ほろびて『あでな//いある』クリームパンとカトマジャペニール

2023年の1月に上演された、ほろびての『あでな//いある』の舞台映像が期間限定で無料配信されていたのを観た。(2月1日23:59まで配信されているので気になる方はぜひ。)
なんの前情報もなく、通勤電車で何回かに分けて観たのだけど、最後の30分くらいは涙腺がおかしくなった。あまりこうなることはないので、言語化する必要があると思ってこの記事を書いた。

(ネタバレも含むので、何の情報も入れずに配信を観たい人はそっと閉じてください。)





クリームパン

劇中には印象的な形で冒頭から「塀」が登場する。

2024年1月の今この動画を観たわたしは、途中からイスラエルとパレスチナの間の分離壁と重ねて観ていた。もちろんこの上演のときにそういうつもりはなかったかもしれないが、2024年の今はそう見えてしまった。

遠回りした対話を経てクリームパンをいっしょに食べようとすることで、軍に入隊しようとしていた「いべ」は、それまで見えなかった(見ようともしなかった)自分と国籍の違う人たちの姿が見えるようになる。

分離壁のために往来が途絶え、パレスチナやガザ地区に自分たちと同じように生活を営む生身の「人間」が住んでいるということをイスラエル国民が認識しづらくなった、という話をセミナーで聞いたことがある。

こんなふうに、軍に入る一歩前で、誰か止めることができたら、、、止められなくてもせめて見えていなかったものを見ることができるようになったら、、、
みんなでクリームパンを食べられるようになったら、、、

現実がどうしようもない状態だからこそ、”こうであってほしいけれどそれを望むのはこの世界で一番難しいあり得ないことなのかもしれない”と思いはじめていたことを、ストレートに劇中で見せられてたまらなかった。
自分がどれほど絶望に傾いていたかということに気づいた。

自分は暴力には絶対に加担しない、と強く意志を持つこと。いや、それだと自分の正しさを守るだけのようだけど、そうではなくて、「見えないんですけど」と言っている人ともどんなに遠回りでもいいからまずは話をすること。突き放したり諦めないこと。美容師さんに教えてもらった。


カトマジャペニール

劇中で出てくる「カトマジャペニール」がクルド料理だと後で知って、クルド料理のことを何も知らない、知ろうともしなかった自分に気づいた。
検索してもクルド料理に関する情報がネット上にとても少ないことにもさらに衝撃を受けた。
そしていざ知ろうとしても自分が知っているトルコ料理やトルコ語に引きつけないと理解できない・想像できない自分もいた。(引きつける要素を一つ持ってるのは悪いことではないが。)
もしかすると Katmaca のことかもしれない。ギョズレメのような食べ物らしい。クリームパンと並んでこの食べ物のことも頭から離れない。


肝心なことを書き忘れました。
動画のURL(2/1 23:59まで)

ほろびての次回公演
『センの夢見る』
2024年2月2日(金)- 2月8日(木)
東京芸術劇場シアターイースト


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