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君が恋をしたなら 1.「出会い」

それは、一通の間違いメールから始まった。


『飲みにいこうぜ』


知らないアドレスからのメール。シカトしようかとも思ったけど、それじゃああんまり不憫だと思いメールを返した。

『メールアドレス間違えていませんか?』

『あ、間違っていたみたいです、すみません』



私は対して気にもせず手にとった服を試着した。


今日は特別な日。



一年半付き合った彼氏と別れて、やけ買いしに近くのショッピングモールへ足をのばしていた。


一年半前に合コンで知り合った彼氏とは、最初はノリノリでうまくいっていたけど、倦怠期というか、深い溝がいつのまにかできていることに気づいたのは最近になってからだった。

ここぞとばかり、親友のふみから合コンの話があがる。

けど、合コンで知り合った彼氏だけに、合コンに参加する気力がなかった。

何もかもが灰色に見えた。


クリスマス前とあって、カップルたちが仲良く雑貨を物色する。


それを横目で見ながら、鼻をスン、と鳴らした。



無印○品を覗いていたとき、またメールが鳴った。

ふみからだろうと予想してみてみると、さっきの間違えアドレスからだった。

『せっかくお知り合いになれたから、もう少しメールしませんか?』

なんじゃこのメール。

新手のナンパか?

と思ったけど、やけになっていたせいも手伝って、返信した。


私『もう少しメールしてもいいけど、どこのどちら様ですか?』

メールの人『玉名に住んでます、ユキトといいます。』

私『玉名なら割りとちかくですね。私は熊本市です。名前はまゆりです。』


とのことで、メールは始まった。


それからは毎日二通、挨拶みたいなメールを交わしていた。


私『おはよう』

ユキト『おはよう』


私『ただいま』

ユキト『お疲れ様』


ユキトのメールが来はじめてから、なんだか朝の憂鬱が減った気がする。

それから3ヶ月、この調子でメールが続いていたのだが…。ユ『ねえ、会ってみたくない?』

とメールが来はじめた。

私は会う気などさらさらない…と言いたいところだが、もう3ヶ月も経ってるし、ちょっとだけ見てみたい気も…。


私『写メちょうだい』


送られてきたのは車に寄りかかり不敵な笑みをたたえた青年だった。


この写メから想像するに、メル友はたくさんいるんだろうな、と思った。


ユ『なら、まゆりの写メもちょうだい』

私は今までで一番写りのいい写メを送った。

写メの返事がない代わりに、

ユ『会いたいねー』

と返事がきた。


そんなに言うなら会ってみてもいいかな…?


わずかに思った。



会う日は土曜日。

お互いの仕事が休みの日だ。会うことに罪悪感などはなかったけど、いざ話が進むと及び腰になる私。


前日になり、ユキトは

『友達だれか連れてきて』

とメールしてきた。

私もその方が気楽なので、急いでふみに連絡をとった。

一応OKをもらい、ユキトに

『一人連れていくよ』

とメールした。

返事がなかったが、これでよかったんだと解釈し、眠りについた。

会う時はふみも私もおしゃれして出かけた。

ふ『なんだよ、まゆ、今日は決めちゃってるじゃーん』

私『そういうふみこそ今日は珍しくスカートじゃん』

私たちは車でマキシマムザホルモンを大音量で流しながら目的地であるユキトの近隣の駅へと近づいた。

ふ『あれ、そうじゃない?』

見ると、ちょっと長身な二人の男連れが。


私『ちょ、待って』

髪を整え直す私をみて、化粧し直すふみ。


勇気をだして、初めてのご対〜面〜!


一人はすぐにわかった。ニット帽を目深にかぶったユキト。

近づいていく二人に気づいて手を振ってきた。


ユ『遠いとこ、ごめんな』

私『ううん、一時間半だし、平

『こいつはマルオ。よろしくな』

私の答えを聞くのをさえぎってユキトが言った。

初対面で緊張している私たちだが、二人は緊張していない様子。

慣れてんのかな…。



そんな私たちを尻目に、カラオケにでも行こうという話に。


慌てて車を出す。こうしてみると、ユキトはなかなかのイケメン。

マルオは…。マルオだった。


イケメン相手に俄然燃えるふみ。

いやいや、今日はハンティングじゃないんだから…と目で合図する。



先にユキトに歌ってもらう。


きゅん…。


いやいやときめいてしまいましたよ。


そうとは知らず、粉雪を歌い上げるユキト。


全身全霊で歌い上げます。


普通のひとならドン引きするほどに。


しかし私の脳内はお花畑だった。


一曲歌い上げるまでにかく汗の量が半端ない。ハンカチを差し出すと

『ごめん』

と言いつつ使ってもどしてきた。

そこはハンカチは洗って返すところでは…?というのは置いておいた。


カラオケは、マルオが何を歌っているのかわからないほど、私はユキトを見ていた。


帰りに寄った牛丼屋でも食い入るように見ていた。

丼をかっ食う姿まで素敵…。


そう、私はこの数時間で恋におちたらしい。

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