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自分自身を積極的に認め、慰め、労る

皆さんは自分自身に厳しいでしょうか?

ものごとがうまくいかなかったとき、それまでの自分の行いを責めたり、自分への非難を周囲に伝えたり。一方で切り替えが早く、逆に「よくやった」と自分を労るような感情を持てる人もいます。

レイク・ウォビゴン効果

とは、自分が他者よりも優れているところを探し出そうとする一般的な傾向を指します。心理学的には「下方への社会的比較」という言葉で説明されていて、人は他者よりもおもしろく、論理的で、人気があって、魅力的で親切で、賢くて知性的だと考えてしまうことが報告されています。自分を相対的に優位な立場において、肯定的に自分自身をとらえ、他者を見下してしまうのは人間の性なのかもしれません。

そしてこの傾向が、実は「防衛的な態度」であるという見方もあります。他人の悪いところばかりに意識が向いてしまう心理効果は自分にも向けられて、他者に批判される前に先手を打って自分を批判するという防衛本能にすり替えられてしまう。悲しいことに人は、自分自身を最も悪く扱うそうです。批判しがちな親に育てられた子どもは、将来、自分を批判しがちになることは多くの研究で実証済み。自己批判が未来の過ちを防いだり、他人からの批判を避けることができると受け止めてしまうそうです。

自己確証理論では、自分に厳しいという事実が、人間関係を築く上で障害になることが報告されています。私たちは、自分の考えを周囲に認められたい、仲間に入れてもらいたいという感情が働く。それは「認められている」という感情が心の安定をもたらすからです。ところが自己批判をする人は常に自分をおとしめてしまうので、周囲と距離を置き、意思疎通をためらいがちに。徐々に疎外感、自信の喪失、不安、抑うつで心の問題を抱えることになります。

自分を律して、努力を惜しまず。そんな「自分に厳しい人」は成功する人に欠かせない資質だと思っていましたが、いろんな心理学系の本を読んでいると、それが全てではないことに気づかされます。自分に優しい人の多くは自己評価や軽蔑的な批判を控えています。弱点や失敗を責めるより、自分を認める努力を優先。困っている他者を助けるのと同様、自分自身を積極的に認め、慰め、労るようにしています。

哺乳類は、子供が危険な目に遭わないように、世話をする能力や「愛着システム」を備えるようになりました。愛情と繋がりを感じる能力。脳は自分や他者を思いやるように設計されています。子猿は、食欲よりも「心地よい毛布」に強い安心感を覚えるといわれています。子どもは親を「安全地帯」として利用。親が子を支援せず、冷たく接している場合、「不安定な結びつき」を子どもに植えつけることになります。

オキシトシンは愛と結びつきのホルモン。母親が子どもに授乳しているとき、あるいは優しい抱擁をしているときにオキシトシンが放出されます。自分に対する優しさは、自分が優しさを受けるに値する価値ある人間であるとの認識を膨らませます。自分自身に対しても、優しくすることで苦しみを低減。慈悲の感情は関係性です。慈悲は共に苦しむこと。私たちは、ひとりでは不完全な存在であるということを理解しなければなりません。

皆さんも私も、今日一日がんばりました。結果が出た人も出なかった人も、やることなすことうまくいかなかった人も、今をがんばり抜いたことに違いありません。自分を認めて、労って、また明日がんばりましょう。

久保大輔



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