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心の死地から脱出せよ! ; 品質新撰組 /ep 1

注記; 身近で似た経験をした方がいたとしても、全てがフィクションであり、架空の物語です。

 ― 子供時代;昭和後期 ―
『さようなら、また明日な~』
と友達に手を振った後、約1Km下校の残り道を1人で歩く小学生。頭の中では、
≪死んだら、どうなるのかな?≫  が、グルグルする日々が、もう何日も続いていた。ある日!と閃いた。
『朝起きた時、夢を見ないで、何も憶えて無いのと同じかな』この日から死への自問自答は終わった。
昭和なので、その左胸には名札がある。
四方歳三 石田小学校6年1組と書かれていた。
 
小学生だ。当時読んだ漫画のセリフ
≪コギトエルゴスム≫ との関係性には気付かずにいた。今や昔の事だ。漫画を読んだのと、死後への自問自答。どちらが先だったかも憶えていない。
この死への疑問と、小学校のクラス替えで先生が言う ≪新しいクラスのお友達≫ との言葉への疑問。初めて会い、話した事も無く、突然出来る友達。相手と自分で、友達になるのでは?友達は、先生が決めるのか?
≪我思う故に我在り≫ ≪新しいクラスのお友達(仲間)≫
この2つの言葉は、業務の基礎になっている。いや、水が高きより低きに流れる如く、自然と思い出した言葉だろう。思い出さずも憶えているのは、小学1年の時、2枚の絵の間違い探しで、そんな大きな目なのに気付かないのか?とクラスのお友達の前で、先生に容姿を揶揄されたこと。今、思えば20年後に芽吹く、気骨の種。
 
 ― 学生時代;昭和末期 ― 
経済学部に在籍しながらも、戦国武将好きから歴史小説を読みながら、武将に似た精神性を感じたMetalを日々聞くなか、孫子の本を見つける。
学友とは、講義中でも川中島や、厳島など、布陣やら進軍などを語りあいながら過ごしながらも何とか卒業。
将来、この語らいが、品質業務に役立ち、精神面をMetalが支えるとは、当時は思いもよらず過ごした。人間、困ると過去から何かしら捻りだし使うのか、それとも、水の流れと同じ必然なのかは解らない。
 
 ― 新社会人;平成初期 ― 
社会人1年目は、総合商社に入社し、牛農家や養豚場への営業回りをしていた。そんなある日、中国から輸入した鰻を、県名の表示された箱に詰める作業を見た。
『あの箱では、県名が間違ってないですか?』と先輩に質問。
『うちの会社には、あの営業所があるだろ、そこに送る分だよ。他の営業所に送る箱もある 』
『へ~県名じゃなく、営業所名でしたか、確かに全国、あちこちにありますもんね 』
『そう営業所も多いから、箱詰めにはアルバイトも雇っているのよ。新人君は、まだ業務が解らんから当面は、箱詰め場に近づかんで、よいぞ』
『解りました。邪魔にならないよう気をつけます』新社会人1年、30年近く昔、日本品質への揺らぎも感じず、鰻の箱詰め作業への疑問は消えた。とは言え、
≪個人の考えや、個性などは不要だ!必要な個性とは、会社の個性で、下の考えは不要。ハイだけでいい。新人が最初に憶えることだ≫ との配属初日の営業所長による教育から始まった営業職には、トラック配達助手の力仕事なども含まれていた。毎朝4:00起き、5:00から20:00までの業務に、週4頻度の飲み会の日々。紆余曲折から、入社2か月で体重は、63Kgから49Kgに減り、いくつかの疑問を持ちながら1年ほどで退職。
 
 ― 帰郷? ― 
隣の県の実家に帰り、昼間に眠り、夕方に起きる生活が、3か月。
暗くなり縁側で、ぼ~と外を眺めていると、蛙が鳴き、蛍が瞬いていた。田んぼが近いためだ。目の前の風景、音、風、暑さを遠くに感じるが、夏だ。。。。小学生の夏が甦った、、、、蝉が鳴くのが聞こえ、扇風機の羽が回る音がする。
紙の将棋盤が舞うのを、四隅に本を置き、ジッちゃんと将棋を指していた。
『お前なかなか筋がええな。将来、軍人になるのが良いかもしれん』
『戦争は嫌いだ。学校の図書館で写真を見た。絶対にしちゃダメだ』
『歳は、まだ子供だから解らんのだろうが、、、、幼稚園の時、柔道を習っていた大きな子が、お前を練習台だととかぬかしおって、無理やり投げただろ。何もせんでも、向こうから攻めてくるヤツは、世の中におる』
『それが何?そんなヤツが戦争を始めるんだろ!』
『。。。。ふむ、、、、お前、将棋の時だけは色々話す。駒を盤の外から動かそうとする。歳には、戦術とか筋の良さを感じるが、性格が甘い。それが欠点だな。優しさは、甘さに通じる。相手を戦えないようにするのも1つの戦い方だ。それを憶えるには、戦う心が必要だ。戦争が嫌なら、尚更、戦術や戦略を憶えるしかない。それが戦わない為の戦いだからな、大人になれば解る』
『戦術って、何?学校の先生は言わんぞ、そんなの』
『今は、え。。。。』
 
ミシッと、左の方から縁側の床の音が鳴り、現実に意識が戻ると
『農業でもするか?歳』とジッちゃんの声がした』
『そりゃ兄貴が家を継ぎ、する事だよ』
『うむ。そうだな。お前には農業は似合わんな。お前は、逃げる方法や、タイミングを憶えるのが良いな。孫子を読んだと言っとったな。時には逃げ、機会を伺う』
『・・・・・』
『今回は、少し逃げ遅れたが、孫子で言う死地からは生還できた。その若さで、そのギリギリの経験は、将来の大きな糧になる。最後に立ってさえいりゃ、それでいい。満州じゃワシも似た経験を何回もしたぞ。ワハハ。。。。』
『それマジ、死ぬでしょ』
『おんなじぞ。心が壊れて治らん時はな。見た事がある。敵以上の上官、上司もいる。だか、お前は、よう帰って来た。嬉しいぞ。周りの目なんぞ気にすんな。物事、自分の考え次第。今回は、深手を負ったが治る。治れば強くなる。今は自分の内面をよ〜く見ながら、充分、休憩せい』
立っているジッちゃんを見上げると、暖かいが、強さも感じる目をしていた。
『ありがと、でもジッちゃんも農業は似合ってないよ。そろそろ兄貴に任せたら』
『何を言う、まだまだ現役よ』
と混じりの無い白髪のオールバックに手をやり、ニコリと笑った。
 
― 戻って来てから、仕事の事は何も聞かれないけど、やはり、心配をかけているな。 ―

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