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これからの性教育の話をしようvol.4 染矢明日香の場合

こんにちは、佐原チハルです。

本日、3月8日は、国際女性デーです。
昨年のこの日、私は #RedUmbrellaRally に参加してきました。
『#RedUmbrellaRally に参加してきた話』
その後離脱し、ウィメンズマーチは歩かずに、帰宅。

今年は、ちょっと悪天候ですが、ウィメンズマーチを歩いてきます。周囲を見たいからビニ傘だけど、気持ちだけ赤い傘をさして。

さて、そんな国際女性デーの今日、『これからの性教育の話をしよう』vol.4の更新です。
(『vol.1 遠藤まめたの場合』はこちらです)
(『vol.2 赤谷まりえの場合』はこちらです)
(『vol.3 千谷直史の場合』はこちらです)

本企画『これからの性教育の話をしよう』は、その名の通り「これからの性教育がどういうものだったらいいと思うか」を、みんなで考えていくための企画です。
日頃からいろいろな形で“性”について関わり、活動している人たちの声を聞くことで、これからの性教育を考えていくためのヒントを探していけたらいいなと思っています。

そこで、性に関して活動したり発信したりしている人たちに、「今までどんな性教育を受けてきたのか」「性教育の問題点とは?」「今後の性教育には何が必要と思うか」などなど、性教育をする前にぜひ考えておきたいポイントについて聞いてみました。

シリーズ第4回は、NPO法人ピルコン代表の染矢明日香さんです。

なんといいますか、国際女性デーにとてもふさわしい回になったと思います。別にこの日にこだわる必要はなく、1年中いつだって考えていたいんだけど、
女性の、girlsの、性の健康の話。
たっぷり想いを寄せることのできるお話を伺うことができました。

質問一覧

Q1、自己紹介をお願いします。
Q2、義務教育でどのような性教育を受けてきましたか?
Q3、義務教育終了後は、どのような性教育を受けてきましたか?
Q4、いま「性」や性を取り巻く現状について、どんなことを思いますか?
Q5、いまの“性教育”については、どのようなことを思いますか?
Q6、これからの性教育に望むこと、理想の性教育について聞かせてください!
Q7、理想の性教育ために必要なものって何だと思います?
Q8、今後、「性」や「性教育」についてやっていきたいと思うことってありますか?
Q9、自分ではなく他の人に「やって欲しい!」と思うことってあります?
Q10、これから性教育をする人、したいって思っている人たちにおすすめの書籍・作品などあれば、教えてください!

Q1、自己紹介をお願いします。
A1、性の健康教育の普及啓発を目指すNPO法人ピルコンの代表をしています。染矢です。

(さわやか染矢さん@佐原の実家の近所と似ている公園)

佐原;ピルコンさんってどんな活動をしているのか、概要教えていただきたいです!

染矢:ピルコンは、正しい性の知識と判断力を育む支援を行うことで、これからの世代が自分らしく生き、豊かな人間関係を築ける社会を実現することを目指す、非営利団体です。

医療従事者など専門家の協力を得ながら、中高生向け・保護者向けの性教育講演や、メディアでの発信、若者向けのイベント開催や性教育コンテンツの作成など、性の健康に関する啓発活動を行っています。

佐原;若者向けだけでなく、保護者向けの講座もあるというのがいいですね。若者向けに活動するときって、保護者の理解を得られると、とても助かりますし。保護者の中にも、きっといろいろなことを知りたい、自分たちが何かするとき・考えるときのヒントが欲しい、というニーズもあるでしょうしね。(※1)

ところで、ピルコンさんの“ピルコン”ってどんなことに由来した名前なんですか?

染矢;ピルコンは、もともと「ピルとコンドームで避妊しよう」というメッセージが由来でつけました。

佐原;あ、すごい。ストレートに避妊のこと扱いますって名前ですね。

染矢:……ですが、時代やカップルによって最適な避妊の選択肢って変わるし、妊娠を目的とする性行為ももちろんありますよね。
そこで現在は「理想的な人生を実現するための対話を通してのプログラム(Program for Ideal Life through Communication & Networking)」をあらわす英文の略称、としています。

佐原;より広く、深くアプローチしていける方向に進化したのですね。
あの、活動を始めようとしたきっかけって伺っても大丈夫ですか?

