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【第二十三回】何者にもなれなかった50男の物語

ある日ぼくが工場にいると
部下から電話があった

「今うちにヤクザが来てます」

前日客を接待していた

お店を出た時パパ活をせびる
女がしつこく客にまとわりつく

ぼくはブルースリーのように
女へ軽くドロップキックした

アウチ!と女はよろけ離れた

どうも女はその件で知ってる
チンピラに駆け込んだらしい

そうしたら僕の運転手が
鼻息を荒くしてこう言った

「俺がナシつけてきますわ!」

ぼくがまた仕事をしていると
運転手から電話がかかってきた

運転手は弱弱しい声でぼくに
訴えて来た

「すいませ~ん」
「家に来てくれますか?」

なにやってんだよ

ミイラ取りがミイラになった

電話の内容を工場の社長が
聞いてきた

社長は5万円以内なら払え

それ以上なら電話くれと言う

仕方がないのでぼくは工場の
車で家に向かった

向かう途中色々考えた

とりあえず武器を持った

最初は殺してどこかに埋めて
しまおうと考えていた

そう、結構ガチで考えていた

発展途上の田舎町

埋められそうなところは
そこら中にあった


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日本と違いそういうでたらめ
が出来る雰囲気はあった

いざとなったら賄賂を渡している
警察がどうにかしてくれる

武器を持った僕は車を家から少し
離れた所に停めさせ近所を見渡す

付近に仲間がいないか確認した

ラッキー!

周りは誰も居ないようだ

ぼくは家に向かった

インターホンを鳴らすと
運転手がすぐ出て来た

ぼくが行くとチンピラ一人

内心ぼくはやったと思った

一対一ならどうにでもできる

チンピラはこう言った

「いやさぁ、オレは来たく
なかったんだけどコイツが
金出すって言うからさぁ」

結局チンピラは金になれば
どっちでもいいらしい

であれば金の無い女より
金のある自分が圧倒的に有利

ぼくはチンピラに言った

「いくらほしいの?」

5万以内なら払ってという
社長の言葉を思った

チンピラは一万という

こんなちんぴらは2千円だろ

内心払っても良かったが
ぼくはこう言った

「実は明日日本へ帰るんだ」
「今日本円しか無いんだよね」

「これしかないんでとりあえず」
「残りは戻ってから払うよ」

そういって2千円位を出した

金を出した途端チンピラは
態度がガラッと変わった

依頼した小娘にどっか消えろと
凄み追い返した

そしてぼくに名刺を出して

「この街でなにかあったら
連絡して」と言ってきた

所詮ゴロツキも金だよな

結局廻りはヤクザと関わるなと
言うのでその後はシカトした

ぼくが居た小さな街はホントに
ヤクザが多かった

歌舞伎町のような街

中国全土から成金連中が
女遊びしに来るような所だった.…


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