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【こえ #22】喉頭(声帯)を摘出した。まだ40代半ば。「ショックで歩けなかった」…

長沼 優子さん


 長沼さんは20年以上にわたり代行運転のお仕事を続けてこられた。毎日19時から24時25時まで続くハードなお仕事だ。そうした中でのどに癌が見つかった。接客サービス業だったから声を失うわけにはいかなかったが、「他の治療なく、喉頭(声帯)を摘出せざるを得ない」と医師に言われ、7年前に喉頭(声帯)を摘出した。まだ40代半ば。「ショックで歩けなかった」。


 それでも「声が出ないことで引きこもりたくなかった」。そのため、術後すぐに、喉頭を摘出した人の発声を補助する電気式人工喉頭(EL)を使って仕事に復帰した。しかしながら、電気式人工喉頭(EL)は、それをあご下周辺に当てて振動を口の中へ響かせ、口や舌の動きで振動音を言葉にして発声する器具だ。即ち片手が塞がってしまうのだ。当然だが、運転手としてはどうしても使いづらい。さらに、振動音からなる言葉はロボットのようで、それも接客サービス業としては抵抗があった。

 発声訓練のために地元の群馬で入会した「群鈴会」でも、会長から「まだ若くて筋力があるうちに電気式人工喉頭(EL)専門になると自力で声が出せなくなるからダメだよ」と助言されたこともあり、自力で発声する『食道発声法』に真剣に取り組んだ。


 あとは、「声が出ないことが悔しいと思う自分の気持ち」だけだった。とにかく「社会復帰したいという気持ち」が発声を上達させた。

 発声訓練の指導員になった今でも、初めて会う人に自分の声を聞いて「風邪をひいているんですか?」と聞かれることに抵抗はある。どうしても大きな声が出ないのであまり目立たない小型のスピーカーがあればなぁと思うこともある。

 それでも、コロナで代行運転の仕事が減ってからは、9時半~17時で鉄工所での溶接の肉体仕事も始めた。嬉しそうに「5月にフォークリフトの免許を取得したので毎日練習しているんです」とおっしゃるので、「朝から深夜までお体大丈夫ですか?」と聞くと「せっかく2種免許をもっているんだから、続けられるうちは続けます!」と笑顔が返ってきた。


 声を失った後の社会復帰として、こんな素敵な例を他に知らない。


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