染矢;もともとは、大学生の時に思いがけず妊娠し、中絶したことから性教育についての興味を持ちました。

当時、性については割とオープンに友達とも話す方だったけれど、避妊についての知識が間違ったものでした。生理中の性行為では妊娠しない、膣外射精で避妊できると思っていたし、パートナーにコンドームを付けることへの言いづらさを感じることがありました。

中絶は、自分にとって本当につらい選択だった一方で、避妊の知識について私と同じように知らなかったり、パートナーに言いづらかったりと、周りの友達もあやうい環境にいるケースが多いということに気づきました。
そして学校の授業がきっかけで、日本で中絶件数がこんなにたくさんあるのに(当時年間30万件ほど、現在は年間18万件ほど)、性教育や避妊の情報がきちんと若者に届いていないことも知りました。
「これ、日本ってやばいんじゃない?」って正直思いました。

佐原;わかります。いや、ほんとやばいし、普通におかしいだろって思います。

染矢;その問題意識から「自分と同じように性で傷つく若者を減らしたい」って、すごく思って。それで学生の時にピルコンを立ち上げ、大学生や若手社会人を対象に、自分の身を守る性の知識を伝えることを始めました。

大学を卒業した後は、ピルコンの活動はいったん休止し、民間企業で働いていたんです。
でも、自分の人生で成し遂げたいことを考えた時に、「自分が社会に本当に必要だと思うことをつくる仕事をしたい」と考え、ピルコンを再始動、2013年にNPO法人化しました。
その頃から、中絶経験があることもオープンにしています。

佐原;私、今は直接的には取り立ててな〜んにもしてないんですけど、“大学時代に活動していて、休止しつつ民間企業に就職し、でもやっぱり自分が必要と思うことに時間を使いたいって思って活動ができそうな場での仕事をすることにした”っていうあたり、共感しかないです。私も、私も! って。
うわぁ、もう、それだけでも染矢さんのことめっちゃ応援したい。それだけじゃないけど!
応援とかおこがましいですが!

染矢;今は幼児の育児中でもあります。子育てと働くことを両立する大変さを日々実感しています。

佐原;うん、それ日々私も実感中です。被雇用者じゃなかったり、仕事がNPOだったりすると、保活ひとつとっても厳しいこと多いですもんね。仕事がNPOでしかも雇用する側の立場だと、ますますいろいろ厳しいのではと思います。
が、どうにかできてやれている先例があるというのは、下の世代の人たちにとっても大事なことですね。


Q2、義務教育でどのような性教育を受けてきましたか?
A2、小学校では女子だけ集めての月経手当講習と、理科の時間での性教育ビデオ視聴。中学校では、保健体育の授業でさらっと……という感じです。

染矢:もともと、性的なことへの関心が高い子どもでした。10歳になる前くらいから、公園やバスに置いてあった成人向け雑誌の性描写とか、男子向けアニメのエロいキャラクターを見て、“エロいもの”に関心を持ってました。

だから中学の保健体育の授業のとき、「エロいことが聞ける!」とワクワクしながら臨んだのですが、全然エロくなく、サラッと終わってがっかりしました。(笑)

佐原;月経の手当について聞いただけで、中学でもがっかりするくらいサラッと終わる感じだと、内容も薄そうな感じですね。
小学校の理科の授業での性教育ビデオって、どんな内容だったんですか?

染矢;「1つの精子と1つの卵子が結びつくのは、天文学的な確率の組み合わせで、かけがえのない命なのです!」という感じでしたね。感想文も書きました。そのビデオのことは、ちょっと印象に残ってます。

佐原;どんなところが印象的でした?

染矢;「妊娠は奇跡」って刷り込まれて、リアルじゃないなって感じました。というか、自分の生活の延長上で起こることとして、妊娠をとらえられなかったように思います。

佐原;なるほど。“生活の延長上で起こること”として感じられるかどうかって、すごく大事なポイントだと思います。

染矢;小5の時に、弟が産まれたんです。間近で妊娠や出産、育児の様子を見られたことは、とてもいい思い出です。弟は超かわいくて、私もたくさんお世話したように思います。
あと、「ということは、お父さんとお母さんはしたのか! 一体いつしていたんだろう……」とか考えてました。

佐原;あ、じゃあ弟さんが生まれてたときは、もうセックスについて知っていたんですね。セックスのことって、どこで学びました?

