定員1名のカプセル

 作曲家で編曲家の岡 留美さんが2023年2月17日に逝去されました。テルミン重奏やマトリョミン合奏に多くの作曲や編曲作品をご提供いただき、テルミンやマトリョミン文化の発展に寄与されました。岡さんの葬儀は神道様式にのっとって執り行われましたが、「五十日祭」にあたる4月7日、有志38名によるバーチャルなマトリョミン合奏音源を献呈し、岡さんの才能と貢献を讃える動画を公開しました。
https://youtu.be/w1eyWOdQVDE

 マトリョミン合奏に取り組む中で、仲間と協力連帯し、みんなで力を合わせて何かを成し遂げようとやってきましたが、私のような人間に背を向けたい人がこんなにも多く居ることを知り、無力感に苛まれました。彼等は真に孤独を愛しているので、演奏技術以前に、私が望むようなことは彼等とはできっこないと思いました。
 岡 留美さん追悼ムービーの中で一瞬動画になる場面がありますが、あの中にもずっと岡さんから目をそらしている人が映っています(他にもそういう人がいることは知っています)。「岡さんの指揮振りを見ろ」と練習時に何度も説きましたが、彼等は「ゴーイング・マイウェイ」を貫き通した。これが現代の自由であり、彼等の「ロック」。誰かの意に沿うことがすなわち「負け」に繋がってしまうからと、受け入れ難いのでしょう。

 そういう人たちに抗うことが、私の「ロック」になるとは、いかにも今日的です。先述した彼等は連帯しないので、塊同士のぶつかり合いにはなりません。対象を無視するという一点において彼等の心は繋がっている。「定員1名」のカプセルに入る孤独な仲間が点在する状況に、現代の自由と連帯を感じているのかもしれません。

 これから私はリハビリや認知症予防でマトリョミンを活用することに舵を切り、取り組みます。これまでの取り組みを締めくくる最後に、人に寛容であって、仲間と協力し何かを創りあげようとした岡さんにスポットライトがあたるのは象徴的であり、神はいるのだと思いました。

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