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序章Ⅲ 「ふつう」の難しさ、再発の繰り返し

未来のヒントは過去にしかない、
幼い頃から今日に至るまで、
自分が大切にしてきたことを振り返ろう。

病気のことは考えないように、と
避けてきたけど、人生の棚卸しということで、
素直に向き合おうと思う。

自分の人生で、
一番満たされているのは、今だから。

⬛︎  「ふつう」に生きる難しさ  再発の繰り返し

闘病を強いられてた20代後半、
ただひたすらに、
「生きていくための訓練」を続けていて、
まずはふつうに暮らせるまでにならないと!
と自分自身焦っていた。


ふつうに働きたかったし、
ふつうにお金を稼ぎたかった。
ふつうに恋愛もしたかったし、
ふつうに再婚も夢見た。
ふつうに子育てして、

ふつうに・・・ふつうに・・・。

そう、「ふつう」なことが
一番困難なことにワタシは気づく。

多発性硬化症、やはり「多発性=再発」が、
なかなか病気を忘れさせてくれない。

「再発」も様々なところに病巣を作る。


ある日、違和感を感じ、
右手で文字が全く書けなくなった。

幼稚園児のなぐり書き状態。
(字はいまだに下手  これは関係ないか 笑)

当然、保育園に提出する書類も
すべて妹に書いてもらうことに。

あと、こんな症状の再発も・・・

ふつうに感じるはずの
「おしっこが出そう」という感覚。
ワタシには全く感じなくなったり。
なので、膀胱にはおしっこがたまる。
「したい・出そう」という感覚が
なくなるって、すごく怖いと思った。

2ヶ月に一度の間隔で、
さまざまな再発を繰り返す日々。

心も体もなにがなんだか
わからないくらい、
つらい。

これからずっと、
再発に怯えながら生きていくの ?

これからずっと、
病院との行き来で人生終わっていくの ?

これからずっと、
いろんなことを諦めていくの ?

目に見えない不安の塊が、
巨大な熊みたいに背後から
ずっと追いかけてくる。

退院しても、
またすぐに引き戻されてるみたいで。
見えない鎖で繋がれてるみたいで。


⬛︎  薬学部に通ってた、元カレに聞く。


この病気のこと、
詳しく知らないから
余計に不安になるんだと、

本やインターネットで調べ始める。

病院の公衆電話から、
学生時代にお付き合いしていた元カレにも、
すがる思いで電話したっけ。

薬学部に通っていた記憶があって、
きっと少しはこの病気のこと
知っているかもしれない。
そんな希望を胸に、恐る恐る電話した。

十数年ぶりに電話をして、
突然のカミングアウト。

相当、驚かせたと思う。

でも、優しかった。

その時に言われた言葉が、
今でもはっきり覚えている。

「死につながる病気じゃない。一生うまく付き合っていければ、大丈夫」

懐かしい声と関西弁なまりの言葉に、
妙に安心感。

静まりかえった病院のロビー、
公衆電話のボックスの中でひとり泣けた。

「大丈夫」のひとことが、
ものすごい心に響く。


だからといって、
再発への恐怖はなくならないんだけど、
でもすごく 温かいものを感じた。


うまく付き合っていけば・・・か。
そっか、うまくね。
でも、どうやって ?

退院したらまず
「多発性硬化症 患者の会」へ、
行ってみようと決めた。


⬛︎  MSキャビンとの出会いで救われる

同じ多発性硬化症の患者 
中田郷子さん (きょんさん)が
立ち上げた MSキャビン

ここでたくさんのことを学んだ。
特に病気について。

Q. MSとは何ですか?
MSは「多発性硬化症たはつせいこうかしょう」という脳、脊髄せきずい、視神経の病気です。英語名は「Multipleまるちぷる(多発する)Sclerosisすくれろーしす(硬化)」で、その頭文字から世界的に「MSえむえす」と呼ばれています。原因不明で根治療法がない難病です。人から人にうつる伝染病ではありません。また特定の遺伝子の異常は認められていません。


 Q. どんな症状があるのですか?
通常、ミエリンが壊された部分に応じた神経症状が出てきます。ミエリンの壊され方は人それぞれで違うので、症状の種類や程度は人によって様々です。MS全体としてよく見られる症状は視力障害、感覚障害、運動障害、疲労、排尿障害、ふるえ、物忘れなどです。
さらに症状は季節や体調の影響でよく変わります。日によって、また時間によって変わることもあります。体温が上がると一時的に症状が悪くなることがあり、これを「ウートフ現象」といいます。


HPを隅から隅まで読みながら、
自分に当てはまる事とそうでない事と、
確認。

そして気になるのは、
これからの未来
ワタシの体がどうなっていくのか ?