染矢;小学校の3~4年生くらいの時に、「どうして子どもができるのか」という素朴に疑問を抱いて、母に聞いたんですよ。そうしたら母は、「男の人のおちんちんを女の人のおまたに入れる」と、どストレートに回答してくれて。「そんな最強にエッチなことを大人はしとるんか!」って、衝撃を受けましたね。
当時の私、それをクラス中に言いまわっていた気がする……。(笑)

佐原;小学校のころ、クラスで「セックスって知ってる?」って言い出し始める子っていますけど、そうか、染矢さんは言い始める方の子どもだったのですね!
しかし、しっかりはっきり教えてくれるの、よいお母様ですね。

染矢;それでも、生命誕生以外に家庭でオープンに性の話をしていたわけではないんですよ。親とは、性のことをほとんど話した記憶がないです。

家庭の中で性について話していた記憶といえば、兄と姉との記憶ばかりですね。きょうだいの中で、性=下ネタという認識で「下世話でおもしろいこと」として話してました。

学校外だと、中学生の頃に友達の家で、AVの鑑賞会をしました。友達の父親のものですね。洋モノで、ずっと「オーイエ」って言ってて、「セックスってこんなんかなぁ」って思いました。

モザイクがかかっていて、何が起こっているかほとんどわからなかったです。気持ち悪い、みたいな気持ちも少しありつつ、早くしてみたいとも感じていたように思います。

あとは、部活の友達とエロ本をコンビニで立ち読みしてゲラゲラ笑ったり、交換日記に下ネタを書きすぎて怒られたりしていました。

佐原;下ネタ書きすぎて怒られるって相当ですよね!?(笑)


Q3、義務教育終了後は、どのような性教育を受けてきましたか?
A3、高校、大学での記憶はほとんどありません。

染矢;高校は進学校で、真面目な友だちも多く、性経験のある子もごく少なかったように思います。
それであまり性について話さなかったし、勉強と部活にどっぷりで、性について意識することもあまりなかったです。
文系クラスで、ほぼ女子高のような感じでした。

大学では、ウェルネスという健康についての科目が必修の授業だったのですが、そこでもアルコールのパッチテストなどやったのは覚えていますが、後の内容はほぼ覚えていないです。

大学に入るまで付きあったことがなかったんですが、大学生になってからは、「早く彼氏が欲しい、性経験をしたい」という思いが強くありましたね。

佐原;なるほどです。染矢さんにとって、彼氏をつくることと性経験をすること、というか恋愛と性経験って結びついていましたか?
たとえばセフレを作るとか、「結婚までは性的なことはしない」という人でもいいから恋人を作りたい、みたいな選択肢とか気持ちってありました?

染矢;恋愛関係の中で、“愛されているゴール”としてセックスをとらえていたように思いますが、好きな人であれば、自分が愛されていなかったとしても性経験をしてみたいという気持ちはあったように思います。

ただ、そうやって焦って経験したものの、気持ちはあまり満たされなかったです。
相手が自分のことを大切にしてくれている実感がないのにセックスする関係の人がいた時は、自分の価値が低くなった気がしてつらい時期もありました。

佐原;相手が恋人であろうとなかろうと、セックスって相手がある行為ですもんね。一緒にプレイする相手を大切にする、というのは、最低限必要なことかもしれないですね。


Q4、いま「性」や性を取り巻く現状について、どんなことを思いますか?
A4、「性教育、性について学習する機会が必要!」って思います。

染矢;自分自身、すごく性について興味があったのに、学習する機会がなかったように感じています。

ピルコンでは、講演の事前・事後の両方でアンケートを行っているんです。そこでは、私のように興味津々な子よりも、興味がない・嫌悪感がある子も多いように見受けられます。
それでも講演後の感想では、「誤解していたこともあり、知れてよかった」「将来に活かしたい」等の前向きな意見が多いです。
この講演の前後での差異や変化って、あまりにも性について公教育の中で知らされていないから起こるものなんじゃないかなって思います。

(活動の様子)

