読書感想文『わたしが正義について語るなら』

キッカケ

VALUE BOOKS が提供している Youtube チャンネル ”積読チャンネル” で
”アンパンマン” をテーマにした会をみたことが直接のキッカケだ。

最初サムネでは、ヒーロー云々書いてあって興味が湧かなかったのだけれど、見たい Youtube が無さすぎて耳を持て余していたので、聞き流すつもりで見始めた。

するとどうだろう。
これはアンパンマンの話であり、作者やなせたかしの話なのであった。

子供ができてから、僕の大人としてのアンパンマンとの付き合いが始まり、
身近にもぬいぐるみが幾つかあったため馴染の存在になっていたのである。

詳細は積読チャンネルに譲るとして、アンパンマンにはやなせたかしの哲学が込められていることを知り、僕はグッと興味をそそられた。

ヒーローは孤独。愛と勇気だけがともだちである理由。
それを聞くことで、僕の人生観が少し変わったと言っても大げさではないくらい、感動した。

その結果、ちゃんと VALUE BOOKS からこの本を購入したのである。



気づき


一番辛いのは食べられない、飢えるということだったんです。

やなせたかしが出兵時に感じたこと。

軍隊の訓練は辛いが休めばどうにかなる、上官に殴られても耐えればなんとかなる。

しかし、空腹はどうにも耐えられない。

経験者だからこそ言える説得力がある。
だからアンパンマンは正義の元に、自らの顔=アンパンをお腹の空いた者に分け与える。
その辛さを知っているだろう、とも考えられる。

恐縮過ぎるのだが、僕もどうも空腹には耐えられない。
強いて言えば、お菓子を食べることをやめられない。
しんどいとき、ストレスがある状況ではどうしても食べたくなる。
何かを口に入れて、咀嚼して、味わって、胃が満たされることを欲してします。
ダイエットに取り組む人が多いことを考えると、ある程度共感を得られる感覚なのではないだろうか、と思う。

僭越ながら、僕が空腹に耐えられないのはやなせたかしとおんなじだ。
たかしがそれを立証してくれている。
そう思えば空腹を過ごすことにも少し客観的になれて、耐えられる時間を伸ばすことができるかもしれない。

でもなぜ人間は空腹には耐えられないのだろうか。
そんなことを考えたことが無かった。

おそらくそれはとてもシンプルなことで、空腹=飢え、は死に直結するからだ。もし空腹に耐えられる場合、体を動かすエネルギーは足りなくなるし、頭を動かすにも鈍くなってくる。
そうなると余計食料を探す、という行動がしにくくなってくる。

そのために、極限が来るだいぶ前に人間はお腹が空くのでは無かろうか。

進化論的には、むしろそういった人間が結果的に生き残った、と考えるのが自然かもしれない。


逆転しない正義は献身と愛です。

戦争の結果によって正義は変化するが、いかなる場合であっても献身と愛は逆転しない。

確かに、外国に行ったときに、宗教や文化・言語の違いでギャップを感じることは多々あるが、食事に連れて行ってくれたり、車で送ってくれたりと、そういった行動は、共通して心が温まる。

だとすれば、やはり献身と愛は絶対的なものとして存在しているのかもしれない。

改めて自分が持っている献身性と愛について、考えさせられた。

いままで自分が持っていると思っていた愛が、薄いものだったのでは無いか、と反省さえさせられた。

身を粉にすること、相手の代わりに自分が苦しむことを厭わない、そんな人を目指してみたい、と自分の人生観を変えさせられる体験がそこにあった。



悲劇を書こうとするなら、喜劇を書けばいい、喜劇を書こうとするなら、悲劇を書けばいい。

やなせたかしが劇作家や戦争体験のリアルを通して体得した、彼の中の真理なのだろうと思う。

つまり、かなり客観的に見ると(その姿勢は最近はなるべく避けていたりするのだが)伝えたいことの逆側を描くことで、落差を大きくし、その落差によって人は感情を揺さぶられる、ということなのではないか。

優しい人が優しいだけでは、響きにくい。
苦しみや悲しみがあると、それは伝わりやすい。

悪人に優しい部分があると、よりその悪のエグみが増す。

ある意味、様々なコンテンツ・ビジネス・制作に役立てる真理なのかもしれない。

ただし、その真理を身をもって理解しているかどうかは、受け手に伝わりそうな気がしている。

付け焼き刃ではバレる気がする。なんとなく。



やること


家族・仕事において、献身を第一に置く。
自分の苦しみは脇においておいて、他者への貢献・他者の喜びに全力を注いでいく。

そうではなかった自分がそうなれるのだとしたら、この考えを誰かに教えることもしやすくなるのかもしれない。

ありがとうアンパンマン、ありがとうやなせたかし。
受け取っています。

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