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呻吟


「私たちって、どういうカンケイ?」
 目の前の中学3年生の彼、ーーは、私望む言葉を用意しているのだろうか。
 友達、幼馴染、知り合い。それとも、彼氏彼女同然?一体なんだといえるのだろう。私は・・・どれかには当てはまると思うし、どれにしても違和感を覚える。誰かに、この関係を定義してもらいたいのだろうか。
 否、たとえ科学的なデータに基づいて、どこかの誰かに定義されたとしても、きっと私は納得しない。つくづく私は面倒な女だと嫌気がさしている、ような気がする。
 小さい頃のいつか、仲良くなった子が幼馴染だと言われようと、いつも学校で一緒に過ごす人から友達でないと言われようと、心の奥底ではどうでもいいという感情だけが、息を潜めているのだ。
 だからこうして、一刻前の冷め冷めとした空の色と似た私の部屋に、ーーを呼んだのだ。クダらない、私の問いを前にして、彼の唇は動じない。私も、彼の運命も、そうなることを望んではいない。
 どこに点を置くでもない、大きな二つの黒い真珠が、もう20分も座っている。
 目は口ほどにモノを言う。瞳に向けて、会話を試みる。
「なぜ、私をこんなにも悩ませるの?」
 目は虚ろ。口は闇。
 赤黒く美しい鎧を身に纏う、アナタの凹んでしまった胸へ、掌を押し当てる。そこに力はなく、愛は込められていた。意思に反してノゾゾと堕ちる自身の手が、彼の血を含んでいく。
「殺してほしいだなんて、どうかしてる」
 心なしか、私の汚した掌はキラキラと怪しい光を放っていた。




ーーー呻吟 冒頭ーーーby Tiger

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