染矢;一方で、近年ではインターネットの普及によって、子どもたちも簡単に性情報に触れられるようになりましたよね。

佐原;ですね。メリットも、デメリットもあることと思います。

染矢;ネットの性情報の中には、相手を傷つけるものや、科学的に間違っているものも多いです。そういうものが「リアルの性」と受け取られてしまう前に、性教育が必要だと思うんです。

佐原;情報があることと、それが教育効果を持てるかどうか、学習になり得るかどうかって、別の話ですもんね。

染矢;あのね、男子が“テクノブレイク(※2)”を信じていたりするんですよ。あとは、AVのプレイを現実に真似して傷つけたっていう話も聞きます。

佐原;AVがフィクションであるってことはわかっていても、どこまでがフィクションでどこからが演出なのかがわからなきゃ、意味ないですもんね。

染矢;そういういろいろがあって、思春期男子に届く形での性教育の情報提供が必要だなって思ったので、『マンガでわかるオトコの子の「性」』を出版するに至りました。

佐原;大事ですね。すごく大事。
最近は、男の子も小さい頃は特に女の子と同じくらい被害にあう可能性があるから気をつけなきゃいけないって知られてきてますよね。だから男の子のママさんでも、「自分の子どもを被害者にしないためにどうしたらいいんだろう」「夫とこの危機感が共有しきれなくて辛い」って、聞くことがあるんです。

でもお子さんが育ってくると、今度は「うちの子を加害者にしてはいけない」って悩み始めたりもします。で、その感覚もまた夫と共有できなくてどうしようってなったり……。

被害者にも加害者にもしないって、難しいですよね。自分の力や、本人の努力だけでどうにもできない部分もあるから。
でも、自分にできる範囲で気をつけようとするためには、やっぱり知識って必要だと思うんです。万能じゃないけど、有用なシーンは確実にある。

だから、男の子の自身が自分の性について知れるツールというのは、とても重要なものと思います。男の子を育てているママさんにも、有用なツールになるかもしれませんね!


Q5、いまの“性教育”については、どのようなことを思いますか?
A5、性についてタブー視、もしくは神聖視するあまり、必要な知識が知らされていない状況にある

佐原;タブー視と神聖視って、真逆に見えて結局は“リアル”からかけ離そうとする視点だから、どっちもやっかいなんですよね。
よく言われるのは、母親や女性を貶めたりバカにしたりすることと、神聖視とについてですけど。どっちも“同じ人間扱いしていない”という点で、母親・女性にとっては不都合しかないっていう。

染矢;性教育って、普段の生活の中で健康を守るためのものだし、自分らしく生きていくためのものですよね。
コミュニケーションや快楽としての性を追求できるのも権利だし、一方で性には、人の尊厳を大きく傷つける暴力にもなりうるっていう面もある。

佐原;本当、そう思います。

染矢;あと、現在の性教育において「命の大切さ」ばかりにフォーカスが充てられることに、違和感を覚えてもいます。

年の離れた弟が産まれて、育てる過程を間近で見てきたからこそ、命の尊さとか可能性を実感できていたなと思うのです。それを感じていたのに中絶を選択する、っていうのは、とても辛いことでした。

そもそも避妊や中絶についての情報を、私も当時のパートナーも知らなかったんです。
リプロダクティブヘルス・ライツ(※3)の観点からも、避妊や中絶についての情報を得られることは権利だし、その意味でも日本はとても遅れていると思います。現場からの声も必要です。

佐原;なるほどです。
現場からの声というと、どのようなものがあって欲しいと思いますか?

染矢;「子どもたちが自分の望む人生を実現するためには性教育が必要」ということ、そして、「性教育を受けた子たちは『知れてよかった』と言っている」現状について、しっかり言っていくことが必要と思っています。

ただ、一方で、学校教育にも限界やハードルがあることも知っています。

佐原;限界ってどんなものですか?

