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【読書ノート】夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル 著

こんにちは。めぐみティコです。
普段愚にもつかない文章を適当に書き散らしていますが、読書するなら社会派だったり、硬派だったり、内面を深く掘り下げていたりするものの方が好みです。その反動で自分がアウトプットするときにふざけているのかもしれません。
(すきあらば挨拶文入れてくスタイル)

引きこもっていた連休の間、積読消化に勤しんでおりました。
そして読書ノート(物理)を書いていました。
今日も1冊、取り上げていきたいと思います。

『夜と霧』 ヴィクトール・E・フランクル著(みすず書房 刊)


著者 ヴィクトール・E・フランクルについて

フランクルは、1905年ウィーンに生まれました。ウィーン大学に在学中、アドラーとフロイトに師事し、精神医学を学びます。
精神科医として活躍するさなか、ユダヤ人である著者は、1942年にナチスにより強制収容所に収容され、両親・妻と死別しました。テレージエンシュタット、アウシュビッツ、テュルクハイムと移送されていく中で、土木作業にあてられる強制労働者から、発疹チフスを発症した被収容者を診る医師として活動することになります。
1945年4月にアメリカ軍によって解放され、その後ウィーンの病院で勤務。1997年に92年の生涯を終えました。
著書は日本語訳されているものだけで25冊を超え、今なお読み継がれています。

『夜と霧』概要

〈わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。
では、この人間とはなにものか。
人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。
人間とは、ガス室を発明した存在だ。
しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ〉

「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっている。
原著の初版は1947年、日本語版の初版は1956年。その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版した。

世代を超えて読みつがれたいとの願いから生まれたこの新版は、
原著1977年版にもとづき、新しく翻訳したものである。

私とは、私たちの住む社会とは、歴史とは、そして人間とは何か。
20世紀を代表する作品を、ここに新たにお送りする。

裏表紙より

読後雑感

テーマはとても重たいものですが、言葉が平易で読みやすかったです。
21世紀へ、またさらにその先へ読み継がれてほしいとの思いで新版が刊行されたのだということですが、訳者である池田香代子さんの「未来へ本書を渡していきたい」という情熱を感じる、そんな文章でした。

著者は強制収容所の収容者を、ざっくりとふたつにカテゴライズしています。
ありていに言えば、
『収容所の暮らしや己の境遇に絶望して、自分自身を諦めてしまっている者』と、
『己の境遇を受け入れた上で、自分を待っている者や本来の仕事に対して責任があると自覚している者』のふたつです。
後者は「生きることから降りられない」と筆者が指摘している通り、後者の方がどんな境遇であっても精神的に成長を続け、尊厳を失わずに己の命と向き合っていたといいます。

極限の状況下においては、「生きていることになんの意味があるのか」と考えることではなく、「生きていることが、自分にとってどんな意味をもつのか」と考えることが高い精神性を保つために最も重要なことだと本書は説きます。
筆者においては、精神科医という職業ゆえに「この状況での人間の心理状態はどうなるのか」を冷静に観察・記録することが、「自分にとっての生きる意味」となって収容所を生き延びる動機となったことは想像に難くありません。

このことは、現代を生きるわたしにも深い示唆を与えています。
現在の日本の社会で生きていくことを考えると、生命に直接影響を与えてくるような飢餓や極端な不衛生、過重な肉体労働はないと言ってもいいでしょう。
しかしながら、わたしの半径3km以内を見回すだけで、精神疾患による休職や重なるストレスからの病気の発症など、健康状態が捗々しくない人々が見られます。
仕事の効率化によって個人に求められる仕事量は逆に増えていき、処理すべき情報量も日々膨大なものになっています。
これは、現代の過重労働であり、その中で己を見失わずにいることがいかに難しく、それでいて重要なことであるか、と本書の時代背景と被収容者の心理を現代にそのまま読み替えることもできるのでは、と思いました。

おわりに

本書は、中学生・高校生に読んでほしいです。
自ら生きる意味を見出だすことの大切さ、精神性を高めて人間らしく生きていくことの素晴らしさが余すことなく語られ、それは筆者の実体験に基づく分析であるからこそ、より重くわたしたちに響くのです。
自己啓発本を10冊読むよりも、『夜と霧』を1回読んだ方がよほど良い。
この読書体験は、生涯にわたり読者を支える根幹となります。
10代の、まだ己が何者であるかを決めていないうちに本書と出会える人生は、それだけで幸運に恵まれています。

最後まで目を通してくださり、ありがとうございました。


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