80億超の予定データをこれまでにない価値に繋げる TimeTree CDO Louisが語る予定データ活用の可能性と挑戦
TimeTreeの開発・運営メンバーの働き方や大切にしている考え方を紹介するインタビューシリーズ。今回はTimeTreeの創業メンバーであり、現在はCDO(Chief Data Officer)を務める松田(Louis)にインタビューします。
TimeTreeに登録された膨大な予定データの特徴や、データ活用の現在地、今後の展望などについて話してもらいました!
TimeTree に集まる80億の「予定データ」が持つ価値
——まずはLouisの経歴から教えてください。
ヤフー株式会社に新卒入社後、カカオジャパンに出向してカカオトークの開発に参加しました。その後、JUBILEE WORKS(現 株式会社TimeTree)を創業メンバーとして立ち上げました。
もともとバックエンドエンジニアで、TimeTreeの初期のバックエンドを作っていました。ただ、プロダクトにもかなり首を突っ込んでいった結果プロダクトマネージャーにもなり、TimeTree全般のプロダクトを統括するCPO(最高プロダクト責任者)も拝命しました。
現在はCPOの役割を別のメンバーに引き継いで、データをどのように活用していくのかの戦略や、データを扱うチームの体制づくりに責任を持つCDO(最高データ責任者)のポジションを担っています。
創業当初からTimeTreeのアプリに登録されるデータには価値があると考えていましたが、ユーザー数が増えてデータの量も膨大になったいま、本腰を入れてその分析や活用に注力しているところです。
——TimeTreeが持つデータってどんなデータなんでしょう?
TimeTreeにはユーザーのみなさまがアプリに登録した「予定データ」が蓄積されています。現在全世界で5000万人を超える登録ユーザーが月に数億件ペースで予定を登録していて、累計で80億を超える予定データが集まっているんです。
世の中のデータのほとんどはログや履歴といった過去のものですが、予定データは過去の情報に加えて「この先にこれをやる」という、ほとんど確定している未来の情報も含むのが特徴です。
あとは、「結婚」や「出産」などのライフステージに関する予定や、「記念日」に関連した情報などもTimeTreeならではのデータですね。
一つ一つの予定データには「予定のタイトル」や「予定の日時」「なんのグループで予定を共有しているか」「予定の場所」「関連URL」といった情報が付随しています。それらを集めると、人々がどんな生活をしているのかを推定することができます。
——予定データには多くの情報が含まれているのですね。プライバシーに関わる部分もありますが、個人情報の取り扱いについてはどのように対応していますか?
たしかに予定データは生活に関わるプライバシー性が高い情報なので、細心の注意を払うようにしています。具体的には限られたメンバーのみが予定データにアクセスできるようにしたり、データを取得するときには個人に紐づく形ではなく、データの条件に当てはまる「ユーザー群」として取得するようにしたりといった対応をしています。
ユーザーの皆さんに同意いただくサービスの利用規約には情報の取得についても記載していますが、どのような情報を取得しているのかをもっとわかりやすく提示したり、提供するデータをユーザー側で細かく設定できるようにしたりといったことにも今後取り組んでいきたいですね。
プロダクト内外で広がる予定データの活用シーン
——80億件以上のデータが集まっているとのことでしたが、膨大な予定データをどんなことに活用していますか?
大きく二つあります。一つはプロダクトの改善で、もう一つが広告事業です。
プロダクトの改善ではユーザーのみなさんが登録した予定やサービス利用の傾向を見て、開発チームが新しい機能を実装する際の判断材料となるデータを渡しています。
例えば最近の事例だと、データから「仮の予定」を入れるユーザーが多いことがわかり、データアナリストのメンバーが開発チームに提供した結果、未確定な予定を入れる機能を実装することになりました。
——データが機能実装のきっかけになることもあるんですね。広告事業についてはどんな活用をしているんでしょう?