染矢;予算や時間の確保が難しいことや、養護教諭や管理職の先生の意向により、性教育講演が実現しないケースなどですね。

だからこそ、外部の人間である私たちNPOは、当事者の声を集め、様々な機関との連携を深め、新しいことにもチャレンジしていくことが大切だと思っています。

Q6、これからの性教育に望むこと、理想の性教育について聞かせてください!
A6、授業時間の確保、個人の多様な生き方の肯定を前提とすること、性についてのリテラシーを学べるようなものが必要と思います。

佐原;時間の確保、ほんとそこからですね……。

染矢;秋田県って少し前まで、10代の人工妊娠中絶率が全国平均を大きく上回っていたんです。それで2000年度から秋田県では、県や教育委員会が医師会と連携して、医師を県内の中学校・高校に派遣し、性教育講座を実施するというプログラムを行なうことになりました。
県内のすべての中高生が、在学中に一度は妊娠・出産や避妊、性感染症などについて話を聞く機会が得られるようになったんです。
その結果、2011年度には中絶率が1/3にまで減少。全国平均を下回るようになりました。

佐原;それはすごいですね。「性教育を行うと、寝た子を起こす(=子どもの性への興味を不必要に喚起し、性行動を促してしまう)」なんてむちゃくちゃなこと言ってる人たちのこと、まだ見かけることもありますけど、逆ですね。

染矢;さらに、これからの性教育では避妊・性感染症予防教育だけじゃなくて、そこから一歩踏み込んだ内容が必要だと思っています。

性についての情報って、それぞれが自分らしく生き、自分の望む人生を実現していくための知識だと思うんですね。そして性教育は、自分の考えと他人の考えを尊重できるようになるための学問だと思います。
個人の恋愛や、性経験をしない自由も前提に、自分らしい生き方を考え、つくっていくための。

佐原;わぁ! 「恋愛やセックスをしない自由」の話って、今まで禁欲的な意味以外では教育者や保健師さんたちから同意を得られたことが少なかったので、それぞれの「自分らしさ」の範疇で染矢さんがこの話をしてくれること、すごく嬉しく感じました。

染矢;性の多様性を大切にするという。性教育の人権教育としての文脈で、大切なことだと思っています。実際、「恋愛や性行為に興味がない」という中高生が一定数いるのも事実ですし。そういう子たちを排除しない教育が必要ですよね。

佐原;それは大変ありがたいですね。恋愛するかどうか、性欲があるかないか、妊娠するかしないか、子どもを持つか持たないか……。全部、それぞれ別の話なので、いろいろあるよね〜っていうのが伝わるといいなぁ。

染矢;「自分の性のあり方・満たし方を探求すること(セルフプレジャー)」「性にかかわるリテラシーや、性情報とのかかわり方について知ること」「交際・性関係に至るまでの関係の深め方(同意の大切さ)や交際のマナー(性暴力予防)を知ること」ができるものがいいなと思うんです。

って、今はそう思いますけど、社会の変遷によって、若者・思春期の課題もまた変化していくんですよね。そういった変化に合わせたカリキュラムの作成・見直しができるバッファが欲しいです。


Q7、理想の性教育ために必要なものって何だと思います?
A7、性教育の学習機会の確保、あとは、“性教育”の概念や定義の再確認。

染矢;現在の日本では、性教育って教科として位置づけられてないんですよね。そのせいで、学校によって取り組まれ方にかなり差があって、授業の実施状況もバラバラです。学校の管理職の意向や、指導する教員側の熱意によって左右されるんですよね。

佐原;同じ学校でも、先生や年度が変わると方針もガラっと変わったりしますもんね。

染矢;2000年代前半の性教育バッシングの歴史から、学習指導要領の中では、小中学校では「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という規定があったりします。
また性感染症についての「感染を予防するには性的接触をしないこと」という記述からは、いわゆる性行為(セックス)や妊娠後の身体の変化などに関する、より実践的な知識について教育することを避ける様子が見受けられもします

佐原;学習指導要領で書かれちゃうと、現場は“あえて、違うことをする”必要があるわけで、大変なご苦労がありますよね。
小学校や中学校の先生から、「セックスの話をしないでどうやって教えればいい!?」って相談受けたこと、けっこうありました。

授業とかでも、高校まで行くとけっこう自由に喋らせてもらえるんですけど、中学校だとなかなか限定されるし。HIV/エイズに関してだけは、小学生相手にお話をさせてもらったことあるんですけど、これは難しかったです……。