Q. これからどうなるのですか?
MSの経過は様々で誰にも予測できません。何年も安定している人もいれば、年に1回くらい再発する人、いつの間にか歩きにくくなっていくような人などいろいろです。国内外の統計では、早い段階から予防治療を始めることで、良い状態が長く保てることが示されています。


不安で不安でたまらなかった毎日が、
情報を得るごとに
少しずつ明るくなっていったのを感じた。

と同時に、
同じ病気と闘っている人に会いたいと
強く思った。


⬛︎  仲間、そして 自然と恋に・・・?

集まった患者さんたちの症状が、
みんな違いすぎて驚いた。
家族同伴で来ている人や、
ひとり車椅子でいる人、
若くても杖をついている人もいたり・・・

自分の今後を目の当たりにしたようで、
ちょっと不安にもなったけど。
みんな笑ってた。

HPに書いてあった通り、
若い女性も多くて 少し安心。
ワタシだけじゃない。

この病気について、
気をつけなくてはいけない
日常生活のあれこれや
日本では症例が少なく
欧米ではこんな治療法がある、などと、

たくさんの「欲しかった情報」を
得ることができた。


そのあとの懇親会。
ワタシは一生を変える人と出会うことになる。

部屋の中央部には、軽食が用意されたいた。

「お寿司まであるんだ!やった」・・・「あ、ほんとだ」

ひとり言のようにつぶやいたワタシの隣に、
同じようにお皿を持って立っていた
ひとりの男性。顔を見合わせて笑う。

後に、2度目の結婚を
することになる彼との初めての会話。

ワタシにとって今は
「病気の先輩にいろいろ聞きたい!
 仲間が欲しい!」ことが
頭では優先されていた。


「4月から転勤で、名古屋に行くことが決まっています。」

ワタシは話がしたかった。
仲良くなりたかった。

このセミナーでは聞けない、
もっと素朴な疑問とか、聞きたい。


はっきりは覚えてないけど、
こんな感じでさらりと、

「カーテンとか布団カバーとか、いろいろと買い物に行きたいんだけど、もしよかったら一緒についてきてもらえませんか ? 」

誘われて、二人で出かける約束をした。


その頃、今のように
LINEやメッセンジャーなんてなかったから、
どんなふうに連絡を取り合っていたのかも、
覚えていないけど。


この誘いがデートのような感覚で・・・、
でも、恋愛が始まる予感
「ワクワク感」とは
ちょっと違うような気がしていた。

それより、
真っ暗闇の中にいた孤独感から
やっと「病気について共に闘える仲間」を
得た喜びで、ワタシは心踊っていて。

もしかしたら、
もう「恋の仕方」を
忘れてしまっていたのかもしれない。

ただ、未来の約束が妙に嬉しかった。


⬛︎   病気になっても、ワクワクする気持ち


心を満たすって
ワタシはワクワクする気持ちだと思っている。
心を「ワクワク」でいっぱいにするために、
自分でできることが、見つかった。

そう、「未来への約束」

明日でもいい、明後日でもいい。
1週間後でも、1ヶ月後でも。

もっともっと先でもいい。

ワタシは、自分がこれから
作るであろう未来に、
「会いたい人と会う約束」を入れることで、
自分を満たしていった。

今も、ワタシのスケジュールの中には、
遠いところで3年後や5年後の約束まで
書かれている。


目の前のことだけをこなすのではなく、
自分自身で「希望を見出すためにも」
未来を見る癖がついた。


我が子の成長とともに、
どうしてもそこにいる自分を、
否定的に想像したくなかったのが強い。

その気づきは、
その後の人生を大きく変えていく。


自分で満たすためにすることは、
ワクワクするような未来への約束。



2018.1.12  「未来への約束の日。」 時子


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