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『価格支配力とマーケティング』に学ぶKnow-How?

こんにちは。
都内のwebメディアでマーケターをしているtkと申します。
noteは初めての投稿です。このnoteアカウントは主に、以下テーマで日々学んだこと/感じたことを書き連ねていきます。

  1. ビジネス書評(企業戦略、マーケティング、組織作りなど)

  2. キャリアについて(20〜30代の過ごし方など)

  3. ほか雑記(日常の気づき・発見)

初回ということで、まずは最近読んだビジネス書で良いなと思ったものを紹介します。マーケティングの理論/実践が新鮮でテンションが上がり、読み終わる前に会社の後輩に薦めてしまいました。


『価格支配力とマーケティング』概要

書籍タイトル:『価格支配力とマーケティング』
著者:菅野誠二、千葉尚志、松岡泰介、村田真之助、川﨑稔
出版日:2023年7月1日

大前研一さんが学長のBBT大学(ビジネス・ブレークスルー大学)で教授を務める菅野誠二さん・他共著によるマーケティング戦略論。

事業を評価する上で最も重要なことは「価格支配力」だ。競合他社にシェアを奪われることなく価格を引き上げる力を有しているならば、その事業は極めて優良な事業と言える。もし、10%値上げする前に祈祷しなければならないのなら、それはひどいビジネスだ。

ウォーレン・バフェット

米国投資家ウォーレン・バフェットの言葉から、価格支配力を利益維持・拡大のための価格コントロール力であると説明しています。

価格支配力とは「自社の提供物の販売価格を管理・決定・マネジメントする力」である。これは「需要を減退させてしまったり、競合他社にシェアを侵食されたりすることなく、利益を維持・拡大するために価格を引き上げる能力」とも定義できる。この価格マネジメントを放棄している企業を「価格"無"支配力企業」と呼ぶ。

『価格支配力とマーケティング』


企業が成長するための戦略をどう考えるか、顧客とどう向き合いインサイトを分析して価値創造に繋げるのか。プライシングに留まらないマーケティング理論・事例が展開されます。

書籍は600ページ近く全ては紹介できないため、第一部〜第二部から自分に刺さったポイントを紹介します。

マーケティング戦略はポエム厳禁。SMACTであれ。

「新規ユーザーの獲得を増やそう」
「そのために自社の潜在ターゲットを見つけ、アプローチしよう」
売上向上戦略を話すとき、自分も漠然とした状態でチームに伝えることがあります。

ただ戦略とは下記を満たす、具体的なアクションプランであるべきと説明されています。

  • Specific(具体的なアイデア、資源配分のアクションにつながる)

  • Measurable(測定可能である)

  • Achievable(論理的に実現可能)

  • Consistent(理念と一貫性がある)

  • Time-bound(時間軸が設定されている)

この状態がなく物事が進むケースはよく発生すると感じます。特に2番目のMeasurable(測定可能である)を担保できていないと「実行したけど、その施策が果たして本当に効いたのか分からない」という場面も経験してきました。数値検証の事前計画の部分ですね。

戦略とは「設定したゴール(=目的と目標)を達成するためにおこなう、持続的な対競合優位を確保するための首尾一貫したアクション」
(中略)
ポエムが戦略となると現場は混乱を極め、間違いなく失敗する。

『価格支配力とマーケティング』

ニーズとウォンツはしっかり区別せよ

マーケティング文脈でよく上がるキーワードに「ニーズ」「ウォンツ」があります。ただ意味を理解せず適切に使えないと、何が起こるでしょうか。(正直、この本を読むまで理解せずに使っていました…)

ニーズ(必要性)
 ありたい姿との差を認識し、欠乏や不満を感じること
ウォンツ(欲求)
 自分の状況を少しでも改善したいという欲求

『価格支配力とマーケティング』

「ダイエットのために、コカ・コーラ ゼロを飲んでいます」と顧客インタビューで声を拾えたとしましょう。

これは表面に出てきた "ウォンツ" であり、その奥底にあるニーズはまた顧客自身のペイン(解消したい問題・悩み)やゲイン(増やしていきたいこと)を深掘りしないと特定できません。

ただ "ニーズ" と捉え、同じような「ダイエット向け無糖炭酸飲料」の開発に走ってしまうと表面の模倣になり、競合に勝つマーケティング戦略は難易度が高くなってしまいます。

