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私は眉毛の太いクマに救いを求めている

生きているので、どうしてもここにすら書けないような悩みも起こる。

昔は、いちいち「死にたい」と思っていた。でも、たとえ薬をたくさん飲んだって、たとえ豊平川に入水っぽいことをしてみたって死ねなかったので、とりあえず私はまだ生きねばならないらしい、それもしぶとく—と、折り合いというか納得というか、そんな感じの諦念を抱いた。

だもんで、胃が痛くなる程つらくって眉間に刻まれた皺が更に深くなっちゃいそうでも、それでも私は「おっしゃあああああああああああやったるわ!やったるって!負けてたまるかコンチクショウ!」と泣きながら己を奮い立たせるのだ。

そうして昨日もやっとのことで前を向き、向けたからこそ必要以上に「悩み」に目を遣らぬようにする為(だって、必要な時には嫌でも向き合わなきゃなんだもの)、私は3DSのスイッチを入れて「とびだせ どうぶつの森」の世界に逃避した。

さて、この「とびだせ どうぶつの森(以下とび森)」の世界には、私のお気に入りのキャラ・くまのたいへいたが住んでいる。

眉毛の太いスポーツマン(と言うと聞こえはいいけど、筋肉馬鹿?)で将来の夢はお巡りさんである彼は、初期設定の時点で部屋に置かれていたグランドピアノについて「練習していない」とのことだけれど、ピアノだけでなく本棚があったり暖炉があったり、その部屋の様子から彼が醸し出しているのは「いいとこのおぼっちゃん」感そのものだ。

ああ、いるよなあこういう人—両親もまたいいとこの出の人たちで、すこぶる健全な家庭に育っているから、一人暮らしをしたとてその気配がまったく消えず、ただれてゆくことの無いタイプな人。

いきなり村に降り立って、何かの間違いで村長になってしまった私(…公式設定ですよ…)には、お手紙と共に贈り物を寄越す「はは」はおれど、それ以上の背景は私自身にも見えてこない。

同じ村民であるペンギンのサブリナちゃんは、「昔フラメンコダンサーだった」とか「昔シャンソン歌手だった」とか時折告白してくる辺り、何やら艶めいた複雑な過去を抱えているらしい。オオカミのリカルドは「昔バンドを組んでいたけれど、音楽性の違いで解散した」と言う。

…あれ?うちの村、案外「脛に傷を持つ」系のヒト、多め…?

さて、そんな村を治める私はいったい、どんな理由で引っ越してきたんでしょうねえ。「はは」曰く「初めての一人暮らし」らしいけれど。

とりあえず、たいへいたと接していると何やら思い出されることがある。

それは、リアルな世界で私が感じていた「住む世界の違い」についてだ。

いかにも育ちの良さそうで、お金にも困ったことの無さそうな人を見ると、私は「ああ、私とは違うところで生きている人だ」と思う様な人生を送ってきた。

私大や専門学校に行きたければポンとお金を出してくれて、なんだったら上京しての一人暮らしもさせてくれる—そういうご家庭にあった同級生を見、すごく惨めな気持ちになった学生時代。その感覚が大人になってもずっと抜け切れず、なんなら今も、たとえば敷地内別居的に親の土地に家を建てて暮らしているご家族を見たりすると、自分の中にふつふつと湧いてくるモノがある。

昨夜、どうにか前を向いたもののやっぱり落ち込んでいた私は、たいへいたの家に灯かりがともっているのを見つけて、すぐにそのドアをノックした。そうして部屋に入れてくれたたいへいたに何度も話しかけて「お前はおしゃべり好きだな!」的な反応を得てニヤニヤしてしまった。

ちなみに、これはサブキャラに話しかけているところのスクショになっちゃうけれど、たいへいたはこんなことも言っていた。

…かくしておきたい「かこ」「げんざい」「みらい」…????

みらい、はともかく、快活で悩みなんか無さそうなたいへいたにも、隠しておきたい過去や現在があるの…?、私はつい深読みしたくなってたまらなかった。あれか、一人暮らしの理由は、ご両親とうまくいかなくなったとか…?望まないお見合いが決まってたとか?なんかそーゆー理由っぽいよなあ、こう育ちの良さそうなヒトだと。

自分でもキモチワルイのめり込み方だなあと思うけれど、昨夜はそうして気が済むまでたいへいたに話しかけた。育ってきた環境はえらく違うけれど、こうしてこの村で出逢えたのだから、ずっと一緒に居てねーそう思うと本気で泣けてしまった。眉毛ごん太でポッチャリなクマに何言っちゃってんの?って感じでしょう?でも本当、不思議なほど感情移入してしまう。

ちなみに、このゲームは引っ越しのフラグが立ったりもする。〇〇が引っ越しを考えてるみたいだよーと他の村民が教えてくれて、それを本人に確かめるのだ。今のところ私は引っ越しの阻止に成功しているけれど(とはいえ一人は敢えてお引越しを許可した。代わりに越してくる別のキャラも見てみたいし)、引き留めてもうまくいかないこともあるのかな…?ちょっとそこら辺はよくわからない。

実は、たいへいたにも先日「こんな寒い村もうムリだから、もっとあったかい村に引っ越す!」とムチャクチャな理由で引っ越しを告げられた。けど即、引き留めた。するとあっけなく思いとどまってくれたんだけれど、その時にたいへいたに掛けられた言葉が「お前は本当に寂しがり屋だなあ!」だったのだ。

…ばかばかばかばか!!!!

操作ミスのせいなんだけれど、その日は何度も虫取り網でたいへいたをぶん殴った。引っ越しなんて一瞬でも考えた罰だよ。寂しがり屋だってわかってるなら、たかだか気温くらいで引っ越しなんて考えないでよ…!!!!

初めて見た日は「…なんだこの可愛げないクマ」と思ったはずだったのに、どうしてこうもたいへいたを大好きになってしまったのだろう。

そして今夜も私は、南の島に遠征して虫やお魚をえんえんと採取して、それを村に持ち帰って売っては、公共事業の資金に使うのだ。私やたいへいたやサブリナちゃんやリカルドが、もっともっと居心地よく暮らせる村になる様に。

それはほんのちょっとだけ、ホストに対してどこまでも貢ぐ女の子を思い出させる。一昔前のV系バンドマンに貢ぐ、でも構わない。

夢を見させて欲しいのだ。私の居場所になってくれるのなら、私は頑張ってお金を作って注ぎ込む。

だからどうか、ずっとずっと私の居場所で在って。

つらい現実のことを忘れられる、そういう場所があるからこそ、私はまた前を向けるから。歯を食いしばって、頑張れるから。




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