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『BANANAFISH』を愛しているせいで、誰かを傷つけてしまわないために知っておきたい4つのこと

こんばんは、佐原チハルです。
ご存知の方はご存知の通り、アニメ『BANANAFISH』にはまっています。
中学のとき、地元の図書館で原作漫画に出会って以来のファンです。
毎日がとても楽しいです!

が、この作品、テーマがなかなかシビアです。
性や性被害についての話が、ものすごく出てくる。

なので、我らファンの間でも
性に関する話・単語が、ものすごくいっぱい出てくるんですね。

ゲイ・ホモ・セクマイ・オネエ・ペド・小児性愛・レイプ・児童ポルノ・etc……!

とてもよくできた作品で、
たとえば一定年齢以上のセックスワークについては善悪も何もないワークとしてさらっと描かれている一方で
子どもにさせるそれについては、徹底的に否定しています。

そういう作品なので、ファンの人たちの「性」についての姿勢もとても共感しているのですが
いかんせん『BANANAFISH』、古い作品です。
現代から見れば「アウトーーーーーー!!!!」という表現もあります。

アニメ化にあたって、舞台が現代化されました。
それによって、たとえば「ホモ」という言葉が「ゲイ」に変わるなどの変化もありました。

それでも拭い去れない、無理解があるなと、今は感じているところです。
作品(原作&アニメ)だけではなく、それを受け入れる私たちの中に。

その結果、差別や加害に加担している・しかけている状況もあると、最近とても思っています。

BANANAFISHというこの類い稀な名作に触れて、想い、語る中で
誰かを加害し傷つけている、というのは、とてもよくないです。
BANANAFISHの語りに限った話ではないですが。

と、いうことで
私たちファンが、知らずに誰かを加害してしまうことがないように知っておきたいポイントについて、
4つにまとめてみました。

なお物語の解釈は千差万別、十人十色、
人の数だけあって当然と思うのですが、これは解釈の話ではないです。

ぜひ知ってほしいなと思います。

テーマだけざっくりいうと、
セクシュアリティに関しての性教育的な話ということになるかと思います。


1、基礎知識として知っておきたい”LGBT”

最近では、耳にすることが増えた、という方も少なくないことかと思います。

L=レズビアン。
女性を恋愛(や性愛)の対象にする女性。

G=ゲイ。
男性を恋愛(や性愛)の対象にする男性。

B=バイセクシュアル。
男女どちらの性別の人も、恋愛(や性愛)の対象にする。
もしくは、対象の性別を問わない。

T=トランスジェンダー。
生まれたときの身体の性別と、ジェンダーアイデンティティが異なっている・違和感がある人のこと。
「身体の性と心の性が一致しない人」とか言われることが多いです。

「性同一性障害」という言葉が、すぐに浮かぶ人もいると思います。
ただ、トランスの人が必ずしも性同一性障害かといえば、そんなこともないです。(性同一性障害とは、疾患としての名前ですね)
“心の性”に合わせて身体を手術し適合させたい、というニーズを持つか否かは、人によります。

なお今年の6月、トランスジェンダーは疾患ではないとするWHOの声も出されました。

https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/20/transgender-no-longer-mental-disorder_a_23464256/

バナナフィッシュを愛好していると、「オネエ」という言葉がよく出てきますね。
TVでも「オネエ」という言葉は一時期流行したので、耳馴染みがある方も多いと思います。

しかし、「オネエ」の定義は曖昧です。

身体男性で女性の自認を持つ人、という意味(トランスジェンダーの意味)でいう人もいれば
「男性を好きになる=心は女性!」と決めつけて、ゲイのことをいう人もいれば
「女性らしい」とされる服装や仕草を好む男性のことをいう人もいます(女性装の男性が全員トランスジェンダーなわけではありません)。

「オネエ」という言葉をもし使うのであれば、自分は今どの意味で使っているのか、定義づけることが必要です。
そして、そもそもの話ですが
「オネエ」という括り方は、少なくない場合で、くくった相手を阻害します。
「多数派とは違う異質のもの」というニュアンスを含むことが多いからです。
(文脈や関係性にもよりますが……)

どうしても使う必要がある、という場合でないなら、使わない方がベターな語のように思います。

なおLGBTは「セクシュアルマイノリティの総称」として言われることが多いですが、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の中には、LでもGでもBでもTでもない人もいます。LGBTが全てではありません。

LGBTへの理解については、信頼する友人(遠藤まめた)が書いている本があります。

『先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら』

BANANFISH愛好している人、お子さんをお持ちの方が少なくないとお見受けしましたので(カフェも親子で来ている方、いらっしゃいますしね!)ご紹介させていただきます。うちにも1冊ありますが、わかりやすくてよいですよ〜!


2、「ホモ」とは

BANANAFISHに関するツイッターのTLでは、(あくまで私のTLでは)あまり見かけない言葉です。
大変、素晴らしい。
でもね、ときどき、あらわれます。

「ホモ」は、上述した「ゲイ」のことを指して使われる言葉なのですが、これは蔑称です。
文脈や関係性も、もちろんあるでしょう。
でも、蔑称なんです。

そのツイートを見かけた全然関係ない誰かを、ぶん殴って鼻の骨を折るような、そんな言葉です。
だから使わないでほしい。

ホモ・サピエンスの略だとかなんだとか、
グダグダくだらねえ言い訳して正当化したいらしい馬鹿野郎もいるようですが、論外です。
「ホモ」はやめましょう。

ちょっと似たような話ですが
「腐女性」が、自虐のつもりで男性同士の恋愛を好むことをアブノーマル扱いして語ること、ありますよね。
それもね、やめたほうがいいです。

自虐のつもり、遠慮のつもりでしょうが
怪我してるのは「自虐」のつもりのあなたではありません。
踏まれているのもあなたではありません。
あなたはその「自虐」をすることで、加害し、踏みつける側に立っているのです。