染矢;学校教育の中で性教育の機会を保障していくためには、まず文部科学省の性教育についての姿勢を改めていく必要がありますね。

佐原;たしかに。

染矢;で、そのためには、教育の施策を決めるトップの人の意識が変わる必要があります。……でも、現状これがなかなか難しい状況なのかなって思います。

ユネスコ等が作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』について、東アジアにおいても、韓国・台湾・中国は、いずれも性教育の制度的基盤を整えつつあります。ガイダンスが求める、国際的な包括的性教育の進展に呼応する可能性を広げている。
一方で日本の文部科学省は、未だに性教育を積極的に推進する姿勢すら示していません。極めて深刻な状況です。

佐原;日本、置いてけぼりですねぇ。私、前職でいろんな国の保健省や教育に関わる省庁の人たちに日本の性教育、若者に対するHIV/エイズ啓発の現状をお話しすることが多かったんですが、同情されることが多かったんですよねぇ……。
最初は「まさかそんなひどいこともあるなんて!」て笑われるんだけど、それが珍しいケースじゃなく国全体的にそうだよって説明になると、沈黙、同情からの応援と叱咤激励。みたいな。

あの、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』が示す“包括的性教育”について、概要とか説明してもらっても大丈夫ですか?

染矢;「性と生殖の健康」に限らず、「人間関係」や「価値観・態度・スキル」、「文化・社会・人権」、「人間の発達」、「性的行動」と合わせた6つの領域から、性を多面的にとらえることを指しています。
そしてそれぞれの領域について、各年齢層に応じた基本的内容と、学習目標が示されています

佐原;このガイダンス読んじゃうと、“だけに限らず”どころか、「性と生殖の健康」についての教育すらままならない日本の“性教育”のやばさがよくわかりそうですね……。

染矢;私、「性教育」っていう言葉のイメージ自体がよくないかもって思うんですよね。

佐原;その観点、興味あります。どんな理由でそう思われるんですか?

染矢;性教育バッシングの歴史があるので、教育関係者にとっては「性教育=性交を教える教育」っていう刷り込みがあるんじゃないかと思うんですよね。

佐原;七尾擁護学校の事件(※4)のときも「セックス人形」「アダルトグッズが乱舞する」とかってメチャクチャなバッシングされたらしいこととか思い出しますね。性教育でセックスについて、いま全然教えられてないんですけどね。
ただ、性教育でセックスのこと教えたいのって、セックスのことだけ言いたいわけでもないですよね。

染矢;だから、性教育のことは、ライフスキル教育とか? そういうものだよって捉え直す必要があるのかなって思います。


Q8、今後、「性」や「性教育」についてやっていきたいと思うことってありますか?
A8、“当事者”の声の発信、ネット教材の作成、楽しい性教育の場づくり

染矢;性のトラブルにあった当事者の声と、あとは、きちんと性教育を受けたことで、健康で精神的にも豊かな生活を送っている人たちの声を集めて発信したいなって思ってます。

佐原;「いまいい感じだよ!」って声を集めて発信できると、成功事例として性教育の必要性を言うだけじゃなくて、若い人たちにとっては、ロールモデルとしても参考になるかもしれないですね。

染矢;ネット教材は、若者や、性教育を始めたい教員・保護者の方を対象に、映像教材+手引きを作りたいなっていうイメージです。
あとはともかく、若者が身近に感じられるもの、楽しい雰囲気で学べる性教育を広げていきたいです。

佐原;身近っていうことは、リアルっていうこと。つまり、より実践的ってことですよね。性に関することって、自分から他の誰か、大人とかに聞くのってハードル高いから、ダイレクトに役立つことを学べる機会があるのって、助かりますよね。
しかもそれを、楽しい雰囲気で。めっちゃ大事ですね。

染矢;っていう性教育を、一緒に広げていく仲間も増えると嬉しいです!

佐原;よし、ピルコンメンバー募集のリンク、貼っちゃいましょうね!
ピルコンの活動に興味のある方、こちらのページをご確認くださーい! チャリティグッズ購入、寄付、会員になるなど含めた情報ページはこちらでーす!

(いろいろ募集中!)


