見出し画像

キム・カーダシアンのブランド「スキムス」が提案する“私らしさ”

2020年は誰もが体験したことのないウイルスの脅威があり、世界がリセットへと向かった1年だった(そして、これからもしばらく続くかもしれない。風の時代が始まったばかりだし?)。

良い面では、ジェンダーについて、多様性について、国籍問わず、様々なところで意見が交換された進化イヤーでもあったのではないだろうか?

フェムテックもどんどん進化しているし、ライフスタイルのあり方、ファッション観も変化している。そして個人的なコトではあるが、年末すでに食べ過ぎの要ダイエット状態ではあるものの、ボディに対しても多様性と包摂性が浸透していることはポジティブな動きだな、と(言い訳がましくも)解釈している。

日本でもNagiBé-Aといった、女性起業家による女性のインサイトにまで寄り添った吸水型ショーツが注目を集めているが、海外だと気になるのがキム・カーダシアン。言わずもがな、世間を賑わすお騒がせセレブであり、アメリカのリアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』に出演したファミリーの次女で、カニエ・ウエストの妻、な人。今年はコロナ禍の中、40歳の誕生日をプライベート・アイランドで多くのゲストと豪華に祝ったことでかなりのバッシングを受けたことも記憶に新しい。

キム・カーダシアンのシェイプウェアブランドが好調

意図的なのか天然なのか、空気を全く読まない行動でおなじみの彼女だが、ビジネスの面では、かなりうまくいっている模様。今年6月、キムは彼女の美容ブランド「KKW BEAUTY」の20%の株式を化粧品大手企業のコティに2億ドルで売却し、戦略的パートナーシップを結んだ。そして彼女のシェイプウェアブランド「スキムス ソリューションウェア」は、2019年9月の発売以来、約300万個を販売している。当初ローンチした時は、「キモノ」という無策なブランド名で商標登録を申請したため、文化の盗用だとSNSを中心に一大論争へと飛び火していたのに。。そんな不具合も、いまとなってはどこへやら。

この「スキムス」人気には、もちろんキムの巨大な知名度とマーケティング力が一役買っているわけだが、シェイプアップウェアの新しい時代の到来を告げるもの、という見方もできるんじゃないだろうか? これまで、シェイプアップウェア=補正下着といえば、コルセットのように体を締め付けるもの、つまりは心地よくない、という不快なイメージが大半だった。しかし、キムは快適性、機能性、手に取りやすいカジュアル感に重点を置き、驚くほどやわらかい生地なのに補正力が高く、かつ個々の体の最も魅力的なパーツを引き立てるプロダクトにこだわったんだから、そこはエライ!

まずXXSからXXXXLまでの幅広いサイズがいい感じだし、それぞれの人種の肌の色に合った色展開、そしていまではアンダーウェアやランジェリー、ルームウェア、アクセサリーまでラインナップを広げている。今年はルームウェアを販売するタイミングで新型コロナウイルス感染が拡大したものの、それが逆に売上増の追い風になったというのだから運も強い? とはいえ、パンデミックの影響を受けたと言いつつ、順調に成長した要因は何なのか?

ミレニアルやZ世代に響くダイバーシティ & インクルージョン

スクリーンショット 2020-12-29 23.45.17

ここで、独断と偏見で勝手に要因を考えてみた。

1.ボディ・ポジティブへの共感

成長の要因について、ユーロモニターのファッション&ビューティーアナリスト、ニーナ・マーストンは『VOGUE BUSINESS』のインタビューで「カーダシアン家は、特にミレニアル世代やZ世代の消費者と卓越したコネクションを築いてきた」と語っている。

1周年記念キャンペーンでは、アディソン・レイのようなZ世代の人気ティックトッカーを集め、「スキムス」のファンと一緒に、年齢、サイズ、民族を問わず、様々な人々に製品を見せる個別のビルボードキャンペーンでポーズをとってもらった。

ここで、キーとなるのが「ボディの多様性と包摂性」。つまり、最近よくいわれるダイバーシティ & インクルージョンのこと。先述の通り、近年ボディポジティブという概念は一種のムーブメントになっている。これは、#Me Too運動の広がりとも重なっていると言えるだろう。ファッションショーでスキニーなモデルがランウェイを歩くことは今もあるが、最近はそれよりもプラスサイズやリアルサイズのモデルが自然だ、と共感を集めている。他に海外の下着ブランドでは、リアーナの「サヴェージ & フェンティ」が有名だ。日本でも、ピーチ・ジョンがリアルサイズのモデルを募集したところ、1,200人もの応募があったと話題になったことから、ボディに対して前向きな姿勢を持つ女性が増えてるんだな、という実感を私は持っている。

「スキムス」も消費者のためにダイバーシティとインクルージョンを前面に押し出し、シェイプウェアの必要性についての議論を促しているのだが、そのボス猿(失礼!)があのお騒がせキム、というのが何だか憎めないというか。現代の若い消費者は、フェミニズムやルッキズムに対して高い意識を持っている。そういったお互いのフィーリングがマッチングしたところが、キムの知名度以上に売上に繋がる大事なポイントとなっているのではないだろか?

2.社会貢献と選択の自由

若い消費者はブランドがパンデミックにどのように対処しているか、つまりどのような社会貢献を行っているか、についても関心を持っている(特にアメリカ)。「スキムス」は、LA地域のフードバンクや様々な慈善団体に100万ドルを寄付したそう。そうした活動の一環もキムのSNSによって随時報告され、若い世代の共感を集めているようだ。

また家でのカジュアルスタイルへの需要が急増している中、「スキムス」はシェイプウェアを特別な日だけでなく、普段着の下に着るための日常的なソリューションに変え、快適さを求める若い世代に焦点を当てている。特にボディスーツが売れ筋だが、他の製品カテゴリーも拡大していてすでに結構なラインナップ。同じ肌色の商品カテゴリーを横断して拡大することで、消費者はミックス & マッチが可能なベーシックアイテムを自分の好みで作ることができるのも魅力だ。例えば、あるコレクションの下着が好きで、お揃いのルームウェアが欲しい場合、簡単にコーディネートができるわけだ。そんな選択の自由も、人気を後押ししていると言えるだろう。

シェイプウェアを含むアンダーウェア市場は、一般的なアパレルに比べると規模はまだまだ小さい。またパンデミックの影響で、ビジネスは依然として厳しい状況でもある。とはいえ、「スキムス」はランジェリーやシェイプウェアを服の下に着ても、また家の中だろうが外だろうが、それだけで着られるアイテムとして、シェイプウェア市場の認識を変えていく力がある、と期待されている。今後、おかしな方向に炎上することなく成長を持続させることはできるのか?、またその動向を勝手にウォッチングしてみよう。少なからず、私でも「私は私のままでいいんだ!」ってオンライン上からでも感じることができたのは、ちょっとした収穫だ。


All photos & youtube by skims

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?