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国際市民メディア @GlobalVoices のボツ原稿で伝えたかったこと(1/4)「第三の #MeToo 」編

最終更新日:2019.02.10|ENGLISH

はじめに

今年2月に市民記者として『グローバルボイス(Global Voices)』に掲載した日本の『#MeToo』に関する初の執筆記事(上の画像はその表紙そのままです)。あれは編纂に編纂を重ねて、プロの手により精錬されたものでした。自分の作品なので、以下のように自分で和訳しましたが、当初思い描いていた内容をフルに発信することができず、忸怩たる思いがしていました。

後にみずから『あとがき』としてツイッターに投稿したのですが、私がこの初めての #MeToo 記事で本当に書きたかったのは、次の三点でした。

(1)法制の不備。
(2)警察の性暴力被害に対する認識不足・教育不足。
(3)支援現場の立場を吟味して過不足を検討する姿勢の欠如。

しかし、最終的に掲載されたものに、これらの点をすべて網羅することは、紙面のボリューム上も、内容の複雑さからしても、無理がありました。編集側は、もっとintroductoryな、日本の『#MeToo』の導入的な記事を求めていたようだったのです。これは『第三の#MeToo』に接したばかりの私にはむずかしいことでした。いまさら「導入」とは――私は、内容をその趣旨に沿って再編することを余儀なくされ、編集方針に従いました。

先日、イギリスBBC制作のドキュメンタリー映画「日本の秘められた恥(原題: Japans's Secret Shame)」が放送されました。フリーランス・ジャーナリストで、性暴力の被害者であることを訴える伊藤詩織さんの9か月にわたる活動の軌跡を追うものでした。その中で番組は、私が書こうとした上記の3つの点をキャプチャーしていたのですが、物足りなく感じました。

なんとか、ボツになった(けれども取材対象者の承認を得ている)記事を復活できないかと編集者に相談したところ、二つ返事で「あなたの著作なのだから著作権はあなたにある。どのような形で公開してもいい」と承諾を得ました。というより、そもそも承諾を必要としなかったようです。

満を持して、ボツになったフル原稿の日本語和訳版をここに掲載します。(※内容は、掲載された公式訳とボツ部分を混在したものとなります)

#MeToo in #Japan | Third "MeToo" names the alleged assailant(日本で声を上げはじめた #MeToo たち ”第三”の「MeToo」は演劇界から)

2017年12月、日本では三人の女性が加害者に対して声を上げていた。「#MeToo」ムーヴメントの波が、遂に日本に達した瞬間だった。

この三人の女性が語った経験は、日本で性暴力被害について声を上げる女性が直面する数々の困難を浮き彫りにした。

伊藤詩織さん(ジャーナリスト)

日本国外では、「#MeTooムーヴメント」は、複数の女性がハリウッドの大物映画プロデューサーであるハーヴィー・ワインスティーン(Harvey Weinstein)氏を性的暴行のかどで同時に訴えた時、2017年10月に始まったとされている。ところが日本では、ツイッター上で『#FightTogetherWithShiori (詩織さんとともに闘う)』というハッシュタグが創られた頃、つまり同年5月には始まっていた。 このハッシュタグは、当時「詩織」という名のみで知られていた、ある女性を応援するために創られた。この女性は、2015年のある日に、著名なジャーナリストに性的暴行を受けたと、テレビに出演して訴えた。

2017年10月、国内外で広がる支持の声(和訳)に後押しされ、「詩織」さんはその本名・伊藤詩織をフルネームで公表し、『Black Box』の題名の著書を上梓した。

いまや「詩織さん」として誰もがその名を知る伊藤詩織さんは、多くのインタビューを受け、社会正義の実現を求めるとともに、日本における性暴力被害の実態に光を当てようと活動してきた。

詩織さんが公の場に初めて姿を現し、米国その他の国々での「#MeToo ムーヴメント」が勢いを持ちはじめたとき、日本でも他の女性たちがソーシャルメディアを介して声を上げるようになっていった。

「はあちゅう」さん(ブロガー・作家)

2017年12月、「はあちゅう」の名で知られるブロガーの記事が『バズフィード・ジャパン』に掲載されたとき、日本において「#MeToo」のハッシュタグが初めて広がるモメンタムを得た。

人気作家でブロガーである「はあちゅう ( @ha_chu) 」さん(本名:伊藤春香 )は、広告代理店最大手の電通に務めているときに、当時上司だった 著名なクリエイティブ・ディレクターの 岸勇希氏にセクハラを受けたと訴えた。「はあちゅう」さんの『バズフィード』の記事を紹介するこのツイートは、17,000回以上リツイート(共有)された。

清水めいりさん(舞台俳優)

2018年1月の後半、第三の「 #MeToo 告発」がなされ、ソーシャルメディア上で話題となった。ウェブマガジンの『wezzy』は、「清水めいり (@mememeily) 」という舞台女優(ソーシャルメディアや取材の上では「めいり」さんの名で通る)がツイッター上で、舞台プロデューサーの竹内忠宜氏により性的暴行を受けたことを明らかにした。

竹内氏は、所謂「2.5次元舞台」といわれる、日本のアニメ作品や漫画などをミュージカル化した舞台をプロデュースする仕事に就いていた。「めいり」さんはその日が彼とは初対面だった。

『2.5D舞台』には根強いファン層が存在する。「めいり」さんはまず自らの性暴力被害の体験をツイートすることで事件を公にしようとした。ただし、その時点では加害者の名を明かさなかった。「めいり」さんはツイッターの「モーメント」という機能を使って、『2月の舞台で泣いた理由』と題して、自らのツイートをまとめた。(※現在はTogetterまとめのみ現存)

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その後、「はあちゅう」さんが告発を行うと、「これ以上被害者を増やしたくない」と、めいりさん自身も加害者の名前を出してあらためて訴えた。

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昨年12月にツイートした内容が大量拡散された結果、Webマガジンの『wezzy』がこれを取り上げた [訳注: 但し『wezzy』が「めいり」さんに直接取材は行っていないことは本人に確認済み]。

ちょうどその月の終わり頃、「はあちゅう」さんの告発が『バズフィード』により報じられた後、「めいり」さんは実名告発することを決心する。その後一か月ほどの間に判明したことは、日本の性暴力被害者が直面する数々の困難を浮き彫りにした。

訴えられた竹内氏は、自身が運営する企業サイトに同日、「この一連において、逮捕、起訴及び私は取調べ要請もされていません」「事実と多々異なる点が多く法的処置も視野に入れて検討しております」と声明を公開した。

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残念ながら、竹内氏の指摘は一部当たっている。

2へつづく

Twitterモーメント版(正規掲載文)

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