Q9、自分ではなく他の人に「やって欲しい!」と思うことってあります?
A9、性のこともフォローできる居場所つくり

染矢;「若者の居場所づくり」が必要だなって。
性のトラブルへのリスクが高い若者や、若年出産をした若い親への支援とか、各地域で必要だと思います。
若者が集まるスペースは、性について特化しない方が集まりやすいかな。

佐原;うちの前職(※5)がね、そういう場所をめざしてやってたんですよね。いえ枠組みというか、予算としては特化してたんですけど、性の情報提供にいかに興味関心を持たせるかっていう罠というか、仕掛けをどれだけおけるかに心血を注ぎつつ、いかに「無料で遊べてドリンクバーもある、ただの場所」にできるか、みたいな。

性について特化した場所です、というのを全面に出しすぎない方が集まりやすいっていうのは、めっちゃわかります。……特化して、「性のことだけ」ってスタッフがなっちゃうと、結局はじかれちゃう子たちが出てくるから。スタッフ自体は特化した技術や知識を持ちつつ、特化してるだけでもダメっていうカオスですけど。
見え方・見せ方としては、ゆるーーーくしておかないとなってのは、思ってました。

染矢;「性の健康の知識を持つ人もつながってるよ」くらいがいいですね。

あとは、生きづらさを抱える若者向けの支援とか、そういう事業をしている方とのつながりや学び合う機会も広がっていくといいなと思います。


Q10、これから性教育をする人、したいって思っている人たちにおすすめの書籍・作品などあれば、教えてください!
A10、『マンガでわかる オトコの子の「性」──思春期男子へ13のレッスン』と、『ヒューマン・セクソロジー: 生きていること、生きていくこと、もっと深く考えたい』、『10代のモヤモヤに答えてみた。—思春期サバイバル〈2〉Q&A編』です。

染矢;『マンガでわかる オトコの子の「性」──思春期男子へ13のレッスン』は、ピルコン理事長染矢、つまり私の著書ですね。

(『マンガでわかる オトコの子の「性」──思春期男子へ13のレッスン』)

思春期男子の尽きない悩みを、マンガとQ&Aでわかりやすく解説しています。思春期男子にそっと渡してください。
女子や、保護者・先生にもおすすめです!

『ヒューマン・セクソロジー: 生きていること、生きていくこと、もっと深く考えたい』は、私が性教育を学ぶ上でテキストにしていた、師匠の村瀬先生の『セクソロジー・ノート』に、さらに最近の話題なども入れたものです。
「性教育をしっかりと学びたい!」と言う人には必須の本だと思います。

『10代のモヤモヤに答えてみた。—思春期サバイバル〈2〉Q&A編』は、知り合いの中学校の養護教諭の先生がおすすめと言っていて知った本で、思春期によくある悩みとその回答が載っています。そして面白いのは、回答が複数あるところ。答えは一つではなく、様々な考え方があることに気づかされます。


以上、NPO法人ピルコン代表の染矢さんでした!

染矢さん、ありがとうございました!

※ 1;『性教育する知識の欲しい保護者の集会所』という、ウェブ上の簡易な集会所を開設しました。ご興味ある方は覗いて見てくださいませ。ご質問は基本的にマシュマロで受け付けておりますが、こちらのnoteのメッセージ機能などご利用いただいても大丈夫です*^^*

※ 2;テクノブレイク
いわゆる“オナニー死”のこと。性ホルモンが過剰に分泌され〜……など解説されることもあるようですが、医学的根拠のある情報ではありません。信じないように。

※ 3;リプロダクティブヘルス

世界保健機関(WHO)はその定義を「人々は安全で満足できる性生活をおくり、子どもを産むかどうか、産むとすればいつ、何人までを産むかを決定する自由を持つべきである。さらに人々は生殖に関連する適切な情報とサービスを受ける権利を有する。その対象はまた、性に関する健康も含まれており、その目的は、リプロダクションや性感染症に関するカウンセリングやケアを受けられるにとどまらず、個人と他人の生活との相互関係を向上させることを目的としたものである」としています。ここでは「健康」と同時に「権利」が重視されており、その点からリプロダクティブヘルス&ライツと記載されることもあります。

上記は、(認定)特定非営利活動法人シェア=国際保健協力市民の会HPより引用しました。
http://share.or.jp/health/knowledge/reproductive_health/)

性と生殖の健康について、私たちはみな権利を持っている、ということをあらわす言葉です。

・「子どもを持つかどうか、持つ場合はいつ頃・何人くらい出産するのか」を決定する権利
・性の健康に関する正しい情報や支援を得られる権利
・安全な性生活を楽しめる権利
・安全に出産できる権利