男性同士の恋愛・性愛関係に対し「腐」という文字をあてていることの意味を、よく考える必要があるかと思います。


3、小児性シコウについて

アニメBANANAFISHでは、原作では「ホモ」と描かれていた場所が「ゲイ」に置き換わっていました。
第2話、スキップがマービンを評して「あいつゲイなんだ、アッシュに気があるんだよ」と言うシーンです。

実際、マービンはゲイなのかもしれませんが
マービンについてより特筆すべきは、彼が小児に対しての性シコウを持っていた、という点です。
ティーンになる前から、主人公・アッシュがマービンからの被害を受けていたことも描かれています。

同性を性愛の対象とすることと、小児性シコウを持つこととは別ものです。もう、全くもって関係ない、完全なる別物です。
(小児性愛、という言葉は使わない主義です)(愛ってなに)(愛なんていらねぇよ、夏。ってドラマありましたね)

誤解させる、というほどの文脈ではなかったかもしれませんが
ともかく、全くの別物である点を知っておく必要があります。

なぜなら小児性シコウと同性愛シコウとは、なぜだか並べて語られることがあるからです。
そういう現状があるので、
できる限り誤解を生まない形で語を使用するのがよいかと思います。

当たり前ですが
異性愛者にも同性愛者にも、どちらにも小児性シコウの人はいます。

なお、佐原は「小児性愛」という言葉同様、「性指向」という言葉も、実はあまり使わないようにしています。
たとえば同性愛「指向」と「嗜好」と言う言葉について。

「指向」といえば、生まれつきの仕方がないもの。
「嗜好」というと、ただの趣味で、仕方がないわけでもないもの。みたいに、使い分けられることがあるかと思うのです。

で、
「同性愛は指向であって嗜好ではない、生まれつきのものだから認めてあげるべき」
みたいなことが言われたり、するんですよ。

これね、すっごいおこがましいと思いません?
何様?
みたいな。

生まれつきだろうがなかろうが、指向だろうが嗜好だろうが、
誰に迷惑かけてるわけでもない対等な付き合いをする(もしくはしない)ということについて
誰かに認めてもらう必要とか、あります????
ないよね????

指向か嗜好か、という判断軸を持つことそのものが、暴力的だったり不遜だったりすることって、あると思うんですね。
なので、私は指向という言葉を使いません。


4、男をレイプする男がゲイとは限らないし、子どもをレイプする人が小児性シコウの人とも限らない

作中では明示されている人・ほのめかされている人が多いのですが
大前提として、
男をレイプする男はゲイ男性だけじゃないし、
子どもをレイプする人は小児性シコウを持つ人だけではないです。

レイプ含め性暴力は、
対象を貶めたり、支配したり、ただ恐怖を与えたり苦しめたりするために行われることがあります。
性暴力は、暴力の一形態です。
暴力を振るう手段として、性的なものが選択されています。

男性をレイプする男性の所業を、全てゲイのせいにしてはいけないです。
子どもをレイプする大人の所業を、全て小児性シコウの人のせいにしてはいけないです。

「自分はゲイじゃないから、子どもに性的な欲求を覚えないから、大丈夫」なんてこともありません。
性的な加害は、なんと、悪気もなにもなく行えてしまうことだってあるんですねー。

※ちょっと関連する話※
『「父親は何歳まで娘のお尻を触っていいのか問題」は問題になり得るか(反語)、の話』

https://note.mu/tiharu/n/n260953cdaab4

小児性シコウには、しかし、同性愛や異性愛とは1点だけ大きく異なる点があります。
「言動にしたら即刻、加害である」という点です。
なぜなら、相手は子どもなので。

手を出したら、だけなくて
写真におさめる、欲求を発信するなども。
子どもの脅威になります。脅迫ですね。

子どもは、子どもです。
心身の成熟度はもちろんのことですが、社会的な立場が違います。
大人と子どもとでは、圧倒的な差があるんです。
対等になれません。
だから、同意を得ることも合意を形成することもできません。
これに異論は認めません。

子どもなんて、たとえどれだけの金持ってても、1人じゃ携帯契約することも部屋借りることもできないんですよ。
そんな相手と対等になれるわけないでしょ。
相手の子どもが、たとえどれだけ賢くて、人生経験をつんでいて、心身ともに成長していたとしても。

でも、同意なく手を出すこと・写真におさめること・欲求を発信することって
子ども相手じゃなくても加害になること、多々ありますね。
「小児性愛者じゃないから自分は大丈夫」と思えてしまったら、それはとてもおそろしいことなのかもしれませんね。


はい、以上です。

ついでなので、バナナフィッシュを愛するみなさまなら関心を持つかもしれない記事をもう2つ、ご紹介させていただきますね。

『「家出少女」を見つけたら……セックス以外にもできることがあります、という話』

https://note.mu/tiharu/n/n2ab0a15d4334

『家に帰りたくないとき、セックスする前にできることと、セックスするときにできること。の話』

https://note.mu/tiharu/n/n021538263e4b



おわり。

以上、全文無料でした。

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※1700円の支援をいただけると、この記事を作成する時間分、子どもを安全な環境に預けるのに必要な保育料程度のカンパになります。

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さて、明日は……9話の放送日ですね……。
つらい。


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