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表参道に行く度に通うと決めたタイ料理屋「チャオバンブー」

2023年10月某所。この日は夕方から結婚式で着るドレスの試着があった。場所は表参道であった。

表参道といえば、大学4年生の頃に最も足繫く通った場所である。バイト先があったのだ。大学生というのに、イかれた勢いで、ランチタイムはバイト先周辺の気になるご飯屋さんを片っ端から制覇していく、そんな時期だった。途中で自分が大学生の身分であること、また卒業旅行に向けてお金を貯める必要があることを思い出し、人が変わったかのように手作りお弁当を作って持っていくようになったのだが。

よくあるバイト先だと、休憩時間は全員ばらばらの時間にとることが多いと思うが、私のバイト先は働いている方全員、きちんと12:00-13:00で休憩がとれる環境だったため、たびたび社員の方や派遣の先輩とランチをご一緒していた。
その中で特に印象に残っているお店が1つある。「八兵衛」だ。

「八兵衛」は、バイトを始めて間もない確か大学3年生の終わり頃、「顔合わせがてら歓迎ランチしましょう」と社員のお姉様が声をかけてくださり、訪れた場所である。場所が表参道なので、てっきりよくある感じの「雰囲気イケメン」的なカフェでランチとでもなるのかなと思いきや、どっしり和食、しかも大好物の寿司と来たので、とんでもなく嬉しいサプライズであった。
「八兵衛」はとにかく衝撃だった。何が衝撃かというと、割とちゃんとした渋めの外観・内観のお寿司屋なのに、サラダバーがあったことだ。表参道という場所柄が影響しているのだろう。小柄で可愛らしい社員のお姉様も嬉々として「ここはサラダバーがいいんですよねえ、いっぱいとっちゃお」と、お茶目にボウルてんこ盛りに野菜を詰め込んでいたことが今でも忘れられない。私にとって初めて出会った「表参道OL」はこのお姉様で、「表参道OL=野菜が不可欠」とぼんやり想像はできていたイメージを、確固たるものにしたのもこのお姉様なのであった。
さらに衝撃なのは、200円くらいの追加料金を払うと、普通の味噌汁から豚汁に変更でき、その豚汁が異常なうまさをしていることだ。お寿司屋なのに。ちなみにお寿司も非常においしかった。

割と幼いころから初対面の人と難なく会話ができる人種であるため、社員の方々から「若いのにすごく落ち着いているね。大人とかかわる機会が多かったの?」などと質問されて、冷静に返答していたりしていたが、心の中では「この寿司めっちゃおいし…豚汁も意味不明なおいしさしてるしサラダバーあるとか良心的すぎ最高」などど興奮して伝えたい気持ちだった。大人に見せかけて中身はしっかり子供なのである。

大学卒業と同時にバイトも卒業した。卒業以降、表参道へは友人と食事やお茶を楽しむ場所として、定期的に足を運んでいた。多くの人が認識しているように、表参道にはたくさんお店もあるし、新しいお店がどんどんできる。トレンドに敏感な友人から「インスタで見たこのカフェに行きたい」と言われて足を運ぶも、土日ということもあり大混雑しており、頑張って並ぶか、諦めて大箱のお店に入って、表参道じゃなくても食べれるスイーツを食べたりすることもあったりした。そんなことが何度かあったので、いつしかから表参道でご飯するとなると、ちょっとお金を積んで、並ばず入れる美味しいレストランに足を運ぶようになっていた。社会人生活もこなれてくると、表参道での大人の楽しみ方を覚えるようになっていた。

話は戻り、ドレスの試着を終えた後、夫と夜ご飯をとることにした。試着の最中、暇だった夫がよさげなスペイン料理屋を見つけてくれていたので、そこに行こうと意気込み外へ出ると、思ったよりも2人とも疲労がたまっていて腹ペコ。さらにスペイン料理屋まで徒歩15分かかるようだったので急遽作戦変更することになった。
とりあえず食べログを開いてみると、お気に入り保存していた周辺のお店が表示された。一番近くに「チャオバンブー」というタイ料理屋がある。夫婦こぞって愛してやまないタイ料理屋じゃないか。行くしかない。

獲物を捕らえに行くかのような気持ちでお店へ直行した。久しぶりのタイ料理、しかも表参道で夜ご飯という珍しい体験にわくわくしていた。
20時過ぎに到着するとたくさんの人で賑わっていた。ちょうどお客さんがお会計をしたタイミングで、すんなり入ることができた。その後も閉店時間は21時というのに、20時半頃にお客さんが入ってきて、満席となった。
魅力的なメニューばかりだが、まずはお手並み拝見ということで、「トムヤムサラダ(青パパイヤのサラダ)」「ガパオライス」、「パッタイ」を注文。瞬く間に料理が届いた。うまい。うますぎる。空腹なのもあいまってとかじゃなくて、本物の味がするのだ。本物って何だと言われたらそこまでだが、とにかくマックみたいなスピード間で、本物のタイ料理がばんばん出てくる。ガパオライスもパッタイも、箸が止まらない。なにこれ。
閉店まで30分を切っているというのに、チャオバンブーを味わい尽くしたい気が狂った我々は、締めとして「生春巻き」を注文するという謎行動に走った。これも普通においしいのだが、決して締めで頼むものではないと全員に伝えたい。この上なくおいしいのは何より、価格も良心的。さらに提供が早い。我々夫婦は、「表参道で最も最高な店」と認定することにした。

11月某所、お色直し後の衣装の試着のため、再び表参道に足を運ぶことになった。この日取りが決まった時から、「試着後はチャオバンブーに行く」と夫と狂気に満ちた取り決めをしていた。「チャオバンブー」に行ってから一週間くらいは、「ハアもうチャオバンブーに行きたい」と口にしていたので、行くしかない。
しかし悲しいかな、計画は水の泡になってしまった。当日意気揚々と14時くらいに足を運ぶと、満席とかでなく大行列ができていたのだ。14時だぞ、ランチタイム大幅にずれてるぞ、と心の声をしっかり声にも出してみたが行列は揺るぎなく、表参道の恐ろしさを改めて思い知らされた。そういえば前回は日曜日の閉店間際に足を運んでいた。表参道の人気店でご飯するためには日曜の夜を狙うしかないのか。くっ。

「八兵衛」以降、表参道ではお金を払わないとおいしいご飯にありつけないという概念を覆してくれた「チャオバンブー」。来年、夫の衣装合わせで再び表参道に来訪予定である。次は何としてもチャオバンブーに行きたい。前回よりも更なる狂気に満ち、鼻息を荒げている私達夫婦のためにも、どうかよろしく頼むよチャオバンブー。



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