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「竜とそばかすの姫」観てきた。

 私は基本肯定的にしか書かないので、その前提でよろしく。「絶賛してるから観たのによくなかったじゃん!」とか言われても責任は持てないよ!
 ネタバレは極力しないようにがんばる。少なくとも致命的なところは語らないようにする。

 主人公の鈴は片田舎のパッとしない女子高生で、悲しい過去をもつとは言えごく普通の引っ込み思案な女の子(ただし天才でないとは言ってない。)その鈴が現実とは違うもうひとつの世界「U」で「ベル」という存在として花開くところから始まる。

 ベルは歌で人を魅了し、世界を席巻する存在になる。そんなところに暴力的な存在「竜」という存在が現れて、ベルと竜が交錯するうちストーリーが混迷し、展開し、いろいろな思惑や想いや願いをまとって終局に向かっていく。

 って感じ。ネタバレしないようにするとふわふわすぎて何言ってるかわっかんないな。まぁいいか。

 そういえば。予告やもろもろの情報から予想している人もいるだろうけれど、物語の筋がけっこう「美女と野獣」をオマージュしている。なのでディズニー原理主義の人にはおすすめできないかも。ちなみにベルも野獣もガストンもいる。

 主人公の鈴にとって、現実での歌は救いであり拠りどころのように見えた。その歌で、Uの世界に影響を与えられたのは彼女にとってどんな意味があるのか考えるとそれだけで少し感動する。

 劇中で語られぬ未来、鈴や竜がどうなるのかはとても気になるところだし、語られない部分もいくらかあるのでやきもきするところはある。
 それでもまぁ、いろいろあるだろうけれど良い方向に向かっていくんだろうな、という予感を残して物語は終わる。きっとそうなるのだと思う。そうなればいいなと思う。

 UはSNSがさらに発展した世界のようなもの、今からつながる未来、決してないとは言い切れないかたち(たぶんそうはならないとは思うけど。)才能(努力含む)があったとはいえそのままでは埋もれていたかもしれない鈴が、そこで脚光を浴びるという展開は、私に勇気をくれる。

 もしも私にも非凡なところがあれば、何かの拍子に脚光浴びることもできるのではないか、なんて。ありもしない幻想かもしれない、だけどそれは私にとって、前を向いて生きていくうえでの灯台のようなものだ。

 私は自分の平凡をそのまま受け入れられるほど大人じゃない、幻想だろうと妄想だろうと弱い私が生きるための糧になる。大丈夫、私だってまだやれる。

 なんかシリアスな話になっちゃったけれど、私にとっての良薬っぽい。

 あと、別件だけど音楽がすごく好き。中村佳穂さんの歌は頭に響くし心に響く。歌からしか摂れない栄養があることを感じる。盛り上がりにはいつも音楽が、歌があって、それがこう、なんていうかぐっとくる。

 あえて注意事項を挙げるとしたら、合理的視点で観すぎてはいけない、ということかな。
 終わりを迎えても残される謎や伏線がいくつかある。それは本筋から考えると瑣末なことだけれど、納得できないひとはわりといるんじゃないかと思う。
 あ、あとはコンテキストが深い部分があるので、キャラクターの性格や背景をある程度想像しないとわからないシーンがあったりする。そういう意味では頭を使う映画と言えるかもしれない。

 要素を洗い出せば結構単純な物語。だけど洗い出さなければ、ひとりひとりの想いや行動がつながって、交錯して、折り重なって生まれた複雑な物語。書けそうで書けない、重さと面白さのあるもの。
 こういう話を書けたら楽しいだろうな、なんて。作り手側の視点では尊敬と羨望と嫉妬がないまぜになっている。

 肯定する気持ち、没入する気持ち全開で観れば泣ける映画だし、冒頭のつかみはかなりよいので、疑問符そっちのけで肯定的に観てほしいかな。

(執筆時間2時間くらい。1,548字)

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