広告事業に関しては、企業向けに「TimeTree Ads」というカレンダーサービスならではの広告サービスを2017年から提供していて、そこでデータを活用しています。
TimeTree Adsは、年齢や家族構成といったデモグラフィックデータに加え、「エンタメ」や「育児」など、ユーザーのみなさんが登録している予定のカテゴリーや、予定に関連したさまざま情報をもとにターゲティングができることが特徴です。
——ユーザーにとっても、自分が登録している予定に近しい広告が表示されるようになるのは、全然関係ない広告が出るより良いですね。
そうですね。10月初旬からはこの広告事業をTimeTreeの外にも広げていて、博報堂グループのデジタルアドバタイジング・コンソーシアム社と共同で多様な広告面で広告が配信できる「MIRAI_DSP」の提供を開始しました。
「MIRAI_DSP」の提供を開始したことで、TimeTreeのサービス内だけではアプローチしきれなかった様々なシーンで広告が配信できるようになりました。また、保険や家電を商材として扱うクライアント様にご協力いただいて、MIRAI_DSPの有効性に関する実証実験をしたところ、何もターゲティングをしなかった場合と比べて良い広告効果も出ており、データ活用の可能性が大きく広がったと感じています。
ハイコンテクストな予定データを扱う難しさ
——予定データを扱うにあたって、課題や苦労している点はなんでしょうか。
予定データはいろんな文脈や情報を含む分、精確な分析が難しいことにはいつも悩まされています。
例えば「結婚」や「出産」など、ライフステージに関わるような大きな予定は、誰でも同じような予定タイトルで登録することが比較的多く区分しやすいのですが、「バイト」の予定などは「バイト」と予定タイトルを入れる方もいれば、バイト先の店名や絵文字一個だけで登録されるような場合もあります。そのような予定は何の予定なのか判別が難しく、十分なアプローチができないのは課題ですね。
こういった課題についてはプロダクトの実装面で改善できないかを検討していて、例えば予定のジャンルをカテゴリー分けする機能を追加するといったアプローチが考えられます。
ただ、ユーザーメリットが十分にある機能でないと追加しても結局利用してもらえず、結果的に有用なデータは集まらないので、どういった機能が良いのかしっかりと模索していきたいと思っています。
——運営側の都合はユーザーのみなさんには関係ないですもんね。
そうなんです。あと他の課題としては、予定データにたくさんの情報が含まれているからこそ、データを効果的に区分するための設計が難しいこともあります。
例えば広告事業において、お子様がいる家庭がターゲットの「ファミレス」を運営する企業がクライアントだった場合、「出産」というライフイベントの予定から子どもの年齢を推定して、ターゲット年代の子供がいる家庭にアプローチしていくこともできますし、「外食の予定」と思われる予定がたくさん入っている人に対してアプローチすることも可能で、本当に多様なアプローチ方法があります。
デモグラフィックデータなどの一般的な情報ではなく、予定の情報から必要なデータを区分していくのは未知の領域です。現在は現場メンバーの知見や経験から仮説を立てて分析やデータの区分を設計していますが、その積み重ねによって今後どんどん有用な情報やその活用法が見えていくと思います。
——予定データはTimeTreeならではの情報なだけに、自分たちで活路を見出していく必要があるわけですね。データ分析はどのようなチーム体制で行っているのでしょうか?
チームを構築し始めたばかりなのですが、データディビジョンという部署があります。私以外にデータアナリスト4人とエンジニアが2人の計6人がいて、今後もメンバーを増やしていく予定です。
——TimeTree全体で80人強なので、データディビジョンのメンバーの割合はけっこう多いですよね。会社としてデータ活用に力を入れていくぞ!という姿勢なんだなと感じます。
そうですね。アナリストは予定データの活用だけではなくデータ分析を通してサービスの成長を加速させる役割も担っています。体制がある程度できてきた今、よりデータによる知見を意思決定に活用できるようにしたく、施策の立ち上がりから深く入っていけるようにしたいと考えていて、今でも手が足りないぐらいなんです。今後、さらに体制を強化していかなくてはいけないと思っています。
——データディビジョンのメンバーとしては、どんな人が向いてそうでしょうか?
チャレンジ精神がある人です。予定に関するデータは一般的にあるようなものではなく、TimeTree独自に蓄積しているものなので未知の部分が多くあります。そのため、幅広いジャンルのデータを扱えたり、わからないことにも積極的に挑戦したりしていくような人と働きたいですね。
また、定量的に見ていく部分を大事にしつつ、データから直接的にわかることだけにとらわれずに試行錯誤していくバランス感覚を持った方とは是非ご一緒したいです。定量的なデータから定量的な結果を見て物事を決めることももちろんしますが、ときにはロジックやデータだけでなく、理屈が及ばない大きなストーリーを描いて、不確実なことにも賭けていくような姿勢も必要になると思っています。
データが集まれば未来予測も!?今後のデータ活用の展望
——最後に、CDOとして考えている今後のデータ活用の展望について教えてください。
TimeTree内にだんだんと予定データがたくさん集まってデータの活用を模索し続ける中で、我々TimeTreeとしてどのように予定データを活用していけばいいのか段々とわかってきました。今後も例えばLLM(大規模言語モデル)を活用することで、より高精度にデータをカテゴライズすることも可能になってくるのではないかと思っています。
そうした高精度な予定データがさらに多く集まっていけば、少し未来の情報、例えば特定地域の混雑情報がわかるみたいな活用方法も出てくると思うんです。
そんな可能性に満ちたデータの価値を存分に引き出せるように、今後も試行錯誤していきたいですね。
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