈴会』があることを知り、昨年4月に入会。永沼さんは今、声を取り戻そうと発声訓練に取り組んでいる。


 笑顔で「(声帯を)失っても大丈夫。生活は変わらず。」と筆談で書いてくれた。隣にいた旦那さんから「(奥さんは)言いたいことが伝わらないからジェスチャーが多くなる。すると、(奥さんは)耳は聞こえるのに、こっちまでジェスチャーが増えちゃって、変な感じだよ。」と同じく笑って教えてくれた。「コミュニケーションに時間がかかっちゃってイライラするよ」なんて言いながら、とても仲が良さそうだ。

 もちろん、課題がないわけではない。来た電話に出れない。逆に消防や救急など緊急時に連絡できない。娘さんにパスできればいいが、できない時はどうするか。家族の中でも「どうしたらできるか、やり方を検討中」だ。

 自力で発声する『食道発声』ではなく、人工的な声にはなるが、『電気式人工喉頭(EL)』と呼ばれる振動器具をのどに当てることで比較的早く声が出せるのでは?と聞くと、「当初は、それを持つ片手が塞がってしまって、家事とかしづらいし、疲れてしまうから、使うことを考えていなかった」と返ってきた。このELを“使わない”理由は、これまで他の多くの声帯摘出者からも聞かれた。

 ただ、一方で「コミュニケーションの速さや質を高めたいという希望も募り」、二刀流として『電気式人工喉頭(EL)』の購入も進めている。旦那さんが「(奥さんの)声を録音したテープを残してある」そうで、「そうした録音された自分の声が反映されてELですぐに発声できたらいいですよね。」と夢も話してくれた。こんなELなら“即座に使う”理由も、他の多くの声帯摘出者に共通することだろう。

 それは夢かもしれない。でも、それを実現しようと挑戦するエンジニアに出てきてほしい。


▷ 埼玉銀鈴会



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