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ミステリーがすきな理由/『屍人荘の殺人』今村昌弘

「本格ミステリ」の定義ってなんだろう。

難しいトリックがあって、人も死んじゃったりなんかして、終盤に差し掛かる頃に「どうぞあなたも考えてみてください」とそれを提示されて。

あとは探偵が「さあ」とか「それでは」とか言いだして、鮮やかに解決したりなんかして。

そんなふうにぼんやりと思っていたけれど、もしかしたらちょっと違うかもしれない。

さらには「新本格ミステリ」というものもあって、なんかちょっと難しそう、、。

ミステリーはすきだけど、細かくこれはこうだあれはああだとジャンル分けしたときにわたしは何がすきなのかしら、と考える。

きっとその定義の決め方は人によっても様々でこれ!と断定するのは難しいかもしれない。し、多分わたしは語れるほど知識は豊富ではないのでそっとしておくことにする。

でも。

なぜすきなのか、だったらすぐに答えられるかもしれない。

主人公が事件をきっかけにして、非日常の世界に飛び込んでしまってぐるぐると迷い込むからわたしはミステリーがすき。

それはわたしがすきなファンタジーととてもよく似ているから。

だからわたしはホームズで言うワトソン的なポジションで謎を見ていたくて、謎解き合戦にはあまり参加しないで読んでいる気がする。

読んでいくなかでちかちかと光る違和感はそっとしておいて、最後の華やかな謎解きのときに「あの違和感はこれだったのかーー!」ってなるのがすき。

細かな定義はわからないけれど、できれば鮮やかな解決がいいし、できればたくさんびっくりしたい。

そんなふうにしてミステリ小説を楽しんでいるときに読んだ『屍人荘の殺人』

「 なんでもびっくりするトリックがあるらしい。
詳しいことはわからないけど 」

それくらいの前知識で読んでみて、本当に大正解だった。

なぜってびっくりできたから。

合わせて4回くらいびっくりしたと思う。

ほんのほんの少しだけ期待していたことも、最後にきちんと裏切ってくれたことがとても切なくて、とても嬉しかった。

たくさんびっくりしたあとは、冒頭にある見取り図とにらめっこして「ああなるほどね」って思う。

ミステリ小説は答え合わせの読み直し時間がとてつもなく楽しいのもすきな理由だ。

「ともかくここで籠城を続ける覚悟はしておかなきゃならない」
「籠城って、どれだけ待てば助けが来るの!」それまで塞ぎ込んでいた名張が叫んだ。
それに答えられるものはいない。

きちんと密室で、きちんと謎解きがあるのに、たった一つの斬新すぎる設定で何もかもが新しくてわくわくする。

斬新だけど、浮いてないしちゃんとまっすぐ。

そんな感じがとても好感が持てた。

きっと今「ミステリー小説が読んでみたいんだけど、何かおすすめはある?」と聞かれたらこの作品をあげるんだろうな。

ミステリをあまり読まない人にも分かりやすいようにと、登場人物を覚えやすくしてくれたり、そもそも「密室」ってなに?っていう疑問にも丁寧に解説してくれていたり(でもくどくない)、初めて読んだ人をミステリーの虜にさせるには優しすぎる設定なのもいい。

きっと読んだ人をびっくりさせてくれる、でも決して置いていったりはしない。



「すきだなあ」「素敵だなあ」と思っていたら、直接作者の方にお話を聞かせていただく機会をいただけました。

作者の今村さんは29歳のときに期限をつけて執筆活動を始め、期限ぎりぎりに見事に賞を受賞してデビューしました。

その間どんなことを考え、どんな気持ちで執筆していたか、書くことを仕事にしたいと思ったときの「覚悟」のようなものをたくさんお話してくださいました。

聞いていて、胸がじんわり熱くなるような今村さんのお話が少しでも伝わったら嬉しいです。






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