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考えるのをサボる習性を営業に生かす

今日はとあるベテラン(というと怒られそうですが)営業パーソンに同行。場数を踏んで、おそらく多々失敗もしたであろう、だからこそ醸し出される現場での雰囲気は圧巻、成果も目を見張るものがあります。決しておごることなく、いつも謙虚なところも見習いたい。彼女の口癖は「女性というだけで得している」

これも彼女の謙虚な一面。観察していると気づかされますが、彼女の武器は「女性」という見た目の部分だけではありません。事前準備やセールストーク、立ち振る舞いが相手の第一印象を高めて、傾聴や共感を引き出していきます。

人は相手から何かをしてもらうと、「お返し」したくなるという返報性の法則は有名な心理学の一つ。営業パーソンはまず、相手に与えることを優先して、見返りを期待します。もう少しレベルの高い人は、相手の課題解決を優先して、「結果として見返りが得られる」という姿勢。見返りを期待する下心は、相手に伝わってしまうと終了。極端な話、もう二度と相手にしてもらえなくなります。

類似性は、「仲間意識」を強く抱かせます。苗字、名前、出身地、出身学校、趣味、興味関心など、ちょっとでも共通点が認められるとすぐに、相手に好意を抱いてしまう。とある実験では、インタビューをお願いする仕掛け人が、マンチェスターユナイテッド(世界的に有名なサッカークラブ)のユニフォームを着て、オールドトラフォード(当該クラブのホームスタジアム)に立つと、1時間で数多くのインタビューができましたが、ユニフォームを着ていなければインタビューの数が激減したことが報告されています。私たちは「似たもの同士」をいつも探し求め、見つけると脳が興奮状態に入るようです。

権威性と書くと大げさですが、人間は、「権威」に対して弱い傾向があります。両親、先生、先輩、社長。そのときどきのステージによって対象は変わりますが、「あの人が言うなら」と信憑性を高めます。有名芸能人がCMなどの広告塔になるのは、権威で集客を図ろうとしたもの。書籍の「帯」次第で、売り上げが大きく変わるのもその効果によるところが大きいです。

人の脳は、他の動物に比べて性能が高いのは言うまでもなりませんが、私たちはできるだけ「考えない」ようにして、いざというときに備える性質があります。脳は使えばそれだけ疲弊して処理能力が落ちていきます。常に脳をフル稼働していれば、目の前に肉食獣が現れたときに咄嗟の判断ができずに即死。人類はとうの昔に滅亡していたはずです。適度にサボって脳の空き容量を開けるのは生存戦略の一部。「お返し」「仲間意識」「権威」なども、自分で考えるのではなく、意思決定を他者に依存することで脳の消耗を抑えているわけです。

脳のメカニズムを理解していれば、営業が楽になるということを心理学で明瞭に解説している図書は多数あります。そして今日同行した営業パーソンもまた、無意識レベルながらも上述した心理テクニックを駆使していることを、横にいながら観察、確認できました。センスを学ぶためには、できる人の横にいて観察、言語化して引き出しを増やすしかありません。ということで今日の学びをまとめてみました。

久保大輔




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