……などが想定されています。

※ 4;七尾擁護学校事件
少し長くなりますが、重要な事件ですので記載します。

七生(ななお)養護学校事件は、七尾擁護学校が知的障害児に対し行なっていた性教育の授業について、東京都教育委員が不当介入し、また校長・教員らへの不当処分などを行った事件のことです。

知的障害を持つ児童らの性的加害・被害を予防するために作られたプログラムは、男性器・女性器の名称や部位を覚えやすいよう入念な工夫がされており、歌や人形などを利用していました。都教委および産経新聞は、これらに対して「セックス人形」「行き過ぎた性教育」などと揶揄、バッシングを行なっています。

当時、都議会で七尾擁護学校を問題としたのは、土屋敬之氏(元民主党)、古賀俊昭氏(自民党)、田代博嗣氏(自民党)の3名です。当時都知事であった石原慎太郎氏も、それらバッシングに賛同の答弁をしています。

都教委、およびこの教育への不当なバッシングを行なった東京都議会議員3名に対しては、損害賠償と、元校長への不当な降格処分を取り消すよう求める裁判が行われていました。
地方裁判所での第一審、東京高裁での第二審、そして最高裁判所での第三審の全てにおいて、七生養護学校側が勝訴し、裁判は決着しました。
しかしこの事件を発端として、日本の性教育は現在も、自粛・萎縮の道を辿っています。

なおこの事件をきっかけに、自民党は「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を発足しています。代表は現首相の安倍晋三氏(自民党)です。
このチームの事務局長は、「子守歌を聞かせ、母乳で育児」「授乳中はテレビをつけない」などの論、また非科学的論調により障害者・発達障害者への差別や偏見を生むとの批判を受けていることでも有名な“親学”の推進を行い、人工妊娠中絶に反対していることでも知られている、山谷えり子氏(自民党)です。

※5;佐原の前職
東京都エイズ啓発拠点「ふぉー・てぃー」という場所です。池袋保健所1階にある「エイズ知ろう館」という場所を間借りして、中高生・大学生年代の若い人たちが、放課後無料でダラダラできる居場所つくりをしていました。
HIV/エイズをはじめとした性感染症に関する知識、またセクシュアリティの多様さに自然に触れられるような仕掛け、罠、遊び道具をてんこ盛りに用意している空間です。

その他、看護学生さんや養護教諭の方向けの資料、また若い人たち向けの活動をしている人たちや、放課後事業をしている人たちへの出張支援など、現在も行なっています。
詳しくはこちらまで。
(後日こちらのシリーズでも、現スタッフへのインタビュー記事を掲載予定です)

<染矢明日香(そめや・あすか) プロフィール>

対話から学ぶ性の健康教育を広げるNPO法人ピルコン理事長。

自身の経験から日本の望まない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、慶應義塾大学在学中より「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げ、学生向けのセクシャルヘルスセミナーや、イベントへの出展を行う。現在は中高生向け、保護者向けの性教育・ライフプランニングプログラムやコンテンツの開発と普及を行っている。大学生ボランティアを中心に身近な目線で性の健康を伝えるLILYプログラムでは、のべ1万名以上の中高生に届け、思春期からの正しい性知識の向上と対等なパートナーシップの意識醸成に貢献している。
医療従事者の監修のもと製作・無料動画サイトに投稿した「パンツを脱ぐ前に知っておきたいコンドームの付け方」動画は2012年10月のアップ以来、180万回以上再生され、NHKやBSスカパー!、日経WOMEN、毎日新聞などのメディアにも数多く出演。

ピルコン
HP http://pilcon.org/
Facebook https://www.facebook.com/npopilcon/
Twitter @pilc0n

染矢明日香
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佐原チハル(アジールワークス)

書き仕事&書店員。元ユースワーカー。2013年秋、一児出産。BL好き。胃弱の食いしん坊。お仕事ご依頼は saharatiharu@gmail.com

これからの性教育の話をしよう

これからの性教育を考えるために知っておきたいこと、聞いておきたいこと、気になることのあれこれを、「性」について活動している人たちに聞いてみました。
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