既知の欲求に対して競合ブランドが市場ポジションを確率している場合、模倣は失敗に終わることが多い。そうではなく、その表面上の欲求から奥に潜むニーズを探り出し、縦方向に進化させるか、もっと奥を掘ってみる必要がある。

『価格支配力とマーケティング』

最近、私のチームでも顧客アンケートやインタビューで「サービスを選ぶ/使う際にユーザーは何を感じているか?」を調査しています。
発言をそのままニーズと捉えず「なぜそう思うのか」を考えられる限りチームで掘り下げるようになりました。

"価格支配力"をもって市場をリードする

「価格を下げて販売数を確保、シェアを上げてはどうか?」
思った通りに売上や利益数字が伸びないとき、この考えが浮かんできます。

低価格路線は対競合で分かりやすいメリットは作れますが、利益率を下げ、カテゴリー全体が価格競争に陥るとジリ貧に…。ユーザーが価格に敏感でないカテゴリーだと、ただ価格を下げただけの「価格 "無" 支配」となってしまいます。

本書では「価格支配力を支える組織や企業風土」の例としてネスレが紹介されています。

価格支配力を持つ企業ではマーケティングやブランディング活動の全責任を負う組織体制が確立されている。(中略)
「利益が上がらなくでも頑張りましょう」という文化が日本にはありがちだが、グローバル企業の企業文化では許されない。コストが上がったら価格に転嫁する考え方が当たり前だ。そして値上げができるだけのブランド力を構築することに注力する。(中略)
限界利益率で40%以下は許されない基準がある。

『価格支配力とマーケティング』

未来予測は当てにいってはいけない

例えばあなたがある事業のマーケティング責任者として「今後3年間について、売上予算や利益見通しを立てよ」と言われたら、どう考えていけば良いでしょうか。

過去の売上利益データ、また今後の投下施策とその効果(また掛けるコスト)から予測を出していくこともあるのではないかと思います。

ただ問題となるのは「新たな取り組みをすると想定した場合」です。
1年なら6〜7割は計画として見えそうですが、3年後となると環境変化の影響も大きくなります。(とはいえ企業が「新たな取り組みをしないと想定する」のも衰退を意味します)

本書では、"バックキャスト"という未来洞察で予測をする手法が紹介されています。

フォーキャスト
 「過去から現在」の事業環境を分析することで「現在〜近未来」に向けた戦略を構想するプランニング手法。現在の延長線上で事業環境を考える上では精緻な分析が可能だ。そのため、安定した、あるいは変化が限定的な時代環境においては最適な戦略立案手法である。

バックキャスト
 客観的な未来洞察をおこない、その未来から現在を振り返ったときに自社がすべき事は何かを考えるプランニング手法

『価格支配力とマーケティング』

「未来で生きるために必要な変革は何か」「時代がどこに向かうのか」のヒントはフォーキャストで得にくい。バックキャストで「何を始めるか」「何を捨てるか」「何を強化すべきか」を考え、変革のロードマップを構想するべしと説明されています。

未来予測の方法として「シナリオを何パターンか想定する」と紹介されています。

  1. インパクトのある分かれ道はどこか?

  2. 分かれ道にある出来事の不確実性とインパクトの大小は?

この2つを考慮してシナリオを複数考えることで、自社が今後取り組むべきことやその道筋をつける助けになります。

この手法はエネルギー関連事業を展開するロイヤル・ダッチ・シェルが1970年代に発生したオイルショックに先駆けてシナリオ・プランニングを行ったことで有名になったようです。

私も今後の数値見通しを考える際に、「1つの確からしい数値計画を持つのではなく、複数パターンのシナリオを考えればよいのか」と気づきがありました。

書評:マーケティングの"思考法"を知ることができる

この本を通じて、企業内マーケターとして働く思考のヒントを得られました。書籍タイトルとしては「マーケティング」ですが、事業開発/セールス/プロダクトマネージャーの方が読んでも仕事に活きる内容なのではないかな、と思います。

本書でも取り上げられていたビジネス書のベストセラー『ストーリーとしての競争戦略(楠木 建, 2010)』も併せて読むと、企業がとるべき戦略を考える力がつきそうです。(そちらのレビューはまた後日書いていきます)

以上『価格支配力とマーケティング』のご紹介でした。
企業戦略やマーケティングに関わる人はぜひ一読をおすすめします。


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