見出し画像

『実は、「ワンピース」を超える作品があった………………かもしれない』

 今日もいつもの散歩道を歩きながら妄想をしていた。内容は、今日の新聞のテレビ欄にあった『科捜研の女 「殺人AIを愛した女」』のストーリーを考えてみるということ。

 ……「殺人AIを愛した女かぁ。まあ、タイトル通りにこの女が犯人ということにしよう。AIを愛するってことはリケジョだろうな。んで、そのリケジョはめちゃくちゃ美人。で夫が、20以上年が離れたその地域の有力者。この夫が、殺されていた、と。冷凍庫を開けたらそのおっさんが三角座りの態勢で凍ってた。
 現場検証でおっさんの家に行くとでかい家で庭もひろい。外観は豪華絢爛であるが中に入ってみると少し違和感を覚える。近未来的を感じさせる高級家電がたくさんあるが、シャンデリアとかキラキラしたものはあまり見当たらない。問題のおっさんが入ってた冷凍庫は大人二人が立っていても入ることができるほどめちゃくちゃでかい。
 で、家を調べた結果、家電がすべて世に出回っていない最新のAIによってコントロールされていることが分かった。いわゆるスマートホームの進化版。家主の行動パターンを勝手に学習して家電を動かしてくれる。冷凍庫も同じようにAIの支配下にあって、内容物の物質を認識して冷凍の温度を変化させる。
 そのたくさんの家電はそのリケジョが毎月メンテナンスをしてもらうようにしていた。家のAIを作ったところに頼んでいる。その会社に行ってみると、一人の若者が代表として出てきた。その男は、その家の担当として毎月出入りしていた。その男に事情を聴いてみた。
 聞いたところによると、その男はリケジョの元カレだったこと。そして、付き合っていた途中にリケジョは問題のおっさんと結婚してしまった。男はそれがあっておっさんを憎んでいた。ということが分かった。ただ、犯人と思われてもおかしくないこの男にはアリバイがあった。それは、おっさんが死体で見つかる一か月以上前からこの家にメンテナンスをしに行くことがなくなったということ。一か月以上前、最後の仕事をやった後はもう問題の家に行っていない。なぜ、急に仕事を切られたんですかと聞くが、そこは答えたくないという。
 後日、男がいない時を見計らってその会社に行き、事情を知るものから情報を集める。すると、メンテナンスをしているときリケジョと男が懇意に話をしていたところ、おっさんがそれを見てひどく怒り近づかせなくさせたというもの。
 そこから、おっさんに束縛の気があったのがキーなんじゃないか。とおぼろげに浮かんできた。
 その考えを肯定するように、現場検証の班から一つ気になる伝言が。リケジョの部屋からずっと起動しているペット用カメラが見つかった。リケジョはこれに覚えがないということ。
 すぐに会社から出て、現場を確認しに行くと小型のカメラがあった。それは、リケジョの寝室の普通ではわからない場所から出てきた。カメラの向きはベッドがあるほうを向いていた。
 そのカメラがなんなのか調べてみると、殺されたおっさんが設置したものだとわかった。さらに、残っていた映像を見ると、設置しているおっさんの姿。そして、一人でリケジョの寝室にいる元カレの男が映っていた。  

 男にその映像の証拠をもって事情を再度聞きに行くことに……」

 キキッと甲高い嫌な音で現実に戻された。前を見るとヘルメットをかぶった高校生らしき少年が目の前で止まっていた。
 何が起こったのかそれまで目から入ってきていた情報を思い返す。
その学生はスマホをつつきながら、下を向いて自転車をこいでいた。場所は歩道で、僕は自転車が来るから避けてあげようと妄想しながらも意識して左側にできる限り寄って徐行していた。なのにもかかわらず、スマホを見てながら運転をしたままその学生が突っ込んできたのだ。
 ヘルメットかぶって危険運転するという訳の分からん行動に「イラっ!」とはしないで残念な気持ちになった。
 せっかくいいところまで膨らんでたのに残念な気持ちになったから、妄想する気分が一気に失せた。
 もしもの話だけど、この妄想がめちゃくちゃいい感じに持っていけて。で、これを小説にして新人賞に応募したところ、最優秀賞になって数百万円もらって。それでとどまらずに、英語に翻訳されて世界中でベストセラーに。十年後には、日本人二人目のノーベル文学賞を受賞。なんてことになってたかもしれない。
 それを、「皮肉」という言葉の説明に使うような、「ヘルメットかぶって危険運転」によってその輝かしい未来を消された。残念だなぁ。
 ノーベル文学賞とまではいかなくとも「ワンピース」を超える作品がこの妄想から生まれてたかもしれないのになぁ。 残念だなぁ。


この記事が参加している募集

散歩日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?